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ひーろさん

ミステリーが好きです。

性別 男性
将来の夢
座右の銘 人に勝つより自分に負けるな。

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生まれ変わり

18/07/15 コンテスト(テーマ):第1回 時空モノガタリ短編文学賞 コメント:0件 ひーろ 閲覧数:336

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 自信はないほうがいい。そんなことを誰かが言っていた。曰く、真っすぐで揺るぎない自信を胸に突き立てている人ほど、何かの拍子に簡単に心が折れてしまうのだと。迷いながら悩みながらゆれている人の方が折れにくい。ちょうど、五重塔やスカイツリーの構造のように。
 この言葉は、すっかり生きる自信を失くしてしまった僕に、追い打ちをかけてきた。ちょうどこの頃、長年付き合っていた彼女に別れを告げられ、親友だと思っていた人に裏切られ、父親から勘当され、飲食店のアルバイトで大失敗をして……悪いことが重なる時期だった。これから生きていく自信などというものはすでに折れていた。僕はスカイツリーなんかになれない。無理をして生きている必要もないのだ。
 今僕は、絶望へと続く山道を、覚束ない足取りで歩いている。確かな意志をもって。


 道中、僕は石に躓いた。まともに歩くこともできない自分が、どうしようもなく惨めに思えてきて、情けない気持ちが胸に充満した。むくむくと死への渇望が膨れ上がった。躓いて体勢を崩した拍子に、僕の左胸から、意志がころりとこぼれ落ちた。僕の意志ははらりと砕けて、無数に転がる路傍の石の一つにひゅるりと憑依した。意志をもった石はふわりと浮かび上がった。ふわふわと空中を漂いながら、広がったり丸まったり様々にその形を変え、最終的には先の鋭く尖ったナイフのような形になった。そして、ごつんと鈍い音を立てて僕の足元に落ちた。僕はわけが分からぬまま、それを拾い上げ、柄の部分をぎゅっと掴んだ。気づくと、刃先は自分の胸に向いていた。不甲斐ない自分を責める気持ちが胸の多くを占拠した。死んでしまえばいいとつぶやいて、そのままそっと目を閉じた。直後、僕の意志は、硬く尖った石に宿ったまま、元あった場所へと真直ぐに戻った。僕の心臓を、意志が貫いた……。

 僕は死んだ。そして生まれ変わった。踵を返し、山道を下る。微塵の迷いもなく、しっかりとした足取りで歩いた。新たな希望への道だ。強固な意志は、僕の胸を奮い立たせている。


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