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結木公子さん

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生き物係の高橋くん

18/08/13 コンテスト(テーマ):第159回 時空モノガタリ文学賞 【 片想い 】 コメント:0件 結木公子 閲覧数:224

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 私には好きな人がいる。6年2組の高橋くんだ。
 部活はサッカー。生き物係。高橋くんはクラスのムードメーカーで、いつも誰かに囲まれている。足もクラスで一番速い。頭もいい、ってわけではないけど悪いというわけでもない。算数が得意で国語がちょっと苦手。でも頭の回転は速くって、みんなを笑わせるのがとてもうまい。おまけに顔もいいもんだから、月に一度は女の子たちからお呼び出しもされている。
 高橋くんのいいところは他にもいっぱいあるけれど、私が一番好きなのは、生き物にとってもやさしいところ。生き物係の高橋くんは教室で飼ってる虫や魚を丁寧に丁寧にお世話する。たぶん、生き物が好きなんだ。今朝もクワガタの飼育ケースに「元気かー」って話しかけてた。ニカって笑うと覗く犬歯もかわいくってドキッとする。虫だけじゃなくて私にも話しかけてくれないかなって思ってたら、ほんとにこっちに来て「おはよー」って。私はもう有頂天。まあ、うまく返事はできなかったけど。
 今日も今日とて高橋くんはみんなに囲まれて笑っている。私もそっちに行きたいけれど、そんなことしたらきっと息が止まっちゃう。ほんと、あーやって騒げる人達がうらやましいし妬ましい。でも、前ほどそれが嫌だなって思うことはなくなったんだ。だってね、もしかすると高橋くん、私を好きかもしれないから!前におませな女子たちが騒がしく雑誌を見てたんだけど、そこには『あなたを好きな男子の特徴!!』ってコーナーがあったの。たまたま見えたその雑誌には、『@いじわるしてくる、A心配してくれる、B容姿を誉めてくる』って文字があった。びっくり。全部当てはまる。高橋くん、たまにだけど私にいじわるしてくるの。手を差し出すから何かと思って近づくと、虫が出てきてびっくりしたり。それに先週のごはんの時間、「食欲ねーの?大丈夫か?」って不安そうに心配してくれた。あなたを想うと胸が詰まって食べられないんです、とはとても言い返せなかったけど。「赤いひらひら、きれいだな」ってスカートを誉められたこともある。やっぱり私、気にかけられてる?
 あんな雑誌を信じるわけじゃないけれど、勇気を出して告白しようって思ったの。うまくしゃべる自信はない。でも何とかこの気持ちを伝えたい。彼は放課後、残って教室の生き物たちのお世話をしてる。その日私はそばにいって、懸命に口を動かしたの。けど、出てくるのは空気ばかり。高橋くんはそんな私を不思議そうな顔でじっと見ている。穴が開くほど見つめられ、私は全身が真っ赤っか。
 「高橋くん」
 このタイミングで、クラスで一番かわいい須藤さんが前の扉から入ってきた。こっちを見ていた高橋くんは須藤さんのほうへと顔を向ける。高橋くんは横顔ももちろん素敵だけれど、私は正面が見たいのに。
 「私、高橋くんが好き」
うそでしょ?!ここで?私もいるのに!なんだか酸素がなくなったような気分で口をパクパクさせる私。高橋くんを見ると、なんだかまんざらでもなさそう。好きな子は私じゃなかったの?!どうしたらいい?この状況で、どうやったら私を見てもらえる?その時私は、あの雑誌の続きを思い出したの。そう。私たちにはまだ早いと思っていたけど、『キス』したら、彼は私を見てくれるんじゃない?だって、『キスは特別なもの』だって、雑誌に書いてあったもの。でも私にそんなことできるかな。ちょっと、いやかなり恥ずかしい。
 目の前の高橋くんは、顔を赤らめ須藤さんに向きなおろうとしている。だめ、もう時間がない。私は決死の覚悟で高橋くんに飛び掛かる。
 「わっ」
見事、私の唇は彼の唇にぶちゅっと触れた。
 「どうしたの?」
 「あ、金魚のハナコが水槽から飛び出したみたい!」
 「たいへん、早く戻さなきゃ!」


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