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すんみこさん

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七不思議の後日談

18/07/17 コンテスト(テーマ):第158回 時空モノガタリ文学賞 【 あとがき 】 コメント:0件 すんみこ 閲覧数:198

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学校の七不思議の内容は、大抵どこの学校も似通っている。トイレの花子さん、理科室の人体模型、音楽室のベートーヴェン、増える階段、体育館裏の合わせ鏡、誰もいない放送室……などだ。そして最後の七番目は、存在しないことが多い。
だが、私が通っていた小学校には、七番目の七不思議が存在していた。
最後の七不思議が語られる場所は、プールだ。学校の大時計が四時四十四分を指し示す夕まぐれのころ、プールサイドに立つと何者かに足を掴まれ、プールの中へと引き摺りこまれる……というものだ。
これは私の通う小学校で、大昔、実際に起きた事件を元にしている。
生徒の母親と若い男性教員が口論になり、どちらかがどちらかを刺して、プールに沈めた……という陰惨なものだ。
しかし不思議なことに、殺されたのがどちらかという部分だけは誰も知らない。教師が保護者を殺したという者もいれば、保護者が教師を殺したという者もいる。

あれは私が小学二年生の、夏の日だった。給食が終わり昼の休憩時間がくると、隣のクラスのA子が教室に入ってきた。そして私を見つけると、意気揚々と近づいてきたのだった。

「ねえ、この学校の七不思議、知ってる?」

開口一発、彼女は問うた。

「いや、知らない」

私が答えると、彼女は何度も満足気に頷きながら、ゆっくりと私の耳へ唇を寄せた。
内緒話でもするかのような声音で彼女が語ったのは、上記の七不思議だった。

「四時四十四分なんて、ベタだね」

一通り聞き終わった私が興味無さそうに呟くと、彼女は一層私に顔を近づけてきた。

「でもさ、この七不思議には変なところがあって。保護者と教師、殺されたのがどっちなのか誰も知らないんだよ」
「へえ」
「でさ、この足を引っ張る幽霊ってのが、殺されたほうだと思うの」
「なるほど」
「どっちが殺されてプールの幽霊になってるのか……確かめてみない?」

あまり信じてはいなかったが、暇だった私はA子の提案に乗ることにした。A子はせっかくだしと、仲のいいB子、自称霊感少女のC子も誘った。

放課後、四人は教室に残ると、問題の時間になるまで学校の噂話に花を咲かせた。他愛もない話にうつつを抜かしていると、あっという間に時計の針は進んだ。

「そろそろかな」

少し緊張したようにA子が言うと、皆いっせいに時計へと目をやった。四時三十分……確かに、丁度いい頃合いだった。

「行こうか」

誰ともなく言うと、私たちは赤いランドセルに腕を通して、グランドの隅にあるプールへ向かった。
放課後なので、一応プールには鍵をかけられていたが、低い柵を超えるのは簡単だった。四人で代わる代わるランドセルをプール内に放りこむと、できるだけ静かに柵によじ登った。

全員が無事にプールサイドに立ったのは、問題の時刻まで残り二分、という頃合いだった。

「嫌な予感がする」

真っ先に口を開いたのは自称霊感少女のC子だった。

「生徒のお母さんみたい。女の人がプールの中から、こっちを睨んでる……」
「え、じゃあ、殺されたのは親のほうなの?」

B子がすかさず聞いた。

「うん、そうみたい」

神妙な面持ちで答えるC子に、突如A子が突っかかった。

「適当なこと言わないでよ!まだ時間じゃないし!だいたいさ、前から思ってたけどC子って嘘くさいよね」

私とB子はギョッとした。A子の発言もそうだが、それを聞いたC子が、顔を真っ赤にして、ぶるぶると肩を震わせていたからだ。

これは明らかにマズい……

B子と私が狼狽えていると、突如、C子がA子をプールの中に突き落としたのだ。突き落とされたA子は激しい水しぶきをあげながら、大きな目を限界まで見開いて、苦しそうにもがいている。あまりの出来事に、私は声をあげた。運が良かったのか、近くで遊んでいた上級生がすぐにかけつけてくれ、A子をプールから引き上げてくれた。ずぶ濡れになった上級生の肩越しに見えた大時計の針は、丁度、四時四十五分に差しかかったところだった。

すぐにA子は保健室へと運ばれた。私とB子はA子に付き添って保健室へ向かったが、C子だけは校長室に連れていかれてしまった。

「変な話なんだけど」

体操着に着替え、保健室のベッドに寝かされたA子は不思議そうに語った。

「あたし、C子に落とされたんじゃないと思うんだよね……だって、プールに落ちた瞬間、誰かに足を引っ張られる感覚があったもん」

「私、それ、見たよ」

B子がポツリと呟いた。

「え、幽霊みたの!?」

A子が目を輝かせると、B子は力なく頷いた。

「で、どっちだった!?親?教師!?」

期待に声を弾ませるA子に曖昧な笑みを浮かべながら、感情のこもらない声で、B子は答えた。


「あれは、人じゃなかった」


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