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小高まあなさん

鳥と怪異と特撮ヒーローが好き。 ひねくれつつも清々しい物語がモットー。

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翠川蘭子ファンブログ

18/07/23 コンテスト(テーマ):第158回 時空モノガタリ文学賞 【 あとがき 】 コメント:0件 小高まあな 閲覧数:613

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 翠川蘭子は、あとがきが長いことで有名な作家だった。
 文庫本で平気で五ページぐらいはあとがきだったりする。しかも、内容が本編とは関係ない、本人の近状報告なのだ。そして、それがやたらに面白い。作品は幻想的なファンタジーなのだが、そこからは連想できない笑えるあとがきだった。
 ブログでもやれ、と言った声もあったが、あとがきを楽しみにしているファンも一定数いて、翠川蘭子のあとがきは継続されていた。本編は読んだことがないが、あとがきだけ読むという「アトラー」も数多くいた。
 あとがきは紙の本にしかついていなかったので、電子書籍ではなく紙の本がばかすか売れることで有名だった。
 そう、翠川蘭子の本は売れていた。
 翠川蘭子は速筆で、三ヶ月に一作が出版された。そのどれもが面白くて、人気だった。
 なのに、ある日翠川蘭子は死んだ。
 自宅のマンションから飛び降りた。
 ただ一言、「最初の言葉」と書かれたメモが意味ありげに机の上に残されていたという。だが、それが遺書なのか、何かのメッセージなのか、ただのメモなのか、誰にもわからなかった。
 皮肉にも翠川蘭子の最後の本は売れた。これまでで一番、売れたのだ。

 さて、「最初の言葉」とは何なのか。
 それを探るために、翠川蘭子の本を眺めていた私はあることに気づいた。
 あとがきの最初の文字を刊行順番につなげると、ある言葉になるのだ。
「世の中で一番無駄なものは何でしょうか」
「界面活性剤とは何なのか、実は未だにわかりません」
「のんびりと過ごすのも疲れるものです」
「終了式だったのでしょうか、大荷物を持った小学生が家の前を通っていきました」
「わりばしを割るのを失敗しました」
「リンスとコンディショナーって、何が違うんですかね」
「をを頑なに、おと表記する知り合いがいました」
「警察の職務質問に初めてあいました」
「告解というものに憧れて、意味もなく教会にいきました」
「すずらんの花は妖精のコップだそうです」
「るという音は、しりとりで厄介です」
「私法と公法について、この作品を書くにあたって調べました」
「ガンジーは断食をしたそうです」
「死んだ蝉がベランダで大暴れしました。そう、生きていたのです」
「ンガルンガバンガという言葉を知っていますか? 私が夢の中で聞いた言葉で、意味は子育てだそうです」
「だんご虫って、何歳のときから触れなくなるんですかね?」
「五等分にケーキをするのが苦手です」
「年貢の納め時かと思います」
「後藤さんという知り合いがいるのですが、彼が最近骨折しました」
「にわとりの鳴き声が最近するので何かと思ったら、近所の人が飼いはじめたらしいです。この住宅街で」
「この前話したにわとり達のたまごをもらいました。たまごかけご飯にしようと思います」
「ノストラダムスの大予言って、本当に外れたんですかね?」
「世界地図を壁にはりました。行ったところに印をつけようと思ったのです。なお、まだ日本だけです」
「はりきってパソコンを立ち上げたら、更新プログラムを大量にインストールしはじめました」
「終末の予定を友人から聞かれました。週末では?」
「わなげって、そういえばしたことがありません」
「ルーペ、ルート、ルクセンブルク……。しりとりで使える“る”の言葉、たくさん教えてくれてありがとう」
 これらをつなげると「世界の終わりを警告する 私が死んだ五年後にこの世は終わる」になるのだ。
 もちろん、偶然の可能性もある。だが、覚えておきたいとは思う。
 これが本当か否かはさておいて、狙ってやったとしたのならば、翠川蘭子のあとがきは最高傑作と言わざるを得ない。私はそう思うのだ。


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