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R・ヒラサワさん

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片想い

18/07/23 コンテスト(テーマ):第159回 時空モノガタリ文学賞 【 片想い 】 コメント:0件 R・ヒラサワ 閲覧数:365

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 僕が通う高校で、同じクラスにいるミヅキは、教室の中でほぼ真ん中あたりに座っている。でも、その存在感で言うと、ずいぶん端っこの方にいるって感じの、ミヅキはそんなおとなしい女子だった。
 ちょっと地味で目立たない、何となく控えめな、そんなところがとてもいい。だから僕の中でミヅキは間違いなく、ど真ん中に居る存在だった。
 一方の僕はと言うと、存在感はミヅキとほぼ同じで、やっぱり端っこの方だと思う。あまり目立つ方でもないし、女子と話すのも苦手だから……。
 僕はミヅキと、もっと話したいと思うけど、授業やイベントで必要に迫られた時が精一杯。そんな時、ミヅキはよく笑ってくれる。多分そんな気がする。僕はこういう時、物事を言い方に考えるようにしている。もちろんミヅキについての事だけなんだけど。だって、片想いはきっと、そんな風に考えた方が楽しいに決まっているから。
 ミヅキの事は、同じクラスになってからすぐ気になり出して、それからずっとミヅキの事を考えて、もう半年以上経つけれど、僕とミヅキの間には何も起こっていない。多分それは、僕が何もしていないからだと思う。
 何もしなければ何も変わらない。そんな事は分かってるけど、僕がミヅキに告白して、もしダメだった時の事を考えると、やっぱりそれは出来なかった。僕はこう言う時には、物事を悪い方に考えてしまうようだ。
 ある日、僕とミヅキの間に大きな事件が起きた。なんと、バレンタインにミヅキが僕にチョコをくれたんだ。夢かと思った。
「ミヅキがあなたに用があるんだって」
声をかけてきたのは、きっとミヅキの親友。隣のクラスの女子で、いつもミヅキと一緒に居るから。だけど、僕はその女子の名前をよく知らない。向こうも多分、僕の名前を知らないから『ねえちょっと』って声をかけてきたんだと思う。
 ミヅキはうつむき加減で僕の前に立っていて、その親友は僕の事をじっと見ていて、その目は僕の事をあまり良く思ってない様に見えた。
『あの……。これ……」
 ミヅキがチョコを、そっと僕に手渡した時、話した言葉は、たったそれだけだった。そして僕も『あ、ありがとう』とだけ言って受け取った。
 正直、驚いたのと嬉しかったのと、照れ臭かったのがいっぺんにやって来て、他に何も言う事が出来なかっただけなんだ。
 その日の授業が終わって、部活も何もない僕は真っ直ぐ家に帰って、誰も居ない間にチョコの包みを大急ぎで開けた。中にはとっても大きなチョコと、名刺よりも小さいメッセージカードが入っていた。
 二つ折りのそれを開いてみると、左右に一文字ずつ『好』と『き』が書かれていた。ミヅキにしては大きめの字だと思った。
 僕が女子からチョコをもらったのは、これが初めてだった。しかも、それがずっと好きだったミヅキからだったものだから、この嬉しさをどう表現したらいいかわからない。多分、お正月とクリスマスと、誕生日がいっぺんに来たみたいな、とにかくそのぐらい嬉しい事だった。
 僕はその気持ちを伝えたくて、ひと月後のその日が待ち遠しくて仕方がなかった。今すぐにでも伝えたい。ミヅキに、僕だって好きなんだよって、その気持ちを。
 でもそれはホワイトデーの日にする事にした。ミヅキにだって心の準備があるだろうし、僕は何でも決まりをちゃんと守るほうだし。
 バレンタインから半月が過ぎた月曜日、再び事件が起きた。事件というより、それは事故だった。
 朝、担任の先生がいつもより早めに教室にやって来た。その顔色は随分悪そうに見えた。きっと良くない話だろうと僕は思ったけど、その予感は当たっていた。先生は声の震えを抑えるように、ゆっくりと話し出した。
 ミヅキが登校中、交通事故に遭って意識がない状態だと皆に伝えた。誰かがお見舞いに行きたいと言ったけど、今は家族の人しか会えないと答えた。
―翌日、ミヅキが天国に行った事を知った―
 僕は悲しかった。とても悲しかった。そして後悔した。ミヅキに自分の気持ちを伝えられなかった。ミヅキは僕に自分の気持ちを伝えてくれたのに……。
このままじゃ僕もミヅキも、ずっと片想いのままじゃないか……。
 通学路の途中には大きな家があって、そこには小さな梅の木がある。それは既に満開だった。
 僕は花の中では梅が一番好きだ。どこか控えめで可愛くて、それはきっとミヅキのようだから……。
 僕が居る世界と天国の間に、隔たりなんて無いんだ、きっと。少なくとも僕の心の中で、ミヅキとは『片想い』ではなく『両想い』に決まっているんだから。


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