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石蕗亮さん

占師。および魔術師。 WEB幽にて怪談投稿してました。 弟子育成の経験や実体験を基にした不思議な話を中心に書いていきたいです。 沢山の方に読んで頂き、反論含めコメント頂けると幸いです。

性別 男性
将来の夢 作家、起業
座右の銘 人は言葉に置き換えれるものしか理解できない。置き換えた言葉でしか理解できない。

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夢を渡った和尚

13/01/11 コンテスト(テーマ):第二十二回 時空モノガタリ文学賞【 お寺 】 コメント:7件 石蕗亮 閲覧数:2846

時空モノガタリからの選評

最終選考

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 これは秋田にある昔昔の伝説。
現在の湯沢市に清涼寺という曹洞宗のお寺がある。
このお寺の11代目の和尚は大層な名僧として名が残っている。
名を龍国寿金(りゅうこくじゅきん)といったこの僧が有名になったのは、神通力のためであった。
よく農民から雨乞いを頼まれた和尚は、その都度必ず大雨を降らせたという。
この和尚の神通力は雨乞いに留まらず、その伝説は宗派を越え宮城県松島にある臨済宗の瑞厳寺にまで伝承が残っている。
その伝説とは次のような話であった。

 ある夜、皆が寝静まっていると和尚が大慌てで修行僧全員を叩き起こした。
「起きろ!皆急いで起きるんじゃ!」
怒声に近い口調で起こして回る和尚にある修行僧が声をかけた。
「和尚様、一体全体どうしたというのです。まだ外も暗く、朝まではまだ何時もあるのではないですか?」
眠い眼をこすりながら問いかける修行僧に和尚は更に声を大きく上げて叫んだ。
「今、唐土(中国)の金山寺が火事で焼けておる!みんなで消火するのじゃ!ええい、起きろ!起きんか!」
和尚はついに全員を叩き起こすとそのまま外へ向かった。
修行僧たちは仕方がないな、と和尚について外へ向かった。
訳の分からない修行僧たちは何事かと和尚の言動に注視していたが、和尚は修行僧たちの視線をよそに庫裏の庭に出て、池の水を汲んでそこいら中にかけ始めた。
修行僧たちは「ついに気がふれてしまったか」と和尚を痛い人を見る眼で眺めていると、「何をしておるか!お前たちも早く水をかけて火を消さんか!」と和尚に激怒された。
仕方がなしに修行僧たちは見えない火に向かって和尚と一緒に一晩中池の水を庭中にかけて回った。
やがてひとしきり水をかけると、和尚は肩で息を切らしその場に座り込んだ。
修行僧たちもやっと落ち着いたかとその場に座り込んだが、和尚は他の修行僧たちには気にも留めず寝所に戻っていった。
修行僧たちは大層心配し、その後の和尚の言動に注意を払ったがその晩以降はいつもの和尚であった。
やがてそんな珍事があったことを寺の皆が忘れて3年も過ぎたころ、唐土の金山寺から和尚宛に多くの贈り物が届いた。
開けてみると、蜀江の錦の幕や猩猩の毛で作られた払子などの見事なものばかりであった。
そして火災を救ってくれたことへのお礼が添えられていた。
これを見た修行僧たちは和尚の神通力に驚き、その話は瞬く間に人々に伝わり多くの人から尊敬を集めた。

 この龍国寿金の直筆の書や自作の木像は今でも残っており彼の足跡を現在に伝えている。


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このストーリーに関するコメント

13/01/11 石蕗亮

今回のお話は夢師シリーズの某和尚のモチーフになった伝説です。
テーマや機会が合えばこれからも設定話やモチーフの話も書いていきたいと思います。
より深い作品の世界へ、読んで頂ける皆様を案内できればと思いますのでよろしくお願い致します。

13/01/12 草愛やし美

石蕗亮さん、拝読しました。

実際にこのようなお方がおられた伝説が残っているのですね。
私が思いますには、昔のほうが、このように未知の力などが存在していたのではないでしょうか。科学の発達によって、これはこうだああだと、解析してしまうことになり、現代では、そういう方がパワーを発揮できないままになってしまっているのではないかと思います。
伝説が史実で、それを信じる人々が奇跡を呼び起こすのかもしれませんね。

今年も石蕗さんの夢師シリーズを楽しみにしています。

13/01/14 泡沫恋歌

石蕗亮さん、拝読しました。

そんな神通力のある和尚さんが居たんですね。
信じがたい話だけど石蕗亮さんが文章にしたら、妙に説得力があります。

これからも、こういう不思議なお話を楽しみにしています。

13/01/16 鮎風 遊

昔昔から始まる物語。
以前から一度書きたいと思ってますが、なかなかです。

今回、読ませてもらい、なるほどと感心しました。
重厚で神秘で、昔昔のいい話しでした。

13/01/17 石蕗亮

草藍さん
いつもありがとうございます。
秋田にはいくつかのこういった伝説が残っています。
また部落制度が根強かった為、一族ごとの伝説など、一般に知られていない伝説も多くあります。
私の血筋にも、母方、父方両方にそんな話があります。
その中には今尚残っている思想や現象もあります。
今年も私自身と作品共々よろしくお願い致します。

13/01/17 石蕗亮

泡沫恋歌さん
いつもありがとうございます。
今回の話は史実としても残っていますが、和尚と修行僧の会話は私なりにアレンジしています。
地元の昔話をアレンジしつつも現代にもう一度蘇らせ残していきたいとも考えています。
いつか日本中の昔話を調べて交えてみたいですね。

13/01/17 石蕗亮

鮎風 遊さん
コメントありがとうございます。
神話と伝説、昔話がそこいら中にある地元秋田をうまく活かしていきたいと思います。
年配の人が懐かしく、若い人が新しく、面白く読める作品を目指したいです。

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