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カジキMさん

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『非現実』

18/08/27 コンテスト(テーマ):第160回 時空モノガタリ文学賞 【 伏字 】 コメント:0件 カジキM 閲覧数:199

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 卑猥な言葉を叫びたい。
 そんな衝動に駆られる。
 「○×△△」や「△□〇」など、ここに記すには伏字にしなければならないような、私たちが生きる社会の上では決して使ってはいけないような単語をだ。
 なるべく堅苦しい場面が望ましい。大学の講義、会社の会議、葬式、そんな場面で幼稚な声色で、無邪気に卑猥な言葉を叫べたらどんなに快感だろう。

 こんな衝動に目覚めたのは、中学生の頃だった。気まずいようなピリピリとした保健の授業の時間だったと思う。
 クラスの問題児だったS君が、しんと静まり返った教室の中で突然立ち上がり、
「〇×△△!!」
と卑猥な単語を、を何の脈絡もなく、叫んだのである。
 一瞬、時が止まったような感覚のあと、クラスがざわつきはじめた。何人かは顔を伏せて笑いをこらえていた。当然、S君は先生にひどく怒られ、頭を強く叩かれた。
 S君が何を思ってそんな卑猥な言葉を、あの場面で叫んだのかはわからない。彼はただの馬鹿だったのかもしれない。
 しかし、私はそんなS君に物凄い衝撃をうけた。
 S君が私に『現実』を壊し、一瞬だけ『非現実』を味わわせてくれた!そのように感じた。
 授業を静かに真面目に受ける。先生が黒板に書くものを、ノートに必死に書き写す。それがこの場面の常識であり、『現実』である。そんな空気とは無縁な「〇×△△」という言葉をS君が叫ぶことにより、その『現実』が一瞬ではあるが、ぶっ壊されたのである。
 まるで、宇宙人や幽霊に出会ったような『非現実』をその瞬間、私は体験したのである。

 私はあの時感じた『非現実』をもう一度味わいたい。
 方法は簡単だ。S君のように、私が卑猥な言葉を叫べばよいのである。
 社会人になった私は何度も、「〇×△△!」と叫べたら楽しいだろうなと考えた場面があった。圧迫面接の中、嫌いな上司との面談中、悪質なクレーマーとの戦いの最中…そんな場面で、いつも卑猥な言葉が頭に浮かび、口からこぼれそうになる。
 しかし、それを実行してしまったら私は自分の社会的な地位を失ってしまうだろう。職を失い、信用を失い、下手をしたら家族をも失ってしまう。
 『非現実』を味わったら、今の『現実』に戻れなくなってしまうのではないか。

 しかし、もう私は『現実』に疲れを感じている。
 一度「〇×△△!」と叫び、『現実』と決別し、S君に会いに行こうかと悩む事がある。


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