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篠五野 ユウさん

性別 男性
将来の夢
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「秘め事」

18/08/21 コンテスト(テーマ):第160回 時空モノガタリ文学賞 【 伏字 】 コメント:0件 篠五野 ユウ 閲覧数:149

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 成功したの。
 そう、同性だからと半ば諦めていたけれど告白が成功したの。それでね、それでね。私達、恋人になったの。そして、その日のうちにどちらともなくキスしたの。放課後の教室。カーテンに隠れて。二人の秘め事。はじめの秘め事。だーれにも言えない空白だから秘密にしましょう。そうしましょう。それでね、それでね。神様が、夕焼け小焼けの茜の色で、二人の頬と。私の本当の色を隠してくれたの。

 「シノさん、どうなされたの?」
 五野ユウは戸惑っていた。初めての恋人であるシノが突然誰もいない放課後の教室で泣き出したのだ。
 「酷い!酷い!!酷い!!!!どうして、ユウさんは五限目の現国の授業で、私以外の方とお話になったの!」
 「シノさん落ち着いて」
 「嫌よ!嫌よ!!嫌よ!!!私はユウさんが他の方と仲良くするのは!」
 「分かったわ。もう他の人とはお喋りしない。約束よ」
 シノを落ちつかせるために、ユウはしぶしぶ小指を差し出した。
 「本当!本当!!本当!!!嘘ついたら針千本よ!」
 シノは嬉しそうに小指を差し出して絡めた。
 五野ユウは全てが初めてのことだらけだった。恋人が出来たこと。シノの性格の落差が激しいこと。わがままなシノに愛想を尽かして、すぐに別れるのではと思いきや、むしろ、より引かれていった。何というかシノには何か特別な雰囲気が取り巻いていた。その魅力に五野ユウは逆らえなかった。それと、五野ユウがシノについて知っていることは、登校と下校は、いつも車で送り迎えしてもらっているという事、一年中何故か冬服を着ているという事だけだった。なので、大層お金持ちなんだろうと五野ユウは思っていた。それに女子校という雰囲気が二人の仲を更に親密に、孤立させていった。
 余談だが、ここの私立の女子校は全国でも珍しく教師陣までもが女性という徹底ぶりである。
 付き合い始めて三ヶ月、二人で放課後の誰も居ない教室で日が暮れるまで、会話を楽しむのが日課になっていた。この日も夕日が綺麗だった。
 「ユウさん私ね、大好きなパパが檻の中に閉じ込められてるの」
 「そ、それは逮捕されてる、ということかしら?」
 「そうよ」
 いきなりのカミングアウト。五野ユウは戸惑いを隠しきれない。シノといると戸惑いの連続である。
 「それでね、母方の祖母の家に住むことになったわ。けれどママは他に男をつくって、今は行方不明」
 「辛かったわね」
 「そう。みーんな、『辛かったわね。もう部屋で独りで脅えなくていいんだよ』て言っていたけど、私には何のことなのか分からなかったの。パパと離れたことが一番辛かったわ。それでね、それでね。祖母が私に言ったの。『あの私立の女子校ならもう安心していいのよ。部屋で一人、男性の事で怖がることもないわ』て」
 「シノさん。何をおっしゃってるの?」
 「私はね、パパが大好きだったの。二人っきりになると、よく二人だけの秘め事をしてくれたの。でも、世の中は私とパパに嫉妬した」
 「シノさん、それは……」
 「ユウさん。今日ね、帰りの迎えが来た後、私の家には、だーれも居ないの。だから、ね?一緒にパパとやった、楽しい秘め事、いたしましょう。そうしましょう。」

 「シノさん、誰かが見てる気がする」
 きっとお星様ね。彼らは織姫と彦星の仲を裂くお手伝いをするほど悪趣味ですもの。
 だから、あの日のように、カーテンで隠しましょう。そうしましょう。それに、これからの出来事は二人だけの秘め事。ふたつめの秘め事。だーれにも言えない空白だから、伏字にしましょう。そうしましょう。それでね、それでね。私達、○○したの。


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