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蒼樹里緒さん

https://note.mu/aorio まったり創作活動中です。 コメント・評価等、本当にありがとうございます。個別返信は差し控えますが、とても励みになります。

性別 女性
将来の夢 趣味と実益を兼ねた創作活動をしながら、気ままに生活すること。
座右の銘 備えあれば患いなし/一石二鳥/善は急げ/継続は力なり/思い立ったが吉日

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是正の伝言

18/09/27 コンテスト(テーマ):第161回 時空モノガタリ文学賞 【 伝言 】 コメント:0件 蒼樹里緒 閲覧数:234

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 俺の楽しみは、投稿系SNSでユーザーによる創作企画に参加することだ。プロ作家を目指すほどじゃないが、学生時代から小説を書くのが好きだった。過去の作品もSNSにいくつか上げたら、感想コメントやブックマークもちょっともらえた。社会人になった今でも、合間にちまちま書きためては、気ままに投稿を続けている。
 参加中の企画はコンテスト方式で、主催者から指定されたテーマや字数に沿って小説を投稿し、締切後の投票で優勝作品が決まる。SNSの公式企画とは違い、ものすごい長文を書くわけでもないから気楽だ。
 通算開催四回目の今回も、何とか締切に間に合って投稿できた。ほかの参加者の作品も読んでみよう。
 企画タグで検索したページに、自分のを含めたいくつかの小説が表示される。投稿日時が古い順に読んでいくと、途中で引っかかる作品があった。
 文中に実在の歌手名と、その楽曲の歌詞が堂々と引用されていたのだ。
 おいおい、と俺は苦笑いしてしまった。SNSの利用規約では、某音楽著作権協会の登録楽曲の歌詞引用は、ハッキリ禁止されているのに。
 SNS運営側にいきなり通報するのもなんだし、とりあえず作品の感想も添えて投稿者に伝えてみよう。
 メッセージ機能を立ち上げ、冷静にまとめた文章を送信した。
 ところが、翌日に来た返信には、こう書かれていた。

「規約を読む限り、あくまでも運営と私の話になりますよね? 全く交流のなかった人が、いきなり私に改稿を迫るのは失礼だし筋違いです」

 は?
 思わず声が漏れた。
 メッセージでは「規約違反の可能性もあるので、気を付けたほうがいいと思いますよ」とはやんわり書いたが、それがなんで『改稿を迫った』ことになるんだ? 誹謗中傷に当たるような暴言も、当然一切書かなかったのに。
 それに、テーマ発表や投票結果発表で使われる、主催者が用意したチャットの場でも、俺と相手は何度か挨拶や会話もしている。そのことは、相手にとっては『交流』には含まれないのだろうか。
 ――つまり、運営から直接警告されない限りは、この人はまともに作品を修正する気もないんだな。
 返信不要です、とも文末に書かれているから、仕方ない。一度注意はしたぞ、俺は。
 一応、企画主催者にも要望メッセージを送った。参加作品の中に歌詞を引用しているものがあるから、次回開催以降はそれを企画概要ページにも注意事項として追記して欲しい――と。
 相手の小説ページ下部にある『作品に対する情報提供』の文字リンクから、問い合わせフォームに飛ぶ。具体的な規約違反内容と作品のURLを記入して送信した。
 同じ企画参加者である俺が直接伝えても聞き入れられないなら、あとは運営に判断を委ねるしかない。
 そして、その翌日。SNSの運営から、問い合わせの返信が届いた。

「ご連絡ありがとうございます。ご連絡いただいた情報を元に対応が完了いたしました。引き続き監視いたしますが、再度同様の問題が発生した場合は、お手数ですが再度ご連絡いただけますと幸いです」

 迅速な対応がありがたい。
 相手の作品を再読してみると、確かにあの歌手名も歌詞もすっかり消えていた。
 ほかに変わった点は、俺のアカウントが相手からアクセスブロックされていたことだ。小説ページ上部の『いいね』ボタンや、下部のコメント入力フォームのボタンが非表示になっているから、すぐに気づいた。
 俺は、今後相手に憎まれ続けるかもしれない。だが、SNSに作品を投稿している以上、重視すべきはその利用規約だ。間違いを犯したのは自分なのだから、俺を怨むのはそれこそ『筋違い』だろう。
 溜飲が下がり、気を取り直して参加作品の続きを読み進めた。

 自分が拒絶された場合、第三者の力を借りて相手に意思表示する伝言は、こういうときにこそ効果的なのだ。


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