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戸松有葉さん

ショートショート:小説投稿サイト「小説家になろう」で1001作以上、本サイト「時空モノガタリ」で入賞複数。 他、長編ライトノベルやエッセイなども。コメディ得意。 Amazon Kindle(電子書籍)http://amzn.to/1Xau7kMで活動中。(←URLは、Kindleストアを著者名「戸松有葉」で検索した結果。)代表作は『ショートショート集厳選集』とラノベの『二次元最高美少女』。 ツイッターは@tomatuariha3lb

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将来の夢 積極的安楽死法案
座右の銘 常識を疑え

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先生へのサプライズ

18/09/24 コンテスト(テーマ):第161回 時空モノガタリ文学賞 【 伝言 】 コメント:0件 戸松有葉 閲覧数:56

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 中学二年生のみっちゃんは、いいことを思い付きました。
 担任の先生の誕生日を、サプライズで祝ってみようと考えたのです。
 その男性教諭の評判は、人それぞれではありましたが、みっちゃんにとってはどうでもよいこと。初めてと言っていい恋心の前では、たとえ悪い評判を聞いたとしても、少数の奇人の見解だと変換されるのです。
 祝うならクラスのみんなで祝うべき。みっちゃん個人でやるのは様々な角度から無理があります。みっちゃんはあくまでも大勢の教え子の一人で、特別仲がいいわけではありません。この辺りは、恋心で舞い上がっていても、現実を直視できています。相手にされることがないことも重々承知です。
 クラスのみんなに報せれば、乗り気になってくれるだろうとは思いましたが、伝える方法に迷いました。数人の仲良しグループなら、他の誰にも知られることなくスマートフォンで報せられます。しかしクラスみんなとなると、そういうわけにもいきません。クラスメイト全員が繋がっているわけではないのです。
 まさか教室の掲示板で報せるわけにはいきません。サプライズではないにも程があります。なら、古典的な、メモを一人一人回していく手段は? これも危険です。全員へ行き渡るようにするには、授業中に決行するしかありませんが、先生本人に見付かりやすく、証拠が残るため言い訳も効きません。
 こうなると、証拠の残らない、口頭伝達でみんなに伝えていくしかないでしょう。そうみっちゃんは結論付けました。もし怪しまれても、みんなが共通の話題でコソコソしているとは思われないという楽観もありました。

 みっちゃんのクラスメイトでもある、さとし君は、不登校でこそありませんでしたが、学校や教師に強い不満を抱いていました。特に現在の担任は、その代表的な対象です。
 学習塾や進学塾は、当然のことながら、お金を払って勉強を教えてもらう場所です。しかし税金を投入している学校には、何も教わりません。
 勉強はまるで教わらず――だから塾が必要――、さとし君の場合なら教科書参考書があれば充分です。そればかりか、教師は誤った情報を平気で授業中(公務中)に教えるので、鵜呑みにしてしまう生徒がいて、勉強の邪魔なくらいです。
 勉強以外の様々なことは、何かと屁理屈が並べられますが、無意味を通り越して迷惑行為であり、子供の貴重な時間と体力を奪っています。
 音楽や保健体育などは、不要さが顕著なものです。どうでもいい単語の暗記や、苦手なものへのいじめ、更には危険な行為までして、肝心の心身に必要なことはまったく教えず無知な人間を世に送り出しています。
 加えて、それら教科の教員が、異常でもあります。もし学校以外にあんな大人がいたら、確実に排除されます。そんな人間の職のために教科が用意されていると言っても過言ではないほど、無意義な教科・人材ということです。

 さとし君がそうした不満を抱えながら学校生活を送っていた時に届いたのが、みっちゃん発の、担任教師サプライズ案伝言でした。
 内容は、「その日、担任が教室に入って来たら、みんなで大きな音で驚かそう」というものでした。
 不満を持っているとはいえ、具体的な解消策を持たないさとし君が、この悪戯に便乗しようと考えたのも無理はありません。

 当日、みっちゃんは不思議と落ち着いていました。準備段階ではドキドキしていましたが、本番を控えた今は、揺るがない意思で決行することだけに没頭できていたのです。
 一方のさとし君は緊張で胸が張り裂けそうでした。担任のことは許せない、しかしこの方法とは因果が感じられない。それでもこのチャンスは逃せない……。
 教室のドアが開きます。
 一斉に、数多くのクラッカーが鳴りました。
 しかし「誕生日おめでとう」の声は、誰からも発せられませんでした。
 多くのクラッカー音に混ざり、いいえ、打ち消すように、一際大きな音――銃声が響いていたのです。
 血に塗れた教師を前に、生徒たちは理解が追い付きませんでした。悲鳴やどよめきが起こるのは少し後の話です。
 上がっていた心拍数がこの事態で逆に下がったのは、さとし君でした。何が起きたのか、朧気ながら理解できたのです。自分は驚かすためにクラッカーを鳴らしたが、他の多くの者は悪戯ではなく祝いの意味だった――つまり伝言の途中で意味が変わっていたという真相。
 そしてこのイベントで、真に目的を果たしたのは……。
 どうせ叶わぬ恋ならば、誕生日という記念日に、こうした形で成就させよう。

(了)


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