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君鳥いろさん

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とある哲学者の言葉

18/08/20 コンテスト(テーマ):第159回 時空モノガタリ文学賞 【 片想い 】 コメント:0件 君鳥いろ 閲覧数:137

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「こんなに好きなのになあ」
彼女は秋空を仰いではにかんだ。
「…うん」
彼は俯き気味に彼女の隣を歩いていた。
放課後の帰路は、辺り一面が夕陽に染め上げられている。
「やっぱり私じゃだめかな」
彼女の言葉に彼は押し黙る。すると彼女はまた、唇を小さく開ける。
「…後悔するよ、私を選んでおけば良かったのにって」
強気な台詞とは裏腹に、震わせた空気は僅かだった。彼女は視線を下げる。そして頬を伝いそうになった熱に気づき、顔を上げる。溢れ出る気持ちも全てこらえて、また視線を落とした。
二人の間に、風が吹いた。
「…やっぱり、ごめん」
彼が呟いた。彼女は顔を背けた。
「告白、嬉しかった。でもやっぱり…ごめん」
慎重に言葉を探していたが、口からこぼれたのは簡素なものだった。嬉しかった。傷つけたくなかった。…しかし、彼は彼女の想いに応えることはできなかった。
「…そっか」
二人の歩調はいつの間にかとても遅くなっていた。彼女が大きく一歩を踏み出せば、容易に彼の前に立つことができた。彼は不意のことに立ち止まり、顔を上げて目の前の女の子を視界に捉える。
彼女は彼の方へ振り返り、涙をうんと堪えた。
そして、精一杯の笑顔を見せた。

「ざまあみろっ」

そのとき、初めて二人の視線が重なった。
長い時が流れたようだった。
次の瞬間、彼女は背中を向けて走り出した。走って走って、太陽と一緒に夜から逃げた。
一方、彼はその場に立ち尽くしていた。
彼女の、涙と夕陽に彩られた笑顔に目を奪われた。彼は知らなかったのだ。最期になって、今やっと気づいたのだ。
夕焼けがこんなに眩しいなんてことに。




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