1. トップページ
  2. 僕のあだ名を忘れた私は

夢野そらさん

性別 女性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの作品

0

僕のあだ名を忘れた私は

18/11/15 コンテスト(テーマ):第162回 時空モノガタリ文学賞 【 あだ名 】 コメント:1件 夢野そら 閲覧数:251

この作品を評価する


ある夜、私は夢を見た。


淡い古いあやふやな記憶がそのまま映像化したような、ぼやけた世界の中に僕はいた。

「おーい!◯◯!」
誰が呼ばれた?僕が呼ばれた?
おずおずと振り返ると、不思議そうな顔をした森田和樹がいた。小学生だった。ああ、なるほど。周りを見ると、田中裕也や、岸本凛、見知った顔がいくつもあった。
「反応おせーな、◯◯。早くボール取ってこいよ」
森田和樹の目線の先には、もう少しで道路に飛び出しそうなサッカーボール。僕は急いで取りに行った。

小走りしてボールをとって、そこで途切れた。

_________________________________________________


チリリリリ
手を伸ばして目覚まし時計を止める。普段なら夢の記憶なんて、起きるとぼやけて消えてしまう。なのに、なぜか今日は、いやにはっきりしているのだ。でも私がなんと呼ばれたのかがわからない。聞こえたはずなのにわからない。


きっとあだ名だ、その頃の。

昼休み、喫煙所で私はそう思った。
あだ名というものは時に残酷だ。しかし、大抵は愛がこもっていると私は思う。同じ名前の人であっても、性格やイメージから全然違うあだ名がつく。私のそれもきっと、誰かが私自身に深入りしてくれて、ついたものだったのだろう。

大人になったからなのか、自分のあだ名も思い出せない私には、その名で呼ばれる資格がないと言われているような気がした。



あの夢を見てから3日後、会社の取引先との契約の場で、偶然にも私は岸本凛に会った。

仕事が終わった後、少しだけ話す時間があった。あいつはあいつでがんばっているらしい。そしてふと、あだ名のことが気になり聞いてみた。

岸本凛は自分のあだ名を覚えているらしい。
ずっと本名ってのも窮屈だし、たまに昔の友達にあだ名で呼ばれるとなんだか嬉しい、と。そう言う彼は、私のことをあだ名では呼ばなかった。


大人になった今、あだ名なんて必要ないと私は思う。
だがそれと同時に、どこか寂しさと孤独を感じる僕もいた。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

18/11/15 雪野 降太

拝読しました。
一人称の使い分けは意識的なもの、と伝わってくる誠実な作風に好感が持てました。
とても短く締め括られているので読みやすいのですが、幼少期にどう呼ばれていたのかを忘れ、『大人になった今、あだ名なんて必要ない』と断じる語り部がそう思うに至った心情が少し知りたいとも感じました。

ログイン