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うたかたさん

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時を越えた記憶

18/09/15 コンテスト(テーマ):第160回 時空モノガタリ文学賞 【 伏字 】 コメント:1件 うたかた 閲覧数:164

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 時は2118年、十年前ほど前にタイムマシンで過去や未来に行くことが民間人でも可能になり、社会ではそれに関する法律も制定された。もちろん、自由に行けるわけではなく、タイムマシンを管理する政府機関に行って正しい申請を行う必要がある。この日俺は、丁度十年前の日に戻るためにこの期間を訪れていた。

「それでは、こちらへどうぞ」

「わかりました」

 俺は返事をしたが、この女性はどうせアンドロイドだ。しかし、人とほぼ同じ感情をもつことができるらしいから感心だ。
 密閉された一帖ほどの白い空間に入ると、そこにあるこれもまた白い椅子に腰を掛けた。

「それではお気をつけて」

 部屋の外からは、防音素材の壁なのだろうがものすごい機械音が聞こえてくる。それでも恐怖は感じない。目的を達成するためならばこんなことは気に障らなかった。
 あの日に戻って、彼女の気持ちを知りたいのだ。あの日死んでしまった彼女の気持ちを。
 俺は、いつの間にか眠りについていた。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 目が覚めると、俺は通っていた小学校の門の前にいた。目的の場所だ。近くの時計を見ると、それは午後二時五十分を指していた。下校時刻の三時までほぼ時間がない。俺は急いで近くの隠れる場所を探した。街路樹の裏に立つ。
 彼女はこの学校前の横断歩道に飛び出し、車に轢かれてしまう。その彼女を救うのが過去に来た目的だ。もちろん、人の生死にかかわる行動は絶対にするなと機関の大人に言われた。それをするとどうなるかについても聞かされたのだが、そんなこと守るつもりは初めからなかったから内容など覚えていない。
 自分がしようとしていることの重大さは理解しているつもりだ。しかし、これと彼女の死とを秤にかけたら答えはこれしか出せなかった。
 何度も悩みに悩んだ。こんな哀れな俺に。

「また明日な!」

「うん、じゃあね」

 俺が出てきた。小学一年生の俺だ。友人と別れた俺はこの後、点滅を始めた信号を急いで渡る。そのあとを追いかけてきた彼女は赤信号を渡ってしまうのだ。
 一瞬にしてあの光景が浮かんだ。敢えて思えださないようにしてきたのに、この光景を前にして防ぎきれるわけもなく。
 横断歩道の前に来た過去の俺は、やはり、点滅する信号を渡ろうとした。今だ、今しかない、今止めなければならない。なんの躊躇もなく俺はそいつに近づく。

「ねえ、君、何か忘れ物してない?」

 過去の俺は、驚いた表情と若干の恐怖の表情を見せた。

「え、えっと、あ! 思い出した‼ ありがとおじさん‼」

「うん、いいよ」

 元気な笑顔をした過去の俺は勢いよく学校の方に戻っていった。そう、彼女から貰った手紙に書いてあった『私は君のことがXXです。』の「XX」に当てはまる答えを、この時の俺は待っていた。今になったら容易に思いつく答えにも、あの時はおかしなほど気になっていた。
 その答えはこの日の放課後、丁度今の時間に聞くことになっていたのだ。それなのにこんな大切なことも忘れて急いで帰ろうとした俺は、どれほど惨めであったのだろうか。

 ふと学校の方に視線を向けると、俺は彼女となにか恥ずかしそうに話をしていた。

「よかったな、お前」

 そうだ、これだ、これが見たかったんだ。どうだ過去の俺、いい答えは聞けたか。これからのお前は俺よりももっと充実した人生を送っていくんだろうな。羨ましい、あの時の俺に言ってやりたい。
 俺は、鮮やかな赤に染まった信号を見つめながら秋の冷えた空気に包まれて、走る車の前に立った――。


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このストーリーに関するコメント

18/09/16 hayakawa

どれほど惨めであったのだろうか。

ここが好きです。

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