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とむなおさん

とむなお――です。 ちょっと奇妙な小説を書きます。どうぞ宜しく!

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こんな隣人のハナシ

18/08/20 コンテスト(テーマ):第160回 時空モノガタリ文学賞 【 伏字 】 コメント:0件 とむなお 閲覧数:182

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ハッ――と、僕は起き上がった。
「なーんだ、夢か……」
僕は、ホテルの涼しいロビーで寝ていたのだ。
やがて僕は、ヨロヨロとホテルから出ると、都心の空に目をやった。

ジメジメした季節が過ぎ去り、次の季節がやってきて、一ヶ月が過ぎようとしていた……。
――が、太陽は、日の出を少し過ぎると、めいっぱいの熱量を、人々の頭上に降りそそぐ。
街は昼を待たず、ふっとう寸前のヤカン同然……と言いたい心境だった。
やがて、それまであった影が消える頃には、この夏が、いつ終わるのか……? という思いにも疲れ、誰かとの会話も、かげろうのように揺れながら、その内容自体をむなしく失っていくように思えた。
つい先日、造られたばかりの墓場にも似たこの街で、僕もまた希望を忘れ、未来も見えない放浪者になっていくようだった……。

僕自身、派遣労働者として生きてきた……という現実が、回想の中で幻影化していくもどかしさを覚えつつ、毎日を送っていた。
そんな昼下がり……とあるコンビニで、僕も雑誌を見ていた時だった。
ヨレヨレのジャケットを着た探偵風の中年男が、ガラケーで誰かと会話していた。
「……その、○△荘は、十年以上前から廃屋同然でして、誰も住んでませんでしたよ。はい。じゃ、調査費の方はよろしく……」
と報告して電話を切り、
「まったく、クソ暑い上に、クソみたいな仕事だったな……」
などと言いながら去って行った。
僕は興味を持ち、二階建ての『○△荘』なる、その廃アパートに向かった。
一階の窓からは、背の高い雑草しか見えなかったので、二階に向かった。
そして最もマシだった階段側から二ヶ所目の部屋に決めた。
やはり電気も使えなかったが、ラッキーにも電線はアパートまで届いていた。
僕は分電盤のブレーカーを入れてみた。
すると使えそうだったのでスマホの充電ランプを確認した。
僕は、すぐに街に行くと、コンビニで夕食や雑誌などを購入してから、その廃アパートに戻った。
スマホで翌日の仕事の段取りを確認すると、階段側の隣室に入り、しみじみ見ながら、
「……つまらんな……。隣人がどんなヤツか妄想するのが楽しみなのに……」
その部屋は見事なほどの廃屋で、壁や天井はボロボロ。畳も押入れの戸も無い状態だった。
僕は廊下に出ると、閉めたドアの小さな穴から中を覗いた。ちょうど残照が窓から入ってきていた。
「こうやって見ると、どことなくアートっぽく見えるから面白い……なーんて、な」
僕は隣の部屋に戻るとコンビニ弁当を食べ、日没まで雑誌を見てから、スマホの充電を始めつつ眠についた。
――真夜中、ふと目をさました。
誰かが階段を上がってくる音が聞こえたからだ。
この周りには他のアパートは無いから、ここの階段に間違いなかった。
――浮浪者か? ひょっとして、さっきの探偵の依頼者が確認に来たとか?―― 
僕は押入れの陰に素早く移動した。
その人物は、まるでここの住人のように、慣れた足取りで階段を上がり切ると、さっき見物した隣室に入ったのだ。
――えっ?
僕は思わず声を出しそうになった。
訳が分からないまま、壁にそーっと近付いた。が、何の音も聞こえなかった。
――まさか……幽霊?
僕は仕方なく、そのまま耳を壁に付けた状態でいた。
そして眠ってしまった。
次に僕が目を開けたのは、何かの物音が聞こえた時で、思わず自室全体を見た。
が、当然ながら誰もいなかった。
僕はドキドキしながら立ち上がると、廊下に向かった。
廊下に出て、隣室のドアの小穴から覗いてみた。
――瞬間、息を飲んだ。
普通の部屋の光景がそこにあったからだ。
中央に小さなテーブルがあり、一人の男が座っている。
彼の前のテーブル上には、一個の卵が置いてある。
――彼の朝食なのか?――
不意に卵にヒビが入ると、そこから一匹のヒヨコが出てきた。
ヒヨコはテーブルから下りて窓の前にいくと、人が乗れる位の大きな鳥になった。
その男は立つとその鳥にまたがった。
すると鳥は羽ばたき、あっと言う間に窓から飛びだした。
僕は室内に駆け込むと、窓の前に立った。
その男を乗せた鳥は、どんどん上昇し、雲の彼方へと見えなくなった。
僕は、呆然としたまま廊下に出て、ドアを閉めた。
その時、ふと気付いた。
表札があったのだ。
が、何故か四文字の氏名の内の下三文字が伏字のように消えていた。
僕は、その部分に手を当てて、かすかな盛り上がりから判読した。
――その瞬間、
「僕と同じ名前だ。えっ、あいつは――僕?」
僕はまたドアを開けた。
その瞬間、僕の視界が大きく変化し、大空の光景となった。
僕は、大きな鳥に乗って飛んでいるのだった。
次の瞬間、突風が吹いて僕は落ちていった。
「ウワ――!!」

(最初に戻ります)


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