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hayakawaさん

大学院生です。

性別 男性
将来の夢
座右の銘 能ある鷹は爪を隠す。

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君と過ごした日々

18/09/04 コンテスト(テーマ):第160回 時空モノガタリ文学賞 【 伏字 】 コメント:0件 hayakawa 閲覧数:204

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 朝目覚めて、太陽の日差しを眺める。美しい景色だ。初夏の太陽は黄金に輝いている。
 リビングに降りていくと母親が朝食を作っている。
「お母さん。おはよう」
「おはよう。圭」
 母親と僕の二人暮らしだ。母親は父親と僕が生まれた時、離婚した。理由はわからない。
 僕らは朝食が出来上がると食べた。
「圭は好きな人いるの?」
「いない」
 僕はそう言って嘘をつく。高校三年生の僕は同じクラスの由衣という女子に片思いしていることは黙っていた。たまたま隣の席に座っているのを見て話し始めたのがきっかけで好きになった。
「好きな人と結婚するのが一番幸せよ」
 母親はそう言った。
 僕は学校に行く支度をして、家を出た。大きな通りを歩いて行く。途中犬の散歩をしている主婦に出くわす。僕はちらっと犬を一瞥する。
 学校に着くと隣に由衣が座っている。僕はさっきの母親の言葉を思い出し、彼女と結婚できたら幸せだなと思った。
「おはよー」
 由衣はそう言って話しかけてくる。それだけでも幸運だと思った。
「おはよう」
 僕は返事をする。
「昨日は何してたの?」
「別に。普通に家で勉強してた」
 僕はそう言った。
「偉いね。私なんか全然勉強してない」
「そうなんだ」
「そうだよー」
 由衣は僕の方を見ている。僕は恥ずかしさから目をそらす。なんだか気まずい感じだった。
「今日の放課後、暇?」
「別に暇だけど」
「一緒に勉強しない?」
 僕はどきどきしていた。あの好きな由衣から誘われたのだ。
「いいよ」
 僕はそう言う。チャイムが鳴る。先生が教室に入ってくる。
「これから出席を取ります」
 由衣は何事もなかったかのように前を向いている。
 授業の間、僕は由衣の方を時々見ていた。由衣はおそらく気づいていない。
 昼休みになると、由衣は女子のグループの中へと行く。僕の前の席には友達の祐が座る。
「最近、なんかいいことあった?」
 祐は僕に聞く。
「別に」
「だよなー。今日、ファミレス行かない?」
「いや、今日は予定が」
 そんな感じで僕は断った。
 午後の授業を僕らは受ける。とても平和なクラスだった。いじめもないし、皆仲良く過ごしている。
 放課後になると由衣に誘われて、一緒に教室を出た。
「どこで勉強する?」
「うーん。カフェがいいかな」
 僕はそう言った。
 カフェの中に入り、僕らはアイスコーヒーを注文した。
「ねえ、圭君は好きな人いるの?」
「いない」
 本当は由衣に向かって「〇〇」と言ったつもりだが、口からは違う言葉が出てくる。
「ふーん」
 由衣はそう言ってストローでコーヒーを飲む。
「由衣は好きな人いるの?」
「別にー」
 そんな感じで僕らの初めての二人だけのカフェでの勉強は終わった。
 それから季節は秋になり、本格的に受験勉強が始まった。由衣とはすっかり席が離れてしまった。必然的に僕らは話すことが少なくなった。
「ねえ、圭君」
 ある日、由衣にそう言われた。
「何?」
「今日、放課後勉強しない?」
「いいよ」
 僕らは久しぶりに二人で、カフェで勉強をした。彼女は黙ってコーヒーを飲み、参考書の問題を解いていた。僕も同じように黙っていた。
「じゃあまたね」
 夜になる前に僕らは別れた。僕は家に帰る。
 そんな感じで秋は過ぎ去っていき、冬がやってきて、受験シーズンとなった。僕はその時、由衣のことより受験のプレッシャーを感じていた。そして由衣も僕に話しかけてくることはなかった。
 受験が終わり、学校は自由登校になった。僕は地元の私立の大学に合格した。久しぶりに学校に行ったときに、由衣と偶然すれ違った。
「私、東京の大学に受かったの」
「凄いね」
「圭君は?」
「僕は地元の大学に」
 そう言って別れようとしたとき、僕は彼女に向かって「好き」と言った。
「え?」
 由衣はそう言って聞き返す。
「好き」
 僕は小さな声でそう言った。
「私のことが?」
「そう」
 僕はそう言ってその場から恥ずかしくて去った。人生初めての告白だった。
 その日以来、僕と由衣は話すことはなかった。
 卒業式の日、僕はこの高校生活が終ることを悲しみ泣いていた。卒業証書を先生から渡され、僕は席についた。僕は由衣のことを眺めていた。これで会うのも最後だと思った。先生が最後の言葉を僕らに話して、解散となった。僕は由衣の方をただ見ていた。彼女は泣いていた。そして最後に彼女と話そうと僕は彼女の元に近づいて行く。
「ねえ」
 初めて僕は彼女に声をかけた。
「あ、圭君」
 彼女はそう言った。
「これで会うのも最後かなと思って」
「え?」
 彼女はそう言った。
「どういうこと?」
「私もずっと君のことが好きだったよ」
 彼女はそう言って微笑んだ。


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