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蒼樹里緒さん

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バベルの塔再建阻止

18/08/20 コンテスト(テーマ):第160回 時空モノガタリ文学賞 【 伏字 】 コメント:0件 蒼樹里緒 閲覧数:324

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 昔々、同じ言語、同じ言葉を使っていた人間たちは、神様に挑戦しようと、天まで届く高い塔を建て始めました。
 ところが、その様子を見た神様は、人間たちの言語をバラバラにし、彼らの言葉の意味が互いにわからなくなるようにしてしまいました。
 人間たちは仕方なく、別々の国、別々の文化を作って暮らすようになりました。
 それから何千年もの月日が経ちましたが、言語や言葉が変わっても、何度となく争っても、人間たちは互いにわかり合おうと努力していました。
「うむ。これならば、我々に挑もうなどという愚かなことも考えぬであろう。人の子らは人の子らの世界で生きるべきなのだ」
 神様は安心しました。
 ところが、さらに何百年も経った頃、人間たちは地球からほかの星へ移り住む計画を始めました。
 ――宇宙開拓を進め、新天地で未知の知識や技術を得れば、人類はさらに進化し、我々は『神』にでもなれるかもしれない。
 そんなふうに企む人間も現れてしまったのです。
「むむっ、これはいかん」
 神様は、このこともさすがに見逃せませんでした。
 あの高い塔が建ち始めた時は、人間たちの言語をバラバラにするだけで済みました。けれども、この時代の人間たちには、その罰を与えても意味がありません。
 そこで神様は、人間たちが記したすべての文字を、黒塗りの伏字に変えてしまいました。
 日記、ノート、メモ帳、紙の本、値札、戸籍書類、巻物、電子書籍、遺跡の象形文字、コンピュータのテキストデータ。ありとあらゆる文字が突然読めなくなり、人間たちは大混乱しました。
 声で会話はできても、書いた文字がことごとく伏字に変わってしまう現象は、止めるすべがありません。
 人間たちは仕方なく、それぞれの言語の話し声を機械に録音したり、情報を伝える絵を描いたり写真を撮ったりすることで、日々の出来事などを記録し始めました。
 けれども神様は、それらの道具もすべて使えないようにしてしまいました。
 そしてある日、人間の世界へ下り、彼らに言いました。

「人の子らよ。これは、ぬしらへの罰である。ぬしらは愚かにも、また我々に挑もうとしているな。ぬしらがいかに進歩しようとも、神になれるなどと決して思い上がらぬことだ。なおも業を深めるのであれば、ぬしらの声も奪うことになるぞ。悔い改めよ」

 神様の厳しい言葉を聴き、人間の代表者たちは、あわてて話し合いを始めました。
 ――宇宙開発移住計画を進める過程においても、我々は決して神には逆らいません。人間としての知識や技術を大切に生きていきます。
 その言葉を聴き、神様は深くうなずきました。
「うむ、わかればよい。ぬしらの力や知恵の行く先を、我々もしかと見届けるぞ」
 そして、黒塗りの伏字を、一日ずつ、少しずつ消していきました。様々な道具も、また使えるようにしました。人間たちの反省や努力を確かめるごとに。

 そんなある日のこと。
 図書館で書庫の整理をしていた司書が、ふと本を開いて気づきました。
「字が元に戻ってきてる!」
 それからも、人間たちはそれぞれの言語や言葉に向き合って学び、文字もいっそう大切にするようになったということです。


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