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笹岡 拓也さん

文章で笹岡 拓也の世界を伝えられたらいいなと考えてます。 キャラクターたちがイキイキとした物語を書いて、読んだあと何か残れるような作品にしていきます。

性別 男性
将来の夢 自分の作品を多くの人に読んでもらうこと
座右の銘 生きているだけで幸せ

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先輩への伝言

18/10/12 コンテスト(テーマ):第161回 時空モノガタリ文学賞 【 伝言 】 コメント:0件 笹岡 拓也 閲覧数:103

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「先輩、なんかさっき伝言を預かったんですけど」
喫茶店でアルバイトをしている私は先輩に密かに恋心を抱いている。私は十分アピールをしているけど、先輩は私にあまり興味がないみたいで、正直ほとんど勝算はない。
「伝言?誰から?」
ある日、先輩と久しぶりに話すキッカケを手にした。それはある人から伝言を預かったという内容だ。先輩もこの話にはしっかり耳を傾けてくれたので、しっかりと会話が繋がるような気がした。
「誰から…あれ?」
「え…。名前聞いてないの?」
「はい。なんか先輩に伝えてって言っていたので」
「あっそう。で、どんな奴だった?」
「どんな奴…んー」
「見た目も覚えてないの?」
「すみません」
「じゃあ男か女かなら分かるでしょ」
「それもあまり覚えてなくて…」
先輩が少しイラついているのがわかった。私はこのままだと【興味がない】から【うざい】【嫌い】に変わってしまうと思った。こんなはずじゃなかったのに、私はこの歯切れの悪い展開をどう打破すればいいか必死で考える。
「女!女の人でしたよ!」
「女?心当たりねーな…で、どんな伝言だったんだよ?」
「『明日待ってます』って言ってました」
「明日?」
「明日って言ってましたよ」
なんとか先輩に用件を伝えることができた。ただ先輩の困った表情を見て、私の思惑にはならないような気がしていた。

「先輩、今度一緒にごはんでもどうですか?」
私は1ヶ月前のある日、恋心を抱いている先輩に思い切ってごはんに誘ってみた。アルバイトの私と違い、正社員の先輩はとっても多忙。正直やんわり断れるんだと思っていた。
「うん。いいよ」
私はこの言葉を聞いた時、心が弾む音が鳴るほど高揚した。
「休みいつ?」
浮かれて物事をしっかり運べていない私に変わり、先輩が話を進めてくれる。こういう紳士的な姿が私の心を奪っていったのかもしれない。
「あっえーと、来週の日曜とかなら」
「ごめん、その日仕事なんだわ」
「じゃあ…先輩が都合つく日は?」
「俺?あぁ3週間後の土曜日かな」
「あっ!その日、私もシフト入ってません!」
「じゃあ3週間後の土曜日な。とりあえず13時に駅で」
それでも私は念願の先輩と一緒にごはんを食べる、いわゆるデートというやつに結びつけることができたのだ。
ただそれから3週間が経っても、どこでごはんを食べるとかの予定を立てる話もできず、もはや忘れてしまっているかもしれないという不安ばかりがこみ上げている。

とりあえず先輩と会話をしないと話にならない。そう思っていた時、私はある方法を編み出した。それが伝言を預かったという嘘の会話。デートが次の日と迫った私は、先輩にどうしても思い出してもらいたくてこのような作戦をとることにしたのだ。
ただ私の考えはいろんな対策が練られていなく、会話を始めた途端しどろもどろになってしまったのだ。なんとか明日の話まではこじ付けることができたけど、この続きを私は考えれていない。もうこのまま先輩は架空の人からの伝言で悩まされ、私とのデートは思い出されないだろう。
「明日かぁ。明日そんな約束した覚えないんだけどなぁ」
「…そうですか」
先輩は明日のことなんかまったく覚えていない様子が伺えた。正直、口約束だから仕方ないけど、やっぱり悲しい気持ちになってしまう。ただ私は先輩の前では悲しい気持ちがバレないように平然を装っておく。しかし先輩は私のちょっとだけ見せてしまった悲しい表情に気づいたようで
「どうした?」
と問いかけてくる。私は「なんでもないです」とだけ伝え、先輩から離れようとする。今先輩に優しくされたら、溢れそうな涙が零れてしまう。
「明日どうする?」
そそくさとこの場から逃げようとした私に先輩は声をかけてくる。
「明日…だったよな?ごはん」
私は先輩の顔を見ることができなかった。先輩はまったく約束を覚えていないと思っていた。それに先輩に嘘をついてまで約束を思い出してもらいたかった。なのに約束を覚えている素振りを見せない先輩にもう諦めてしまっていた。先輩のことを全く分かっていなかったことに怒りすら覚える。
「やっぱりなんかあった?」
こんな私に先輩は優しく声を掛けてくる。そんな先輩に私は嘘を付いたことを正直に謝ることにした。
「ごめんなさい。さっきの伝言、全部嘘でした」
「えっ?マジ?」
呆れられるか、怒られるかを覚悟していたのに先輩は笑っていた。
「お前、面白いな!なんで嘘付いたんだし」
「先輩に明日のこと思い出してもらいたくて」
私のしょうもない嘘のせいで嫌われるかと思ったけど、なぜか先輩は私のことを褒めてくれた。さらに今まで見たことないほど笑っている。嘘の伝言作戦は全く成功しなかったけど、それでも予想だにしない結果に結びついた私は溢れそうな涙が嬉し涙となって零れ落ちた。


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