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間 亮彰さん

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海中時計

18/06/26 コンテスト(テーマ):第157回 時空モノガタリ文学賞 【 コメディ 】 コメント:0件 間 亮彰 閲覧数:273

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ずいぶんと昔のことになりますけどもぉ。
ぶらり、ぶらりと砂浜の上を何の気なしに歩いてたんでございますよ。
そいでね。潮だまりってあるじゃないですか。そこんとこをね。ちょいとのぞいてみたんですよ。いやぁ、なんかいるかなぁ、なんてね。
で、そんなぼうっとしてるからなんでしょうなぁ。
するり。
ぽちゃん。
ぶくぶくぶくぶくぶくぶくぷくぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶく。
落ちちまったんですよ。えぇ。えぇ。落ちちまって。
え。何をかって。
そりゃあ。あたしが大事に使ってた懐中時計ですよぉ。金ぴかの綺麗なやつでして。売れば、まぁそこそこ酒の足しにはなるんじゃねぇかってしろもんですよ。
だもんだから。いややっ、こいつはいけねぇ、なんて急いで潮だまりに手を伸ばしたんですけれども。
そうしたら。
あいつらがいたんですよ。
あいつらが。
あのぉ。ご存知ですかねぇ。海の中の時計って書いて。
海中時計。
そういう名前の貝がいるんですよ。どうやら瀬戸内のほうに多くいるみたいで、生で食べるのが通らしいんですけれども。あたしはポン酢なんかで。ずずっとね。ほら、日本酒に合うんだ、これがまた。
うん。まぁ、それはいいや。ただまぁ、こいつが厄介で厄介で。
てのもね。あたしが落としたのが懐中時計。そんでもって、この潮だまりにたっくさんいるのが海中時計。一文字違いでしかも読み方まで同じで紛らわしいのはそうなんだけどもさ。
この海中時計ってへんてこな貝が。
懐中時計とそっくりなもんで。
文字盤はある。短針はあるし長針はあるし秒針だってある。ねじを巻くところの穴もあれば、かっちかっちと音まで聞こえてきやがる。
見分けがつかないんだこれが。だもんだから自分の落とした懐中時計がどれなんだか分かんなくなっちゃって、いやぁ。これが本当の話で。
どうにかして本物の、あたしの懐中時計を引き上げてやりたい。やれ急げ、そら急げってんでちゃっちゃとスマートホンっていうやつを取り出してだ。そいつで海中時計の生態を、たたっ。と調べましてですねぇ。
なるほど。海中時計っつうのはこういう生き物なのかっての覚えましたんで。
じゃあ。皆さんにね、一個ずつ教えていきますからね。はい。ついてきて頂戴。
一つ目。
海中時計は自分の力では動けない。
こいつは、いいじゃないですか。手を近づけても逃げたりしないんだから捕まえるにはもってこいだ。
二つ目。
海中時計は時を刻んでおり、時間を知ることができる。
まぁ、海で見かけたらそりゃあ、わざわざ時計を取り出す必要がねぇんだありがたいですよ。ありがたいですけれどもねぇ、このせいで懐中時計と見分けがつかねぇんだからねぇ。
三つ目。
加齢とともに時間が狂ったり、体内から分泌されている酸化防止成分が少なくなり錆び付く場合がある。
まぁまぁ。海中時計も貝で、生きてる訳ですからそりゃあそうでしょうよ。人間だってがたがきちまって、懐中時計をぼちゃんと落としちまうんだからこりゃあ納得だぁ。うんうん。
 そんでもって最後の四つ目。
 海中時計は主な生息地が海というだけであり、外に出たところで死ぬことはない。
そこまで読んでねぇ。あたし思ったんですよ。
じゃあ。どれ持って帰ってもいいじゃねぇか。


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