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ササオカタクヤさん

文章でササオカタクヤの世界を伝えられたらいいなと考えてます。 キャラクターたちがイキイキとした物語を書いて、読んだあと何か残れるような作品にしていきます。

性別 男性
将来の夢 自分の作品を多くの人に読んでもらうこと
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私を名前で呼ばないで!

18/11/17 コンテスト(テーマ):第162回 時空モノガタリ文学賞 【 あだ名 】 コメント:0件 ササオカタクヤ 閲覧数:424

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私は名前が本当に嫌いだ。子どもの頃からとにかく嫌いで、私の名前を呼ぶ子には頭を下げて違う呼び方をしてもらうほど嫌いだ。古臭くて可愛らしくない、そして名前の響きが恥ずかしい民子という名前が嫌だった。
「大橋さんの名前、民子って呼んでいい?」
「ごめん。私のこと名前で呼ぶの止めてもらえない?」
小学生の頃からこんなやりとりをしてきた。すんなり受け入れてくれる子もいたけど、多くは「どうして?」と質問してきたり、ちょっと変わった子なのかもしれないと避けられてしまうこともあった。そんなリスクを背負ってでも私はこの名前を呼ばれたくなかった。

中学生に上がるまで私は特にあだ名というものに出会わなかった。ほとんどの子が私のことを大橋さんと苗字で呼んでくれたからだ。しかし私と深い関係を築き上げようとした子も現れなかった。
「民子の”たみ”を”みん”って呼ぶのはどう?」
「まだそれの方がいいかも」
「決定!今日から”みんこちゃん”ね!」
そんな私に初めてあだ名を付けてきた女の子が現れた。クラスが一緒で、席も近くなったことから話すようになったミドリという子。なんだか今まで付き合ってきた子とは違い、私のペースを崩してくる不思議な子だった。それでも一緒にいると楽しく、私は中学生にして初めて心から友達呼べる子に出会った気がした。
私はミドリの誘いでバスケ部に入部した。こんな地味な私が運動部に入るなんて誰が予想しただろう。ただ私は予想外にバスケの才能を開花させる。
「みんこちゃんって背が高いから頼りになるよね!」
毎試合レギュラーの私と違い、ミドリはベンチの控え選手止まり。それでも嫌味なく私のことを褒めてくれるミドリに申し訳ない気持ちすら感じていた。それでも「私の分まで頑張って!」と言ってくれるミドリのために精一杯頑張った。
頑張った成果もあり私たちは県大会に進むことができた。そして試合は快調に進み、決勝大会まで上り詰める。
「この試合勝てば全国だよ!頑張ろう!」
ミドリはこの試合も控え選手だった。それでも声掛けは一番大きい声を出している。本当にすごいなと私は尊敬していた。
しかし相手のチームは手強く、試合終盤になってジワジワと点差を開かれてしまう。最後まで諦めないという気持ちが強い私たちは力を振り絞っていた。
「民子!頑張って!」
残り数十秒となった時、私は耳を疑った。誰かが私の嫌いな名前を呼んでいる。その瞬間、私の集中力は切れてしまった。その結果、試合も当然負けてしまう。
「どうしたの?最後集中できてなかったぞ」
ミドリが試合終了後、私に声を掛けてきた。ふざけた口調で話しかけてきたけど、どこか悔しそうな表情を浮かべていた。
「誰かが私の名前呼んだんだ」
「え?それ私だよ?」
私のことを名前で呼んだのはミドリだった。あんな大事な試合だったのに、どうしてミドリが私の名前なんか呼んだの。私がどれだけ民子という名前が嫌なのか知っているはずなのに。
私はどうしても許せなくて、その日からミドリのことを避けるようにした。
それから一人で過ごす時間が増えた。そう思ったけど今までが違っただけでいつもの私に戻っただけだった。

「ねぇ。みんこちゃん。ちょっと話があるんだ」
しばらく経ってミドリは私に話があると屋上に呼び出した。久しぶりに話すことになり緊張感を覚える。
「話って何?」
私はぶっきら棒に質問した。
するとミドリは私の顔を見てニヤリと笑った。
「あのさ、この前はごめん。必死に応援してたら名前で呼んじゃったんだ」
私はミドリの顔を見たまま特に反応もしなかった。こうやって話すことができたのは嬉しいけど、やっぱりまだ許したくない思いがある。
「私ね、あのあとみんこちゃんのママに話しに行ったの」
「えっ」
ミドリがママと会っていたことを私は知らなかったので驚いた。一体何を話したの?
「民子って名前の由来。すごく良い由来だった」
私の名前の由来を聞くためだけにわざわざ会いに行ったの?そういえば私の名前の由来ってなんだっけ。
「みんなに愛されるような子になってほしいって由来なんだね。国民の民にそんな思いがあったんだよ。すごい良い名前」
「私…知らなかった」
そうだ。私はただダサい名前だからと由来なんか知ろうともしなかった。ママがそんな思いを込めて付けてくれていたなんて。
「だからさ、やっぱり民子って呼びたいな」
ミドリは嬉しそうに私の名前を呼んできた。不思議と由来を知った私は嫌な気持ちがしなかった。響きも悪くない気がする。
「うん。いいよ」
私は照れくさそうにミドリにこれから民子と呼んでもいいと伝えた。
その日、私たちはたくさん話をした。決勝の試合のこと、ママに会いに行った時のこと、そしてミドリの名前の由来のこと。やっぱり私はミドリが友達で良かったと改めて思った。


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