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土佐 千里さん

とさちさとです♪田舎でのんびり過ごしています^^

性別 女性
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心の伏字

18/09/10 コンテスト(テーマ):第160回 時空モノガタリ文学賞 【 伏字 】 コメント:2件 土佐 千里 閲覧数:204

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 今日、久しぶりに昔の恋人の達也を見かけた。私は結婚してしまっているけど達也はまだ独身。
 わざと私に見えるような位置を歩いていた。まだ、恋人はいないみたいだけど、わざと女子社員と仲よさそうな笑顔を浮かべていた。彼はきっと、すでに結婚して子供もいる私にみえるように、こんな笑顔をしたんだと思う。俺だって楽しくやっているよって。わざと視界に入る距離で、そう伝えていることがわかった。でもあなたと長いこと一緒にいた私は知っている。あの笑顔はあなたの本当の笑顔では無いことを。
 私のほうから、達也とお別れを決めたから、彼は私の気持ちはもうないと思っているに違いない。それ以来、社内で顔をあわせても、達也と言葉を交わすことはない私達。
 でも本当は違う。結婚するならあなたのほうがよかったと、私は今も思っているということをあなたは知らない。
 あの別れのタイミングは複雑だった。あなたと付き合っていたとき、私の地域に震災があった。
 そのとき、ある人のメールで、私とあなたは離れ離れになってしまったのだ。
 震災当日に、「久しぶり!地震大丈夫だった?」と1本の短いメールがきた。
 そのメールは学生時代に付き合っていたケン君からのメールだった。彼とは、中学時代から社会人になるまでずっとつきあっていたから、10年ちかくつきあっていたことになる。
 私は彼が大好きだった。一緒に笑えるし、喧嘩したこともない。中学時代から結婚も考えていたくらいだ。
 でも、社会人になった彼は、急変した。「お前をもう女としてみられない、女の魅力が無い」突然、岩のようなもので頭を殴られたかのように、車の中でこの言葉を告げられ、もう会うことがなくなったが、彼のことを忘れられなかった。そんな彼が、震災のときに急に連絡してきたから、私はまた彼の胸に飛び込みたくなり、すぐにメールを返信した。
 「久しぶり!心配してくれてありがとう!幸いに私のところは大丈夫だったよ!ケンくんのほうも大丈夫?」
数分後。
「こっちも大丈夫だよ!元気そうでよかった。よければ今度の日曜日、アジサイでも見に行かない?」
・・・これってデートの誘い?もちろん!私、ケンくんと会いたい!
「ぜひぜひ!今度の日曜日は1日あいているから大丈夫だよ!日曜日が楽しみ!」
 この日から、ケンくんと再度付き合うことになった。だから、私は達也とのお別れを決めた。
 「達也とはなんとなく、価値観があわない気がする。さようなら」
それだけ言って、達也とは連絡をとらなくなったことが最後だ。ケンくんに比べれば達也のほうが私は好きではなかったから。
 でも、結局はケンくんとももう一度さようならしなければならない運命とは知らずに。

 私の父は社長だった。だからその紹介で結婚させられたといってもいいだろう。本当に好きな人ではなかったが、仕方なしに今の主人と結婚した。
 ケンくんとも、達也とも結婚できず、最終的には自分からお別れを告げた。
 そんなこと誰にも言えずに、今、子供もいて普通の家庭を築いている。父は社長だし、周りからみたら幸せだねと思われているだけだ。うらやましがられることもあるが、なにも答えられない。
 本当の気持ちを伝えることも出来ず、毎日ただただもがいている。特に今日みたいに同じ社内の達也に会うたびに胸が苦しくなる。私の心の中には伏字がたくさんあって埋もれそうだ。達也に伝えたかった。今も好きですと。これからも苦しめられるのだろうか。このだれにも伝えることのない心の伏字に。
 とある6月の日、そんな日記を書いてみたが、ブログ更新のボタンを押せないままだ。この文章はこれからもブログ作成中のフォルダに入ったままだろう。


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このストーリーに関するコメント

18/09/16 hayakawa

読んでいて、カタルシスを感じました。

18/09/17 土佐 千里

はやかわさま
コメントをいただきとてもうれしいです!ありがとうございます。

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