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マサフトさん

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ルポルタージュ:紙面の白き盾

18/09/05 コンテスト(テーマ):第160回 時空モノガタリ文学賞 【 伏字 】 コメント:1件 マサフト 閲覧数:170

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「伏せろおおーーー‼」

分隊長の怒号が飛ぶ。
私の目の前で整然と並ぶ、丸く白い盾を持った兵士たちが一斉に紙面に這いつくばった。盾を背中に構え、跪く彼らは守っているのだ。紙面に浮かぶ文字を。その文字をうかがい知ることは私にはできない。


先程の号令を飛ばした分隊長にお話を伺う。

ーーどんな文字を守っているのですか?

「はっ!機密事項であるためっ、わたくしにはっ、お答えする権利はございません!またっ、お答えしないことが義務であります!ご容赦下さい!」

口髭を蓄えた堅苦しい分隊長はハキハキと応えた。

(そう言われることは○かっていながら質問した私も○地が悪いな)

ーーなぜ私があなた方に目を向けると皆紙面に伏せてしまうのですか?

「はいっ!我々の足元に機密事項があるからであります!」

ーーその機密事項とやらは動かせないのですか?

「機密事項に関してはっ、移動・開示・削除などの権限は全て元帥たる編集長に有りっ、編集長の指示なくば移動する等の行動は一切行なえません!」

ーーではあなた方も移動できない、ということでしょうか。

「頁が開かれている間に限ってはっ、であります!頁が閉じられている間は待機状態として扱われ、盾を降ろすことを許されるのであります!」

(堅○め。せっかく現場の声を聞きに来たのに、これじゃあまるでプロパガ○ダだ。この辺りで切り上げてもう少しくだ○た奴に話を聞こう)

ーーお疲れ様です。あなたの分隊の隊員たちにもお話を伺ってよろしいでしょうか。

「労いのお言葉恐れ入ります!わたくしの部下でよろしければ幾らでもどうぞ!」

彼の朗々とした声には、機密を守るという力強い義務感が感じられた。なんと頼もしいことか。


(分隊長どのの堅○○さには辟☆易した。彼の部下たちはこの○物と比べると親しみやすく見えるな)

1文字目を守っている隊長の後ろ、2文字目の隊員に話を伺う。

ーーお仕事大変かと思いますが、心境をお聞かせください。

「仕事ねぇ、意味あるのかねぇこの行為にさ」

くたびれた顔をした隊員は、着崩した制服の懐からタバコを取り出し、ふかし始めた。歴戦の猛者の貫禄たっぷりだ。

(なんだ?こ○つ。いきなり否○しやがった。てか不●●目だな)

「だってよぉ、俺らが隠してる単語の3文字目と5文字目、あえて隠してねぇんだぜ?これってつまりさ、単語を伏せたいんじゃなくて逆に強調したいんじゃねぇのか?」

「そうだそうだ。そう言う種類の伏せ字もあるんだぜ」

「そこんとこ分隊長は履き違えてるよなぁ。なぁーにが『機密事項でありますっ!』だよ。バレバレだっつうの」

他の隊員たちも各々意見を出し合う。規律の中にも自由な風潮が感じられる。

(くそっ。口々に勝○に言いやがって。分隊長と真逆の不☆良だらけじゃねぇか)

ーーそれでも、伏せなければならないと判断されたからあなた方が配属されているのではないのですか?

「へっ、そう思ってるのは頭固い分隊長だけだぜ。俺ら白丸伏せ字とか黒丸伏せ字とか、星型伏せ字は単語を全部隠すことの方が稀だっての」

「さっき2文字目の奴が言ったみたいに逆に単語を強調したいだけなんだって。分かる人は分かってくださいねぇーってやつだ。例えばリンゴって単語を知らない奴がリ○ゴって見てもなんだかわかんねぇけど、知ってる奴なら分かるだろ?」

(生●気言ってんじゃねぇよ。こちとら機密を守る白き盾って触れ込みでルポルタージュしてんだよ。今んとこ使えるインタビューが堅○分隊長のところだけじゃねえか)

ーーそれでは、やり甲斐のある仕事ではないと?

「あークソ喰らえだ。重てぇ白丸背負ってよぉ、文字隠すと思やバレバレでしたー、なんて笑えもしねぇ」

「黒塗りの連中は良いよなぁー。奴らマジもんの機密事項守ってるからそりゃやり甲斐あるわなー」

「バーカあいつらエリート中のエリートだろ。俺たちがいる三流雑誌とは土俵がちげーよ」

(あー、ク☆ソ、話になりゃしねぇ。しゃーない、分隊長にもう少し話を聞こう。部下たちのインタビューはカッ○だ)

「つか、なんであんたこんな週刊誌にそんなお固そうなルポしに来たの?黒塗りの連中のところ行けばちゃんとしたインタビューできたでしょーが」

ーーえ?

「ていうかこいつもド三流ってことでしょ、さっきから心の声文字になってダダ漏れてるし。しかもそれに気付いてないし」

ーーえっ?……えっ?

「カギカッコじゃない方のカッコのところ、あんたの愚痴でしょ?文字になって流れちゃってるよー。あんた紙面初心者?」

「今の内に頼めば、伏せ字にしてやるよ、ケケッ」

「でも俺らクソ生意気でクソ不真面目だからよぉ、全部は隠せないかもなぁー」


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このストーリーに関するコメント

18/09/16 hayakawa

高い技術力だと思いました。

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