田辺 ふみさん

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XX

18/09/17 コンテスト(テーマ):第160回 時空モノガタリ文学賞 【 伏字 】 コメント:0件 田辺 ふみ 閲覧数:89

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 あたしの家は古い由緒がある家で万葉時代から続いているんだって。
 屋敷は、あ、家っていう言葉が似合わないの。時代劇に出てくるような屋敷。木造で和風で、黒く塗られていて、まるで、悪役の屋敷だよ。信じられる? 江戸時代に作られたらしんだけど、住んでると、古臭くって、プライバシーもなくて、最悪。
 でもね、蔵があるの、蔵。
 お金持ちっぽいでしょ。
 お手伝いの沢さんがあたしに鍵を貸してくれたから、売れば儲かる物がないか、ただいま、捜索中。
 箱がいっぱいあるけど、売ってもバレないような小さい物ないかな。ちょっと、おこづかいの足しにしたいだけだから。
 持ち出しやすくて、ネットオークションに出せるような。
 小判ないかな。
 小判、小判。
 重い箱は開けると、壺が多い。きっと、高く売れるんだろうけど、すぐにバレるよね。
 これは何だろう? 軽いけど。
 開けると、出てきたのはまた、壺。
 真っ黒な壺だ。
 ただ、不思議なほど、軽い。プラスチックでできているような軽さ。でも、手で触った感じは陶器。
 不思議。
 壺の口は黄ばんだ紙で覆われていて、のりで貼り付けてあるみたい。さらにその上から厳重に紐がかけられている。紐には荷札がついている。
 これだけ、厳重に封がされているってことは中に何かいいものが入っているって、ことだよね。
 昔って、紙幣って、あったっけ?
 でも、壺を振っても、音はしない。中で何かが動く気配もない。
 紐についている荷札を見ると、白い新しい紙に文字はボールペンで書かれているみたい。
「子孫繁栄のため、XXをここに封印する」
 XXって、何?
 伏字にしないといけないようなヤバいもの?
 あー、ホラーだと、怪物が出てくるんだよね。で、あたしみたいな子はヒロインだから、逃げ出してセーフ。お手伝いさんは食べられちゃうかもしれない。
 でも、子孫繁栄のため、封印するってことは、怪物は子孫を狙っているということ? じゃあ、まず、あたしが狙われるのか。やだな、それは。
 怪物以外のものが入っている可能性はないのかな。
 お札。ご利益のあるお札。
 んー、封印せずに、神棚に飾りそうだよね。うちの屋敷、神棚も立派なのがあるから。
 神様。なんて、封印するのは無理だよね。
 あ、ご先祖様の霊はどうだろう。神様を封印するよりは簡単そうだし。
 この壺の軽さ自体、超常現象なのかもしれない。
 とりあえず、スマホで写真を撮っておこう。
 壺だけの写真と、壺を抱いたあたしの写真。
 SNSにアップ。「封印の壺発見!」でどうだ。
 すぐに友達からメッセージが来る。
「破っちゃえ」「中が見たい」「封印を開けるのは選ばれしお前しかいない」
 選ばれし者か。
 やっぱり、そうなる?
 あたしは紐をゆっくりとほどいた。
 それから、緊迫した顔のあたしの写真を撮って、これもSNSにアップ。
 そして、紙が破れないようにそっと、はがそうとした。
 ペリッ。
 のりが古くなっていたせいか、簡単に紙ははがれた。
 急に風が吹き、あたしはあわてて、壺を床に置いた。
 待って、風?
 蔵の中なのに?
 あたしは風で乱れた髪の毛を払った。
 暗い。
 徐々に目が慣れてくると、そこには何もなかった。
 自分のスマホがない。
 まわりにあった箱がない。
 壁がない。床がない。
 ありえない。
 天井を見上げると、丸く明るい光が見える。
 これって、まさか、壺の中?
「誰か! 助けて!」
 あたしはしばらく、叫び続けていた。
 疲れ切って、声が出なくなった頃、天井の穴に人の目が見えた。
「さすが、お嬢様。自らを貢物として、神様に捧げるのですね」
 お手伝いの沢さんだ。
「そんなわけないでしょ。あたしを出しなさい」
「出し方なんて、わかりません」
「壺を割ってみたら」
「いえ、大事に封印するようにと旦那様がおっしゃっています」
「罠だったのね、わざとあたしに鍵を貸したんでしょ」
 沢さんが笑ったような気がした。
 親父のやつ、浮気相手に子供ができたから、あたしのこと、どうでもいいと思っているんだ。
 穴の上に紙がかけられ、薄暗くなった。やばい、封印されちゃう。
「待って、封印されるバツバツって何よ。伏せている文字は何? あたしは当てはまらないんじゃないの?」
「バツではありません。Xですよ。お嬢様は勉強が苦手なので、ご存知ないかもしれませんが、XXは女性の遺伝子なんですよ」
「ちょっと、遺伝子が女ならいいって、どんな神様なのよ」
 叫んだが、返事は返ってこなかった。
 そして、世界は真っ暗になった。


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