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とむなおさん

とむなお――です。 ちょっと奇妙な小説を書きます。どうぞ宜しく!

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悪魔の伝言

18/09/25 コンテスト(テーマ):第161回 時空モノガタリ文学賞 【 伝言 】 コメント:0件 とむなお 閲覧数:146

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 秋風が、すがすがしい水曜日……

 東京都A区に本社のある雑貨品メーカーの『D商会』で営業課長をしている宮本は、平社員の田村を伴って、W村というド田舎に来ていた。
 この村の村長宅から、自社の製品に対するクレームがあったからだ。

 いつもなら、社の営業車を使うのだが、あいにく調子が悪かった。
 すぐにJAFに連絡したが、早くても半時間はかかると返答されたため、電車とバスを乗り継いで、やっとの思いで訪れたのだった。

 幸い、村長夫人は、すぐに了承してくれたので、20分ほどで失礼することができた。
 が、ド田舎のため、バス停の運行表を見ると、1時間に1本のペースで、次のバスまで半時間以上も待たなければならなかった。
 天気は曇りだったので、ただ待っていても良かったのだが……
「俺ちょっと、用をたしてくるから……」
 と、周りをキョロキョロ見回している相棒に言って、バス停を離れると村長宅の裏手の方に入っていった。
 ド田舎だから、コンビニやパチンコ店がある訳てはない。
 方法としては、橋のたもとから川の方に降りるしかないように、彼は思った。
 幸い近くに坂があったので、たやすく降りることができた。
 そして用をたし、ずらしていたズボンを上げた時、後ろで、ドサッ――と音がした。
 見ると、尻ポケットに入れてあった財布だった。
 別に盗る者は皆無だったが、日頃のクセで中を改めると、五千円札と千円札が10枚ほど入っていた。
「これが、みんな1万円札だったらな……」
 ふと見ると、橋の下に小さな伝言板があり、
『あっちだよ』
 と書かれた下に矢印があった。
「えー? なんだー?」
 腕時計を見てみると、バスの到着まで半時間あった。
「ま、いいか……」
 宮本は、その伝言に従うように歩を進めた。
 しばらく行くと、ほとんど水が流れてない大きい排水口があった。
 そしてその下に、また小さな伝言板があり、
『この中だよ』
 という伝言と上に向かった矢印があった。
 宮本は、子供にでもなった心境でそれに従い、排水口の中へ入っていった。
 数歩入ったところに少し小さな横穴があり、その下の伝言板に、
『この中だよ』
「おいおい大丈夫か?」
 と言いながらも宮本は、両足を折るような大勢でその横穴に入った。
 薄暗い穴だったが、その横穴から出るまでに1分とはかからなかった。
 そして宮本が土手を上がって橋の所に戻り、バス停に向かうと、向こうの方からバスが来ていた。
「あれ? そんなに時間、取ったかな……?」
バス停に着くと、田村が、
「課長、どこまで行ってたんですか?」
「あ、いや……ちょっとした物があったからな……」
「えっ、何ですか?」
「何でもいいさ。オマエには関係ないから……」
 田村と一緒にバスに乗った宮本は、何か違和感を覚えながら、東京へと帰っていった。

 その夜、Kマンションに帰った宮本は、尻ポケットの財布を取り出そうとして、
「えっ! なぜだ?」
 重さが違っていたからだ。
 出して確認すると、中には百枚ちかい1万円札が詰まっていたのだ。
「ワーオ! あの橋の下で用をたす時までは、変りなかった……。原因は、あの穴か……。奇跡の穴を見付けたぞー!
やったー!」
 ずっと取って置いたワインを出してくると、祝杯を上げた。
「人生――こういう事もあるんだな……」
 窓から、つまらない夜景を見ながら、もう一杯ワインを飲み、
「さー、もっと高いマンションに引っ越すぞー!」

 翌日、宮本は、自分の口座から出せるだけの現金を下ろすと、すべて千円札に替えた。

 次の休日、宮本はワクワクしながら、C村に向かった。
 その背広の、すべてのポケットには、それぞれ財布が入っていて、ぎっしり千円札が押し込まれていた。

 そして宮本が例の橋の下に立つと、伝言板は無かった。
 しかし、行き方は分かっている。
 彼は大きな排水口に入り、横穴に入り込んだ。
「あれ? こんなに暗かったかな……?」
 宮本は使い捨てライターを使うことにした。
 しかし、その先は行き止まりだった。
 彼が入った排水口の横穴も無くなっていたのだった。


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