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ササオカタクヤさん

文章でササオカタクヤの世界を伝えられたらいいなと考えてます。 キャラクターたちがイキイキとした物語を書いて、読んだあと何か残れるような作品にしていきます。

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将来の夢 自分の作品を多くの人に読んでもらうこと
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モルモットくん

18/11/16 コンテスト(テーマ):第162回 時空モノガタリ文学賞 【 あだ名 】 コメント:0件 ササオカタクヤ 閲覧数:244

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僕のことをクラスのみんなは【モルモット】と呼ぶ。学級崩壊に近いクラスの雰囲気に先生も諦めていて、授業で生徒に問題をやってもらう時には僕ばかり指名する。僕はクラスで目立たない人間で、言われたことはなんでもやってしまう性格だから先生にとっては使い勝手がいいようだ。
「ちょっとこれ君が解いてくれる?」
「分かりました」
こんなやりとりは日常茶飯事で、そんな姿から先生のモルモットとして使われているとクラスの人が言い出した。そこからジワジワと僕のことをモルモットと呼ぶようになった。
「モルモットくん!今日ここの掃除頼んでいい?」
「…いいよ」
「うわー!ありがとう!」
別にいじめられているワケじゃないのは分かっている。ただ僕のことを友達だと思って接してくれる人は誰もいないし、みんなも僕のことを空気にしか思っていない。いや僕のことを上手く使えばお掃除ロボットぐらいには思ってくれているのかもしれない。何より本当の僕の名前を、みんな知らない。

中学校生活も残り三カ月を切ったある日、僕は風邪で学校を休んでしまった。小学校から考えると8年間無遅刻無欠席だった僕は本当に悔しかった。なんも取り柄のない僕にも一つは誇れることが欲しかったのに、それも打ち砕かれたような思いだった。
「お前になんか届いているぞ」
そんな休んでいる僕にビニール袋に入った手紙のようなものがポストに入っていたと父さんが教えてくれた。どうやらうちのクラスの生徒がなにか持ってきてくれたようだ。小学校では休んだ子に手紙を届ける制度があったが、中学校でもそういうのがあるのかと驚いた僕はすぐに手紙の内容を読んでみる。その手紙は学校からの手紙ではなくクラスのみんなからだった。

〈モルモットくんがいないと授業困るよー!先生も困ってたし早く風邪治して戻ってきて!〉
〈いつも掃除やってくれてたモルモットくん。今までこんな面倒なことをやらせてたんだね。私もたまには頑張るよー!〉
〈残りの中学校生活もあと少しだし、みんなで仲良くしようぜ!モルモットもたまには外でサッカーとかしような!〉
風邪で一日休んだだけなのに、クラスのみんなから優しい言葉が届いた。何かのイタズラかもしれないけど、僕のことを空気と思っているんじゃないと感じることができて、僕はちょっと嬉しかった。ただやっぱり僕のことはモルモットとしか書いていなかった。
大事を取って僕は二日休んだ。平日に家で過ごすことなんて今まで無かった僕は、死ぬほど一日が長かった。別に学校に行ったからといって友達がいるワケでもないけど、やっぱり居心地は良かったのかもしれない。もしかしたら僕はモルモットとして学校生活を過ごしていることに誇りすら感じていたのかもしれない。みんなの代表として先生の問題を答える、面倒臭いことを引き受けてあげることで満足していたのかもしれない。そんなことを考えながら僕は退屈な二日間を過ごした。
そして体調が万全になった僕は学校に向かった。どこの誰が僕に手紙をくれたのか分からないけど、なんだか感謝したい気持ちだった。誰だか分かったら勇気を出して話しかけてみようと思ってクラスのドアを開けた。

「高山昭五!誕生日おめでとう!」
クラスのドアを開けた瞬間、クラスのみんなが一斉に僕の名前を叫んだ。何本ものクラッカーがパンッ!とクラスの中で鳴り響いた。そして僕の誕生日をみんなが祝ってくれた。
「ど、どういうこと?」
僕はこんな状況を飲み込むことができず慌ててしまう。するとクラスのリーダー的存在の島田くんが笑いながら教えてくれる。
「今まで色々迷惑かけたからな!誕生日ぐらい祝ってやろうってなったんだよ!」
僕はそんなみんなの想いが嬉しくて笑顔が溢れる。学校で笑ったことなんてあったっけ?
「なんで僕の名前知ってるの?」
「そんなクラスメイトの名前、知ってるに決まってるだろ!」
僕の名前をみんな知らないと思っていた。でも本当は僕の名前はみんな知っていた。モルモットというのは、僕の呼び名じゃない。あだ名だったんだ。そう考えた時、僕はこのモルモットというあだ名がとっても大事なものに感じることができた。
「みんなありがとう!」
「いやいや、こちらこそ!」
僕はみんながにこやかに僕のことを見てくれるのが嬉しくてたまらなかった。だから僕は心の中で黙っておくことにした。誕生日はもう一カ月前に過ぎていることを。


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