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水沢洸さん

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さがしてください

18/10/20 コンテスト(テーマ):第161回 時空モノガタリ文学賞 【 伝言 】 コメント:0件 水沢洸 閲覧数:84

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『さがしてください』
 起きたらポツンと置かれていたが、なんとも自己主張の強い書き置きだ。
 心当たりもないし、ひとまず放置して目を閉じた。
『さがしてください』
 起きたら紙が増えていた。
 ビスケットだろうか。
 叩いた覚えはないけれど。
 なんとなく怖くなったので、逃げるように目を閉じた。
『さがせっていってんでしょうが』
 言葉が変わった。
 どうやらお怒りのようだ。
 しかし、そう言われてもなにを探せばいいのかわからない。
 なんの手がかりもなければ、名探偵だって泣き寝入りだ。
 だからペンを持って、書いてみた。
『ヒントをください』
『ちょっとなにいってるかわかんない』
 なんでなに言ってるかわかんないんだよ。
 それはともかく、意思の疎通はできるようだ。
 キャッチボールというより、ドッジボールだけど。
 もしかしたら簡易文字じゃないと伝わらないのかも。
 そう考えて、ペンを持つ。
『ひんとをください』
『あなたかんいもじしかつかえないの? あたまわるいわね』
 きみに言われたくないわ!
 つい紙を破きそうになったけど、どうにか耐えた。
 これでも温厚で通ってるんだ。
 この程度ではまだまだ取り乱したりしない。
 だからにこやかにペンを持ち、
『ちょっとなに言ってるかわかんない』
 温厚だからってオモチャではない。
 戦うときは戦うし、やるときはやるんだ、たぶん、おそらく。
 さてさてどんな返事がくるだろうか。
 わくわくしながら目を閉じた。
『は? なにそれつまんな。うけるとでもおもってんの? さむいわ』
 だからきみに言われたくないわ!
 うっかり紙を裂いてしまったけれど、これでも温厚で通ってる。
 しっかり丸めてゴミ箱に叩き込んでやった。
 そして悠々とペンを持ち、
『きみに言われたくないわ!』
 しっかり自分の意見を伝えるのは大事なことだ。
 会話には応じるつもりだし、和解だって考えてる。
 じつに温厚だ、うん。
『なにきゅうにきれてんのよ。じょうちょふあんていすぎるでしょ』
 べつに急だったつもりはないんだけれど。
 なんなら『ちょっとなにいってるかわかんない』を待ってたフシもあるくらいだ。
 笑いのツボがあわないのかもしれない。
 と、もう一枚紙があった。
 叩き込んだからだろうか。
 ビスケットじゃないけど。
『さがすのよ、あなたを』
 ぼくを、さがす?
 ぼくはぼくだ。
 ぼくとしていまここにいる。
 さがせといわれても、なにをどうすればいいのかわからない。
 あるいは『あなたさん』を捜すのだろうか。
 どうやって?
 ぼくしか存在しないのに、どう捜せと言うのだろうか。
 ではやはり、さがすのはぼく?
 ぼくの、なにを?
 わからない。
 けど、わからなくちゃいけない。
 なんだかそんな気がする。
 だからすこし真剣に、
『きみは、なんだ』
『だれ、とはいわないのね。あんしんしたわ』
 そういえば、なぜぼくは『なんだ』と聞いたのだろうか。
 この子のことを知っている?
 そんなはずはない。
 ぼくはこの世界に独りのはずで……
『きみはぼくのなにを知っている? ぼくはなにを忘れているんだ?』
『めんどーなしつもんね。たんてきにはこたえづらいけど、あえていうならたましいかしら』
 たましい。
 魂だろうか。
 それを、この子は知っている。
 そして、ぼくは忘れている。
 魂を忘れるというのがどういうことかわからないけれど、なかなかに一大事なんじゃないだろうか。
『魂をさがすって、どうやって?』
『それをしってりゃくろうないわよ。すこしはじぶんでかんがえなさい』
 考えた末の質問だったのだけれど。
 それにこの子も知らないとなると、完全にお手上げじゃないか。
 答えのない問題は、どうやったって答えられない。
 神様だって迷宮入りだ。
『まずはそこをでてみることからはじめてみたら?』
 いやだよ。
 そもそもどうやってここを出るんだ。
 ……いや、あれ?
 おかしいな。
 どうして『いやだ』と思ったんだ。
 出られないと決めつけたんだ。
 なにも試したことなどないはずなのに。
 怖い?
 なにが?
 どれが?
 ぼくはなにを知っていた?
 ぼくはなにを忘れてる?
 ……さがしてください、か。
『わかった。やるだけやってみる』
『そう。きたいしないでまってるわ』 
 ひどい言い様だな。
 頬を緩めて、立ち上がる。
 世界を見渡し答えをさがす。
 ここから出る方法を。
 ぼくの魂を。
「なんてね。悩む必要ないよね、こんなの」
 ヒントも答えもない問題。
 解くのなんて簡単だ。
 自分でつくってしまえばいいのだから。

 ――誰かが消えたどこかの場所に、ポツンと置かれた紙があった。

『みつけられたじゃない』


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