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郷田三郎さん

どうも、郷田三郎です。 (本名ではありませんが。。。) 細々と活動しています。 とりあえずちょっと外した話しを書きたいと考えています。 今のところ仕事が忙しいので、時々には投稿したいと考えています。

性別 男性
将来の夢 楽して暮らしたい
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素晴らしきケイタイ異時代

13/01/13 コンテスト(テーマ):【 携帯電話 】 コメント:2件 郷田三郎 閲覧数:1883

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 平日の昼時、私は空席の目立つ明るい電車を降り、駅の階段をゆっくりと上って行った。
 改札が近づく。私は胸ポケットからケイタイを取り出しゲートに翳した。
 無論ポケットに入れたままでもゲートは反応して開くはずだが、学生時代から二十年近く定期券を愛用してきた私としては、こうして何かアクションを取らないと落ち着かないのである。
 周りでは私の行動に違和感を憶えたのか、幾人かの乗客が一瞬だけ私の手元を注視し、また何事も無かった様に動き出した。
 ケイタイによる運賃支払いが普及した頃は私の様にいちいち取り出して翳す姿が見られたが、今ではすっかり少数派になってしまった。
 同期入社のヤツなんかと一緒に外出なぞしようものなら「お前みっともないからヤメロよ」などと言われてしまうのだ。そんな事を思い出し、苦笑いしかけたのを何とか噛み殺しながら私は駅を出た。
 昼時のビル街には怠惰な空気が流れていて、道行く人々は皆ゆっくり歩いている様に見える。
 それぞれが周りの事など気にも留めずにケイタイの画面を覗き込んでいる。
 ケイタイのナビを見ながら歩いていると、いつの間にか昼間でも薄暗い低層ビル群の一角に出てしまった。
 この古いオフィス街は開発の波に押し流されずに残ったかつての優良企業の集まる地区だ。
 そして今はその古い体質故にビジネスの波に乗り切れず沈んでいった企業の街でもある。
 私は少しの緊張を覚えながら尚もケイタイのナビに従って歩く。
 ようやく自動車がすれ違えるくらい幅のある道に出た。
 すると何処からともなく幾人もの人影が姿を見せてきた。
 それぞれの手には物騒なモノも見える。
 どうやら私は嵌められたらしい。
 美味しい商売のハナシに私に行って来いと命じた能天気な部長の顔がちらつく。
 全く物騒な世の中になったものだ。
 随分前から言われていたが、この国の製造業はアジア諸国の攻勢に潰され大量の失業者を作り出した。
 そして独創性や想像力を生かした産業は期待された程には発展しなかったのである。
 もともとこの国の人々は組織が一丸となって与えられた目標に向う、といった事の方が得意だったのだ。
 そうした社会では独創性や想像力は邪魔なものでしかない……。
 貧困が凶悪な犯罪を生み出す。
 裕福な悪党は決して無茶はしないのだ。
 ヤツらはジリジリと間合いを詰めてきた。
 私の所持金が狙いなのかそれとも誘拐でもしようと考えているのだろうか?
 何れにしても目的の済んだ後では私の命など無用のものと考えているのだろう。
「おーい、ゆっくりこっちへ歩いてきな!」
 やつらの一人が声をかける。
「あのぉ〜、商談の件というのはアナタ方ですよねぇ?」
 私はケイタイのナビゲーションモードをLIVEにした。
 これで近くの監視衛星が私の行動を追いかけ始めるのだ。
「何かの間違いでしたらワタクシ失礼したいんですケド……」
 続いてアームスウィッチをセミAUTOに切り替えると私は元来た路地に飛び込んだ。
 奴等が前方にいる人数だけだと判断したからだ。
 威嚇しながらのっそりと迫ってくるのはシロウトだ、せいぜいセミプロレベルでしかない。
 私は奴等が路地の入り口に殺到するのを見計らって横に跳んで転がった。
 大きな銃声が2発、狭い路地に響く。
 私は伏臥状態のままで構えるとケイタイの引鉄を三度引いた。
 タタタンッ! タタタンッ! タタタンッ!!
 三発づつ三回、合計九発の弾丸が五人程の悪党を戦闘不能状態にした。
 二十人程居た奴等の半分程度が散り散りに逃げ出した。やはりプロではないらしい。
 それでも数人が銃を乱射しながら私に迫ろうとしてきた。
 私の頭上で弾丸が空気を切り裂く音がした。
 私は尻ポケットから予備の弾倉取り出し今度はアームをAUTOにして掃射した。
 この場合は相手の命の保証は必要ない。監視衛星のメモリーにはケイタイからの射撃記録と共に防衛の正当性が画像として記録されているはずだ。
 私は念のため打ち尽したケイタイの弾倉を交換しながら走ってその場を後にした。
 気がつくと左腕が少しだけ相手の銃弾に削られている。
 流血はいつの間にか指先にまで達していた。
 まったく素晴らしい時代になったものだ。
 増え続ける凶悪犯罪に国会では記録システムを装備した武器の携帯が承認されたのだ。
 そして私のようなサラリーマンや普通の主婦、はては小学生に至るまでケイタイを持つようになってしまったのである。
 私は安全な場所までたどり着くとケイタイを取り出し銃把を開く。
 先ず会社に事の次第を報告した後、警察にダイヤルをした。
 どうせ全ての物的証拠が消え去った頃に現場検証が行われるのだろう。
 私は伸び悩む契約件数グラフを思い遣りながら駅への道を戻って行った……。


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このストーリーに関するコメント

13/01/14 泡沫恋歌

郷田三郎さん、拝読しました。

なんだか、物騒な時代ですね。
携帯にそんな機能がついたら・・・もう怖くて町を歩けません。

13/01/15 草愛やし美

郷田三郎さん、拝読しました。

まるで、007のような世界ですね。携帯で撃ち合う、でも治安が悪くなりみんなが武器を必要とする時代がやってきた時、携帯にそういう機能が加えられる可能性はあると思います。

将来、信憑性があると思えるので私はとても怖いと感じました。

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