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土佐 千里さん

とさちさとです♪田舎でのんびり過ごしています^^

性別 女性
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無口な私の分岐点

18/08/21 コンテスト(テーマ):第160回 時空モノガタリ文学賞 【 伏字 】 コメント:0件 土佐 千里 閲覧数:181

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 私はこれまで、なんとなく平凡な人生を歩んできた。性格も無口なほうで、あまり友達もいない。いじめられている人をみても注意もできず、逆にいじめられることもあった。将来なりたいものがなく、公立の小学校から中学、高校、そして何の苦労もなく、大学は指定校推薦がきている学校に面接だけで入学した。
 就職活動の時期になって、これといった企業も特に無く、ヘタな鉄砲も数うちゃあたる方式で、幅広い業種の就職試験を100社ほど受けた。その中で、ある一つの会社から、内定の連絡がきた。ほかの会社からも内定が来たかもしれないが、家から通える範囲にあるし、本命の会社もなかったので、一つ返事でこの会社に決めた。
 入社後、私の同期は80人ほどいた。ほとんどの同期は、この会社が第一希望ではなかったといっている人が多かった。(まあ、確かに1流の会社ではないが入社できただけでもいいのではないか)と私は冷めた目で見ていた。
 新入社員研修で、相変わらず、同期の志は高かった。各職場の仕事内容の説明を聞くと、「出世したい!」「海外に出たい!」「色々な拠点を回りたい」と発言をしている人が多かった。私はとくにこれといってこの会社でやりたいこともなく、ただ静かに研修を受けていた。
 各人のこれから会社でやりたいことを誓った後は、コンプライアンスについて学んだ。
「会社の不正は、会社を滅ぼすことになる。だから絶対に不正や失敗を隠蔽してはいけない。もし、不正をみかけたら、注意する勇気を持ちましょう」
私は、とくにモチベーションもなく入社していたが、この信念だけは忘れないようにしようと心に誓ったのである。
 全ての研修が終わり、私たちは配属が決まった。私の部署は原価管理部だった。とくに希望していた部署ではなく、何をしている部署かよくわからなかったが、初日から仕事を教えてもらった。部長は厳格で威圧的な雰囲気で、印鑑が曲がっていただけで注意され、怒ると怖かった。
 入社して3年。仕事も板についてきたある日、部長に頼まれた仕事があった。それは書類の中に伏字をするよう頼まれたのだ。「今回は損失が多かった。悪いけど、これらの数字はデータに載せないでおいてくれるか」そう言われた書類の伏字該当箇所は20箇所にも及んでいた。(これってコンプライアンスに違反するよね)
 私はしばらく悩んだが、やっぱり勇気をだして、部長にいうことにした。
 「この仕事、引き受けられません。コンプライアンスに違反すると思います」
 普段、無口な私の口調ははっきりしていて、部長も息をのみ、一瞬眉間に皺がよったが、一呼吸置き、
 「そうか、いままで、こういったマイナス要素は隠蔽してきた。いままでの事務員はみんなやってたことだ。でも君はしっかり指摘した。ありがとう。君は信頼できる。これからは、役職をもってもらうことにする」
 ほかのどの同期の誰よりも、一番モチベーションの低かった無口な私が、今では同期を部下として一生涯働いたのであった。


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