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甘宮るいさん

 小説家を目指して、日々練習中。恋愛ものとミステリー系と哲学的な感じの話を書くのが好きです。リアルとの両立をがんばりたい。ツイッター@Rui0123amamiya/HP→https://tukikage0123.wixsite.com/amamiyarui

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息をやめた後の僕より。

18/07/05 コンテスト(テーマ):第158回 時空モノガタリ文学賞 【 あとがき 】 コメント:0件 甘宮るい 閲覧数:303

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「息子は一昨年の春に病に倒れ、それ以来入退院を繰り返していました。ですが6月20日の午後、家族の見守る中、静かに旅立ちました。享年18歳でございました。
息子は大変静かな子でしたが、部活にも勉強にも熱心でした。よく、家の手伝いもしてくれました。家族の誕生日には、決まって手紙とお花とプレゼントを贈っていました。サプライズをされたときには、驚いてもう嬉しくて……。本当にいい息子でした
息子に会えないかと思うと胸が詰まる思いですが、3年ほどの長かった闘病生活が終わり、息子はほっとしているころでしょう。最後になりましたが、生前賜りましたご厚情に、深く感謝申し上げてご挨拶とさせていただきます」

 今日は、久しぶりに大雨だったようだね。足元が悪いのに、みんなよく来てくれたよ。雨でよかった。僕のために泣いてくれたみんなの涙を雨の雫だって言い訳できる。悲しませてしまってごめんね、でも嬉しいよ。僕は恵まれていたみたいだ。
 お便りでも書けたらいいのにね。そしたら、僕に関わってくれたみんなに毎日お手紙を書くよ。下を向いているときには一緒に下を向くし、上を向いているときには一緒に上を向くよ。もちろん、下を向いたそのあとは一緒に上を見られるように、精選された素敵な言葉で励まそう。僕は国語が得意だったって覚えているだろ。
母さんも父さんも、僕がもう少し生きられたらって嘆いていたね。でも、僕はこれで案外満足している。だからそんな悲しい顔はしないで欲しいな。もちろん、次もきっと母さんと父さんの子供に生まれるよ。
 お兄ちゃんがいなくなったって、多分ゆいはわかっているだろうな。ごめんね、小学生なのに、寂しい思いをさせるよ。でも僕はいい妹を持った。母さんがお別れ日和がって話すから、てるてる坊主を作ってくれたみたいだね。おかげで、こんなにいい天気だよ。お兄ちゃんは雨も好きだよ、だからもうそんなにてるてる坊主を作らなくたって、お兄ちゃんは幸せだよ。
 僕の友達として、ここまで過ごしてくれたみんな、ありがとう。悲しい顔はしなくていいよ。勉強についていけなくなっていく僕に、教科書を届けてくれたこと、お見舞いに来て教えてくれたこと、嬉しかった。とても嬉しかったよ。確かに、もう使うことは無くてもみんなの気持ちが知識になって入っている。それを覚えている今の瞬間さえ、嬉しいよ。
優しい母さんと尊敬できる父さんの子供に生まれて、かわいい妹にも恵まれた。人並みの困難と人並みの経験もできた。こんな日に集まってくれる友達もいる。僕はとても、幸せでした。満足です、満足だと言わせてください。お疲れ様でした。本当にありがとうございました。

 ここからは、僕が僕に送るメモのようなものです。
 僕は、いい母といい父に恵まれたけど叔母や叔父には意地悪をされた。悲しかった、乗り越えた。僕は、いい妹に恵まれたけど、妹が小さいときには寂しい思いもした。正直、辛かった。でも兄としてそう言うわけには行かなかった。僕は、友達に恵まれた。でも、たくさん喧嘩もした、問題にも巻き込まれた、後輩に舐められて暴言を吐かれたこともあった。病気はしんどかった。突然に訪れた余命は、受け止められなかった。けれど、強がった。一生懸命強がった。それも今日で終わり。終った。
 お疲れ様でした。僕の血肉が煙となって天に昇ったその時に、僕の魂も多分きっとどこかへ行きます。お葬式にたくさん人が来てくれてよかった。未練が募って仕方ない。仕方ないけど、尚更にこの人たちのためにもお別れをする。
 僕はえらかった。僕は頑張った。よかった、いい生だった。
 そう思って僕は僕にさよならしたい。人を傷つけて人に傷つけられたけど、それでも自分を好きでいたい。最期だけでもいい。終りよければすべてよしって、テストの点見て言っていた様に。
 さっぱりとしたあの言葉は、それでもやっぱり伝わらなくても、最期まで強がったことを悪いことだと思わない。僕のことを、いつか知る人がいなくなっても、それを悪いことだと思わない。
 本当に、ありがとう。

「本日はお足元の悪く、お忙しい中、また遠方よりお越しの方もおられる中、お時間頂戴しまして、本当にありがとうございました。これにて、お開きとさせて頂きたく存じます。
息子がいなくなって寂しくはなりますが、遺された家族一同助けあっていきたいと思いますので、どうかこれからも変わらぬご支援のほどよろしくお願い申し上げます。本日は誠にありがとうございました」


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