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紅茶愛好家さん

他所でも別名義にて活動中です。 作品書いては毎度家族に読んでもらってます。面白い作品が書きたいなあと試行錯誤中。作風は真面目なのからふざけたのまで色々書こうと思っています。

性別 女性
将来の夢 長生き。これ大事。
座右の銘 温故知新

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キミはだれ?

18/10/22 コンテスト(テーマ):第161回 時空モノガタリ文学賞 【 伝言 】 コメント:0件 紅茶愛好家 閲覧数:81

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 もう、5年も前のことになるが当時僕にはペンフレンドがいた。
 本当の名前も顔も知らない、住所さえも。でも唯一無二の親友だった。
 ペンフレンドなのに住所を知らないというのは奇妙な話だろう。どうやって手紙を送るのか? そう、僕は彼と伝書鳩を用いて文通していた。
 きっかけはある日のこと。学校から帰宅した僕は二階の自室のベランダに鳩がいるのを見つけた。「へえ、珍しい」くらいには思ったと思う。普段は何しろスズメくくらいしかやってこない。だが、それ以上に珍しいことがあった。鳩は赤い足に紙を巻きつけていた。思わずベランダに出て鳩にそっと近寄る。人なれしていて逃げるそぶりはなかった。恐る恐る手を伸ばし「ごめんよ」と呟きながらそっと紙を外す。部屋に持ち込みおみくじ状に折りたたまれていたのを丁寧に開いた。それは、やや小さめの黄緑のクローバーのイラストの入った便せんだった。中身には丁寧な字でこう書かれていた。

――はじめまして。僕はカケルと言います。偶然にもこの手紙を受け取ったあなたにお願いがあります。僕のペンフレンドになってください。
 僕は普段学校に行けていません。友達も少ないです。自室に籠ることも多く、人とのコミュニケーションが希薄です。人と話したいという意思はありますが人を目の前にすると汗がだらだらと流れ、緊張してどうしても上手くしゃべることが出来ません。
 普段はゲームをしたり、ネットをしたり、時々ですがサイクリングにも出かけます。この時期は紅葉が綺麗で高尾山へも行きました。写真も撮ります。持っているのはコンデジです。
 あまり文章が上手ではありませんがお友達になってくれると嬉しいです。

 僕は少し考えたあと一階に降りて母に「便せんは無いか」と問いかけた。母は「確かあったと思う」と言って父の部屋から縦書きの便せんを持ってきてくれた。縦書きかぁ、と思ったが他に無いので仕方ない。縦書きを横にして使用した。

――こんにちは、お手紙受け取りました。僕は高校2年生の塩崎マヒルです。部活は将棋部です。僕もあまり人と話すのは得意ではないのでお気持ちはほんの少しですが分かります。友達も多くないので僕の方こそ友達になってくれると嬉しいです。

 僕は人と話すのも左程苦手ではないし友達もそれなりにいる。でも手紙にはそう書いた。来た手紙を真似て折りたたむと外に出て鳩に括り付ける。鳩はちゃんと待ってくれていた。「頼むぞ」と言ってそっと頭を撫でると鳩は元気に羽ばたいていった。

 返信が来たのは次の日だった。学校から帰ると鳩がちゃんとベランダで待っていた。手紙もある。何が書かれているのだろう? 期待を込めて広げた。

――お返事ありがとうございます。僕も高校2年生です。マヒル君は何人家族? 僕は訳あって祖父母と僕の三人家族です。父も母もいませんがそれなりに暮らしてます。勉強はあまり得意じゃありませんが科学だけは詳しいです。将来は科学者になるのが夢です。

 何だろう、少し変わった子かな、という印象を受けた。不登校なのに科学者になりたい……。時々、化学知識を用いて事件を起こす危ない中学生みたいな子だろうか。

――学校はどこですか? 僕は千進高校に通ってます。好きな食べ物はから揚げです。嫌いな食べ物は納豆かな。趣味は将棋(部活の事、言いましたね)たまに読書もします。

 こうして僕らは趣味の話、学校の事、家族の悩みを交換しあって交流を深めた。しかし、仲良くなっていくうちにどんどん彼の話題は暗転してどす黒いものと変化していく。

――マヒル、僕はいずれじいちゃんとばあちゃんを殺そうと思っている。僕はすでに2人に命を狙われている。社会に出ない僕はお荷物なんだ。殺される前に殺す。それしかない。

――カケルへ 
僕も時々、両親を殺したいと思うことはあります。でも、やっちゃいけない。犯罪者になれば未来なんてなくなるよ。どうか、思いとどまってほしい。

 以降、カケルから手紙が届くことは無くなった。そして、ある日学校から帰ると……

 リビングには血まみれの両親の死体があった。そばには血まみれの鳩、現場に残されていたのは半分にカットされた僕の手紙。『僕も時々、両親を殺したいと思うことはあります』という部分だけを残して。頭に浮かんだのは本当の名さえ知らないカケルのぼんやりとした顔だった。カケルが鳩をつけてきた? 彼は快楽殺人者なのか? それとも愉快犯? 
両親が居ない? 死んで居ない? 呆然としていると遠くから聞こえてきたのはパトカーのサイレンの音だった。彼が通報したのか? 
 残された手紙を見てぞっとする。僕の指紋、僕の筆跡。僕は無意識に学校のカバンを持って玄関を飛び出す。
 走りながら必死で問いかける。

 キミはだれ?
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 キミはだれ?


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