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うたかたさん

どこにでもいる高校生です!

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再開のための伝言

18/10/14 コンテスト(テーマ):第161回 時空モノガタリ文学賞 【 伝言 】 コメント:0件 うたかた 閲覧数:100

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 幼馴染の君が亡くなって今日で丁度一年が経過した。僕は赤みがかった空のもと、閑散とした住宅街を歩いて抜けて君の眠る墓地に向かう。
 カラスが一羽また一羽と群れをなさずに飛んでいく。砂利の音に騒がしさを覚えながら君のもとに到着した。美しく鮮やかな花が既に何本も手向けられている。
 詰まる喉に耐えながら段に足をかけようとすると、そこに正方形をした一枚の黄色い付箋が落ちているのがわかった。落としたばかりなのか、まだ埃一つ付着していない。そして、黒く小さな文字が書かれているようだ。
 花を落とさぬよう注意しながらその文字を読んだ。
『東に真っすぐ進んでください』
 どうせ誰かが落としていったものであろうと初めは思ったが、すぐに目の前の道が東西に延びていることに気づき、居ても立っても居られない気持ちになっていた。
 心急ぎながらも、丁寧に墓参りを終えると、その付箋を手に、日が暮れぬうちにと急ぎ足で砂利道を東に向かう。
 周囲を木々が囲むこの墓地には、既に夕陽は届いていない。肌寒さをこらえながら、帰りのことも考えずに五十メートルほど歩く。ついに、突き当りに到達した。
 何も――ない。
 周囲をぐるっと見渡してみたが、誰かがいるわけでもなければ特に変化があるわけでもない。
 やはりこの道のことを指していたのではなかったのだと危うく理解しかけたところで、漸くその付箋が君の墓地を訪れた人に向けられたものであることを理解した。それは、僕の足元にあった。
 また同じ付箋が僕の足元に落ちていた。
 僕はその付箋を迷いなく拾い上げると、そこに書かれた文字を読む。
『目を瞑って、三歩下がってください』
 何が起きるのだろう。僕は好奇心と何か君に対する罪悪感を感じながら、緊張した。しかし、すぐに僕はその付箋に従った。
 目を瞑る。辺りは薄暗くなっているから当然瞼の裏は闇。視覚を奪われ、強烈な肌寒さと葉の擦れる音が僕の身体を刺激する。
 その一瞬を感じ終えると後ろも確認せず右足を一歩後ろに下げる。やはり、砂利の音が響く。もどかしくなった僕は、勢いのまま残りの二歩を一気に下げた。
 無音の刹那――
「やっと会えたねッ!」
 誰かに抱き着かれる感覚と突然の暖かな空間に僕は「えっ」と乾いた声を上げ、目を開いた。
 僕の胸元には君がいた。
 目からあまりにも澄んだ涙を流す君は懐かしい笑顔を浮かべている。紛れもなく君だ。
「どうして……」
 辺りは一面若草色の草原に変わっていた。太陽は昼頃を指す。想いに反して素っ気ない言葉を発してしまったが、それを気にすることなく君は涙を拭った。
「ずっと会いたかったんだよ」
 非現実的な出来事に遭遇したにもかかわらず僕はこれを夢とは思わない。当然の現実だ。
「ごめん――な」
 不意に言葉が詰まって焦るが、君の頭に手をのせるとポンポンと優しく叩いてみせた。
 眼を細くして嬉しそうにする君が、もう二度と会えないと思っていた、もう二度と叶わないと思っていたことを僕に悔やませる。僕はもう後悔などしない。
「ありがとう――」
 穏やかすぎる草原は小さく風に揺れ、鮮麗に僕等を誘っていた。


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