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ゴリラ、ゴリラ、ゴリラ、ゴリラ

18/10/26 コンテスト(テーマ):第162回 時空モノガタリ文学賞 【 あだ名 】 コメント:4件 繭虫 閲覧数:451

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「五里さんはさ、女の子じゃん。『ゴリラ』ってあだ名、嫌じゃないの?」

HR後の教室に集った三人の『ゴリラ』に詰め寄られ、五里さんは目を丸くした。
しかし、面子を見て納得したのか、すぐにクスリと笑って答える。

「いい。そのあだ名、嫌いじゃないから。『ゴリラ』って、強そうってことでしょ。一目置かれてて美味しいじゃない。私は名字が五里だから普通に呼んでも『ゴリ』だしね。」

五里さんは不敵に微笑み、付け加える。

「それにこの中で一番戦って強そうなゴリラってぶっちゃけ私だと思うんだよね。だからさ、」

―私から『ゴリラ』という称号を剥奪しないで―

この言葉に、今度は三匹の『ゴリラ』の方が唖然とする。
ゴリラ、もとい田中と糸井と山村。
奇しくも全員、あだ名は『ゴリラ』。
このクラスの生徒達のボギャブラリーが少ないのか、それともゴリラが万能な言葉なのか。
このクラスには三人の『ゴリラ』がいたが、『五里さん』という転校生の加入により四人になった。

「剥奪とか何言ってんの、失礼しちゃうよ。俺らは『ゴリラ』と呼ばれる屈辱をよーく知っているからこそ、君を心配して助け船を出そうとしたんだよ。」
即座に、田中が弁明する。
この田中、肌は健康的に浅黒く、筋肉質で、見るからにゴリラという称号に相応しい容姿をしている。
「屈辱?」
「あぁ。俺、今はこんなに『ゴリラ』だけど昔は痩せててさ。
ヒョロッヒョロしてて地黒だったもんだから、トリガラって呼ばれてて。滅茶苦茶イヤだった。」
「今も旨いダシが取れそうな見た目してるよな。」
「脂が乗っててな。」
糸井と山村の相槌はスルーしておく。
「とにかく、俺のトリガラと同じく不本意なあだ名なら辛いんじゃないかと思ったんだ。」

「辛くないわ。ていうか田中くんも、トリガラは嫌だけどゴリラは嫌じゃないんだね。」
「……うん、まぁまだマシ。」

田中が納得しかけたところ、糸井はハッとする。

「え、いいのか田中。」
「そりゃ俺は男だし、トリガラよりかはゴリラのがマシだろ?見た目的にもさ。ゴリラもそりゃ嫌だけど。」

「見た目といえば、糸井くん、あなたこそパッと見たかんじゴリラに似つかわしくないような気がするんだけど……」
「え、おれ?」

同じく、『ゴリラ』というあだ名を与えられているこの糸井。
田中とは対照的に色白の痩せ形。顔もどこか気の弱そうな、優しそうな印象を与える造りをしている。とても、『ゴリラ』というあだ名を与えられている人間には見えないのだ。

「おれは見た目こそゴリラじゃないんだけど、ふとした時にウホッて言っちゃうクセがあるみたいで…自分で全然気付いてないんだけどさ。なんか、ゴリラって呼ばれるようになった。」

「フフフ、面白いね。」

五里さんが静かに笑う。

「ウホッ、そんなことないよ」
その笑顔が可愛かったからなのか、つい糸井の口から『ウホッ』が滑り落ちる。

「出てる出てる。そして話が逸れている。」

その滑り落ちたウホッを拾いつつ、三人目のゴリラ、山村が話を修正する。
この山村は、『顔がどことなくゴリラっぽい』という至ってシンプルな理由で『ゴリラ』と呼ばれている。
しかしゴリラの数が増えすぎた為か、最近では猿顔だったら何でも良いのか『ネアンデルタール』と呼ばれ、進化させられてしまった。

「五里さん、君女の子だろ。嫌じゃない?ゴリラとか呼ばれるの。」

「女の子だから?なんで?男子に3人もゴリラが居るのに?私以外にメスゴリラはいないの?」
五里さんの捲し立てるような口調に、山村は少し気圧されつつ口を開く。

「いなくはなかったけど、いないよ。大抵嫌がるし、女子同士で同盟作ってさ、『やめなよ』って言うんだ普通は。」

「そうなの。でも私、本当に嫌じゃない。男の子だからとか女の子だからとか関係ない。嫌なものは嫌だろうし、嫌じゃないものは嫌じゃないわ。そして、私は嫌じゃない。君達と話をしてもっと『ゴリラ』ってあだ名が好きになった。」

五里さんが何を言っているのかわからない、三人のゴリラは困惑の表情でお互いに目を合わせた。
しかし、五里さんは心底愉快そうに話し続ける。

「だって、ここにいるゴリラに『嫌な人』はいないもの。三人とも、私のこと気遣ってくれたでしょう?君達みたいな優しい子達と並べるなんて、嬉しい。私も『ゴリラ』の仲間に入れて頂戴。ね?」

可愛らしく微笑んだ彼女の顔には、女子特有の柔和さが滲んでいた。
しかし、それとは対照的にどこかジャングルの覇者のような力強さも感じさせる。

成る程、確かに『この中で一番戦って強そうなゴリラ』は彼女だろう。
現に三人は各々『ゴリラ』という称号に対して謎の敗北感を感じていた。
そして、今度はこの真っ直ぐなメスゴリラに対して謎の敗北感を感じている。


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このストーリーに関するコメント

18/10/26 木野 道々草

拝読しました。とても面白かったです!ずっと笑いっぱなしでした。笑いが落ち着いてくると、今度は、転入生の五里さんが『ゴリラ』というあだ名で呼ばれても、女子からの『やめなよ』の言葉がなかったらしいことなどが引っ掛かり、作中で直接書かれていない部分を想像しました(深読みかもしれません)。五里さんが、楽しい学校生活を送ってくれたらいいなと思いました。

18/10/27 雪野 降太

拝読しました。
インパクトの強いタイトルで内容も興味深かったです。
彼女達は何歳くらいなのだろうかとぼんやり想像しました。五里さんのあだ名が名前優先なのか、見た目優先なのか気になるところです……

18/11/02 繭虫

木野 道々草さん>
コメントありがとうございます。笑っていただけて良かったです!
聞く人によれば残酷なあだ名がついてしまった五里さんですが、本人は微塵も気にしていません。そういう
前向きなところが五里さんの強さなので、この強さに惹かれるクラスメイトはいっぱいいるはずですし、きっと楽しい学校生活を送れるはずだと、私は信じたいです……。

18/11/02 繭虫

凸山▲@感想を書きたいさん<
コメントありがとうございます。
これは私の主観でしかないのですが、思春期入りたて位の子供たちがつけるあだ名って残酷なものが多いような気がしていまして……。
具体的な年齢は設定していませんでしたが、クラスメイトが、私自身が一番残酷で性格が悪かった頃をイメージして書いていました。
五里さんは名前のこともありますので名前重視かもしれませんし、もう一匹ゴリラを増やしたかっただけの誰かの悪ふざけかもしれませんし、色んなくだらない要素が絡み合った末のゴリラなのかもしれません。

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