1. トップページ
  2. 妖怪カタオモイ

戸松有葉さん

ショートショート:小説投稿サイト「小説家になろう」で1001作以上、本サイト「時空モノガタリ」で入賞複数。 他、長編ライトノベルやエッセイなども。コメディ得意。 Amazon Kindle(電子書籍)http://amzn.to/1Xau7kMで活動中。(←URLは、Kindleストアを著者名「戸松有葉」で検索した結果。)代表作は『ショートショート集厳選集』とラノベの『二次元最高美少女』。 ツイッターは@tomatuariha3lb

性別
将来の夢 積極的安楽死法案
座右の銘 常識を疑え

投稿済みの作品

0

妖怪カタオモイ

18/07/23 コンテスト(テーマ):第159回 時空モノガタリ文学賞 【 片想い 】 コメント:0件 戸松有葉 閲覧数:86

この作品を評価する

 右肩が重い。
 肩こりの経験がなかったその若い女性は、当初肩こりを疑ったのだが、どうにも症状が違う。そして日々症状は酷くなり、辛さに耐えられなくなっていった。
 困ったことに、病院をはしごしても原因が掴めない。外科的内科的に異常はないというのだ。心療内科にも頼ってみた。身体は何ともないのに感じるということはあるからだ。しかしこれも空振り。本格的に謎で、そのことが更に彼女を苦しめた。
 そんな時に知ったのが、ある霊能力者の存在。普段なら霊など信じないし必然霊能力者も相手にしない彼女だったが、苦しい時の人間は話が変わってくる。藁にもすがる想いというやつで、その霊能力者の元を訪れた。
「これは霊の仕業じゃないよ」
 彼女より一回り年上の、自称霊能力者の女性は、話を聞いた後肩周りを凝視して、断言した。
「そんな、じゃあ専門外ということですか」
「待ちなさい。原因も解決法もわかる。霊だけを扱っているわけじゃないからね」
 霊能力者は次にこう続けた。
「貴女は現在、片想いの最中でしょう?」
「え、あ、はい!」
 的中だった。占い師のように、どうとでも取れる言い方でもなかった。これは信用できると彼女は踏む。
「この妖怪はカタオモイといって、片想い中の人間に憑く。憑かれるとどうなるかは、貴女が体験している通り」
「どうすれば離れてくれるのですか」
「簡単な方法としては、片想いをやめてしまえばいい。カタオモイは片想い中の人間にしか憑けないからね」
 原因は判明した。解決法もわかった。しかし現在の片想いを諦めろというのは、とても許容できない。彼女にとって人生で最も強い想いを抱いている相手なのだ。
 しかしながら、片想いをやめなければ妖怪カタオモイのせいで日常生活もままならなくなっていく……。
「あ、そうか」
 彼女は追い詰められる中で重大なことに気付く。
 片想いをやめる=恋を諦めると思い込んでいたが、それは簡単な方法の話でしかなく、要は片想いでなくなればいいのだ。つまり両想いとなり、片想いを卒業すれば、妖怪カタオモイも離れてくれる……。
 それからの彼女は、カタオモイに苦しみながらも、これまでとは比べものにならないほど恋の成就にまい進した。そしてついに付き合うこともできた。
 しかし、
「おかしい。どうしてまだ肩が重いの」
 右肩の重さは一向に解消されない。そればかりか、付き合い始めた頃から、左肩も重くなってきた。
 何か間違っていたのだろうか。彼女は考える。
 付き合ってはいるが、心の内面では片想いに過ぎないから、カタオモイが離れてくれない? たとえそうだとしても、左肩まで重くなるといった悪化の理由にはならないはずだが……。
 彼女は再び霊能力者の元を訪れようとした。
 しかし霊能力者は店じまいをしており、近隣の人々も行方を知らないという。
 症状は日々重くなるばかり。頼れる霊能力者ももういない。彼女は途方に暮れた。



 かつて自称霊能力者だった女性は安堵していた。
 確かに自身の片想いを捨てれば、つまり諦めれば、妖怪カタオモイもいなくなる。しかしそれはしたくない。
 ならば策は一つしかない。自身に憑いたカタオモイを誰かに押し付ければいいのだ。
 カタオモイは片想いの人間に憑く、そして片想いではなく両想いになった者には、更にもう一体カタオモイが憑かなければ理屈に合わない。
 だから同じ悩みを持つ人に助言をし続けてきた。大抵の相談者は症状の苦しさから、片想いを諦める選択をしていたため、時間がかかったが、これでようやく肩の荷も下りた。

(了)


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン