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春海さん

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きにして

18/08/31 コンテスト(テーマ):第160回 時空モノガタリ文学賞 【 伏字 】 コメント:0件 春海 閲覧数:150

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濃い霧の中。冷たい朝の気配が辺りにたち籠めている。
こんな早い時間に、何故私は一人通学路を歩いているのか。
ぽつりぽつりとすれ違う人はランニング中か犬の散歩。
こういう雰囲気ってなんて言うんだっけ? あ、そうそう。せいひつな感じ。漢字は分からないケド。

なんだかざわざわする。静かで、でも何か動き出しそうな。実はニンゲンは世界に私一人になっちゃっていて、周囲の家の中には巨大化した動物とかエイリアンが私を食べようと息を殺して隠れているかも。
なあんて。あは、面白い。

真っ白な視界の中に足音が響く。踵とアスファルトのランデブー。
こんなに視界が白いと、頭の中にまで靄がかかる。昨日の記憶が甦ってくる。
「なんだよ、変な奴だな」
ちょっとぶっきらぼうな声を、思い出しては腹が立つ。ふーんだ。私が変わってるんじゃなくて、アンタが変なんだよ。
「ダイスケさん。折り入ってお話が」って、女の子がモジモジしながら切り出したら、告白に決まっているじゃない? なのに。
「ああ?またかよ。この間もラーメン奢ったばっかだろ」って。
「いやいや、今日は奢って欲しいわけではなくて! その、ちょっとここでは何なので、人が居ないところに来て欲しいな、とか思うんですが」モジモジ。
「なに、パンでも奢ってくれんのか?」
「違う!!」
「もしかしてカツアゲか」
「違う!!」
「違うのかよ。じゃあ寝るから、始業十秒前に起こせ」
「ちょっと待てー!!」
「なんだよ、変な奴だな。とりあえずおやすみ」
「ダイスケーー!!寝るなアホーー!!」

遠くで犬が鳴いている。泣きたいのはこっちだよ。
霧はまだ濃い。ねぇ犬のエイリアン。私を食べるなら今がチャンスだよ。
今なら誰にも気付かれず、アイツにも告白できず、傷付く前に消え去れる。
公園について、ブランコを軽く漕ぐ。
うーん。センチメンタルだなあ。恋する乙女って感じでしょ?美味しそうじゃない?キリンのエイリアン。

だんだん辺りが明るくなってきた。肌が湿り気を帯びている。
私ったら、目からじゃなく、肌から涙を流したのかしら。
実はエイリアンは私でしたっていうオチもなかなか良いネ。

落ちていた木の枝で、ブランコに座ったまま地面に字を書く。
ばかやろう だいす○
最後の文字を、きと読むか、けと読むか決めてもらおう。
さて。アイツがここを通るまで。
私は息を殺して獲物を待つ弱腰エイリアン。


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