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ポケットに伏せ字のメモが込められた

18/09/24 コンテスト(テーマ):第160回 時空モノガタリ文学賞 【 伏字 】 コメント:0件 mokugyo 閲覧数:63

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朝、登校してる時だったと思う。

人が結構いる通りで、誰かと肩がぶつかったんだ。俺は急いでたので、気にせずそのまま学校に行った。

学校でふと、学ランのポケットに紙が入ってることに気づいて、まあ引っ張り出してみたよ。ノートの切れ端にメモが書いてある。

「6月××日 お前は事故にあう」

おい、なんだこれは。やめてくれよ、冗談きついわ。6月8日の時点でこんなメモ見たら意識しちゃうじゃねえか。しょうもねえいたずらだとは思うが、気になるじゃねえか。たぶん、朝ぶつかった瞬間にこの伏せ字になってるメモをポケットに入れられたんだと思う。あれ、ぶつかったのは誰だったんだ?

登校する道はガードレールがないくせに、人も車もよく通る道で。いっつもここ危ないよなあと思ってたんだよ。そんな環境で、このメモはきつい。何より伏せ字になってるのがきつい。

まあ、それでも俺は気にせず、何事もなかったかのように毎日を過ごしたよ。

気のせいだ気のせいだって、自分に言い聞かせた。

でもやっぱり気になって伏せ字になってる箇所を読もうとする。×のところがマジック太字でさ、読めないんだよ。目をこらしても見えず、消しゴムで消そうとしても消えず、何が書いてあったか分からない。読めそうで読めないのが気になって、この謎のメモを捨てられねえんだ。

登下校中は、やたらと周囲を気にするようになったよね。車は通ってないか、後ろから人が来てないか、すごい気にするようになったわけよ。

6月15日過ぎても何も起こらない。

6月20日を過ぎても何も起こらない。

よし、何も起こらない。車の通りが相変わらず多いが、人通りもやたらと多いが、俺は常に安全確認を怠らない。これなら大丈夫だ。

6月30日の夕方になった。よし、今日下校すればもう大丈夫だ。なんだ、心配して損したわ。何事も起こらない、気のせいだったな。

そう思っていたら、通りの向こうから早足で人が近づいてくるんだ。明らかに俺のことを見ている。まあドキドキしたよ。

近づいてきたその人は、親戚のおじさんだった。

「よう久しぶり。今日は親戚同士で集まる日だからむかえに来た。さあ来い」

「え、そうだっけ?」

「なんだ、お父さんから聞いていないのか?」

すっかり忘れていた。そう言えば30日に親戚同士で集まるって話になっていた。俺は、おじさんに言われるがままについていった。

このおじさんは年に一回会うぐらいの人。小さい頃からよく会っていた父の弟にあたる人だ。無愛想で、あんまりいい印象がない。

おじさんのあとをついてき、車に乗った。あんまり乗りたくはなかったんだが、断りにくいんだ、わざわざむかえに来てくれてるし。

後部座席の乗り、おじさんが運転する。おじさんの運転は、どこか荒い感じがあり、不安な気分がつのる。俺は不安を払拭する為に、おじさんに話しかけた。

「今日はおじいちゃん家に集まるんだっけ?」

俺が、そう聞いてもおじさんは答えない。無言で運転を続けている。

「これから行くところは…?」

俺がなおも質問すると、ふいに俺の言葉をさえぎるようにおじさんがしゃべりだす。

「メモ見てるよな?」

「え?」

俺は、ドキッとしたよ。

「メモをポケットに入れておいたはずなんだが」

「もしかして日にちが伏せ字になっていたやつ?」

俺はおそるおそる確かめた。

「そう、それ。準備はした?」

「準備?準備って何の?」

俺は、ドキドキして思わず聞いてしまう。

「事故にあう準備だよ、当然だろ」

俺は言葉が出ない。

「相続が兄になりそうなんだ。今日の集まりで正式に決まる。俺はやっぱり納得できない」

ああ、何を言っているんだ、このおじさんは。

「親戚のおじさんがむかえに行った際の事故なら同情してもらえるだろう。こっそりと忠告しておいたから、お前も準備はできてるはずだ」

「何を言ってるの?おじさん」

「伏せ字にしたのは、常に危険を意識して欲しいからなんだ。俺はもう毎日苦労してるからね。兄の息子がぬくぬくと学校に行ってるような状況は、それだけで我慢できないんだ。お前に罪はないんだけどな」

怖くて、ミラーにうつるおじさんの顔を見ることができない。車はどんどんスピードを上げていく。

「未成年だから名前は伏せてもらえるだろう。じゃあな」

それがおじさんの最後の言葉だった。

猛スピードで山道をかけあがった車は、ガードレールをつきやぶった。

(終)


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