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マサフトさん

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『星の界』を聴いてのあとがき、もとい感想

18/07/13 コンテスト(テーマ):第158回 時空モノガタリ文学賞 【 あとがき 】 コメント:0件 マサフト 閲覧数:448

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人智は果てなし 無窮の遠に 其の星の界 きはめも行かん

昔の人、具体的に何時代だとか何処そこの国だとかは無しにして、とにかく昔の人の想像力とは如何なものなのだろう。

星を眺め、角度を計り、目星目印にして現在位置や方角、距離を割り出す。それは解る、手筈は知らないもののその行為、目的は理解できる。
だが星座はどうだろう。勿論、先に述べた手順の前段階として、目印となる星を発見し易くする為の方便とも取れるが、果たして只それだけの為だけに、星座に神話や由来などの意味付けをするだろうか。

オリオン座という星座が有る。星座にさして明るく無い私でも知る数少ない星座である。だが私から見ると砂時計にしか見えない。何故わかり易く砂時計座などとされなかったのだろうかと思い少し調べてみる。果たして砂時計に見える部分はどうやらオーリーオーンの胴体部のみで、その周りの幾つかの星を含めて棍棒を振りかざすオーリーオーンに見えるのだと言う。はっきり言ってまるでそうとは見えない。星と星を結ぶ線が描かれた絵写真を見て、辛うじて見えるか見えないかときたものだから、只星々だけ見たところで棍棒を持った巨人とは想像がつかない。和名を鼓星と言うらしいがそれは理解できる。ギリシヤ人と日本人の感性の違いだろうか。

この時点でこの星座がギリシヤ神話の形に見えておらず、ギリシヤの神話への理解を遠ざけてしまっている。ひいては古代ギリシヤ人の文化風俗の解読が困難となっている起因にも思える。

例として古代ギリシヤとしたが、文化文明の数だけ星座への理解、解釈が有ると仮定した場合、そのどれも一つとしてそれらの真髄は体感会得は不可能だととれる。何故なら古代メソポタミア人は古代メソポタミア人であるし、古代ギリシヤ人は古代ギリシヤ人であるし、現代日本人は現代日本人であるからである。所変われば品変わるとも言える。

星座が新たに更新される事は稀である。ある特定地域の文化文明がその影響範囲を広げた場合例えば西欧の大航海時代などにはその文化での解釈で星座が更新される事は有る。しかし現代に於いてその様な事は無意味に近く、独自解釈よりも世界的によく使われている既存の解釈を流用する事の方が手っ取り早いからである。その影で消えゆく独自の文化が有ることは責めむべからざるべきであるとはいえ、半ば無念の感も抱く。例えば日本でも明治時代の頃までは中華文明からの流用が有ったとはいえ独自の星への理解や天文学があった筈である。幸い私には日本どころか西洋の天文的知識すらあるわけでは無いからこれ悲しやとはほぼ思わないが、当時の日本の天文の職に就く知識人たちは我が身を削られる思いであったと窺われる。また、同じ様な現象は世界各地、あらゆる時代で起こっていた事である。当時の人々がそれを嘆くことはできても現代に生きる私にとっては想像だに不可能である。

ひとつの文化の肥大化、画一化。これはかなり大袈裟で酷く手前勝手な考えだが、現代、少なくとも日本はその一途にあると思える。具体的に何がどうこう、どの文化がとも言えぬが、渾然となった沼の底の様な、それでいて定規で測った様な価値観が蔓延している。世間、世界との繋がりは膨大な知見を与えてくれるが、逆説的にその世界を物凄い速さで狭めている。新たに文化を受け入れる代わりに元有ったものを物凄い速さで淘汰している。それこそ先述の星座の更新の如くである。

しかしそれは必然であり、独自のものを完全に留める事は不可能である。そもそもその独自のものと言われるものたちですら、いずれかから混合されたものである。我々は何か生み出している様でいて、些末な違いはあれど同じ事を繰り返している。果たしてそれが人間が営む文化の本質の様な気がしてならない。嘆かわしい訳でも憂いている訳でもなく、淡々とした事実に思える。

ただひとつ憂鬱を挙げるとしたら、近年文化の更新サイクルが加速されたせいか、余りにも同じ事を繰り返すあまり量ばかり増えて質が低下している気がしてならない。既に数世代前の話し言葉すら注釈がないと理解が出来ない。先程自分で淡々とした事実と述べたが、それが酷く嘆かわしく思える。そのサイクルの先に星を眺めて神話を想像する余裕はあるのだろうか。少なくとも『星の界』が作詞された時代では、著者のみならず多くの人にその余暇が有ったように思える。


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