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みやさん

写真と物語の融合、写真物語家を夢見ています。 マイペースで更新中。Twitter➪@miya_ayim

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18/06/25 コンテスト(テーマ):第157回 時空モノガタリ文学賞 【 コメディ 】 コメント:0件 みや 閲覧数:196

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「あんたの妹、また面白い事言うてみたいやで」
「そうなんや」
「体操服隠されたのに、これで体育の授業受けんでいいわ、やったーって喜んでたらしい。私の弟が言うてたわ」

小学校の帰り道に友達が面白そうに私にそう教えてくれた。
小学四年生の私の妹は自分がイジメられている事に気が付いてないのか、いつもそんな調子でニコニコしている。イヤな事をされても、傷付く事を言われても。それは学校だけではなく、家でも。イヤな事があっても悲しい事があっても、面白がってニコニコしている。そんな妹には知的障害があるんとちがうかと私は思ってるけど、お母さんはそんな事はないと否定する。

家に帰ると先に帰っていた妹が宿題をしていた。
「お姉ちゃんおかえり、ほんまは宿題したくないねんけど、総理大臣になるために頑張ってるねん」
私が覗きこむと、算数の宿題の答えのほとんどが間違っていた。
「間違いだらけやん」
「間違っててもやる事に意味があるねん」
妹は相変わらずニコニコ笑っている。
「洗濯物取り込むの手伝って」
「はーい」

我が家は母子家庭で、仕事で忙しいお母さんの代わりに家事を小学六年生の私と小学四年生の妹で手伝っている。お父さんは二年前に女を作って家を出て行った。お父さんがおらんようになって寂しくないかと妹に聞いた事があったけど、女子だけの方が楽しいやんと妹はニコニコ笑っていた。家事のお手伝いもイヤじゃないかと聞いても、将来総理大臣になるために役に立つからとニコニコ笑っていた。私はそんな妹にいつもイライラする。家事が役に立つ訳ないやん。

洗濯物を畳みながら、体操服を隠されたのか聞いてみた。
「隠されたんじゃなくて、隠してくれててん。私が体育の授業受けんでいいように」
「そんな訳ないやろ。あんたイジメられてるねんやろ?」
妹は今流行っているお笑い芸人のギャグを真似してごまかした。
「私クラスの人気者やから」
そんな訳ないやろ。

お母さんが用意してくれていたオムライスを電子レンジで温め直して妹と食べていると、電話がかかってきた。

「もしもし」
「警察の者ですがお母さんが交通事故に遭われて今、市民病院に運ばれたんやけど、娘さんですか?今から来れますか?」
お巡りさんの話しを聞きながら私の心臓はバクバクして口から飛び出しそうになった。市民病院やったら家から自転車で十五分くらいで行ける。お巡りさんは保険証を持って、気を付けておいでと言ってくれた。
のんきにオムライスを食べている妹にお母さんが事故に遭った事を話すと、一瞬びっくりした顔をしていたけれど、お母さん救急車に乗ったんかな〜とニコニコ笑った。しょうもない事言いな、と私は妹を怒って保険証をカバンに入れた。

私の自転車に妹を乗せて市民病院に向かう途中で、お母さんが死んだらどうしよう…と私は不安で涙が出てきた。後ろに乗っている妹は、お姉ちゃんと二人乗りするのん、久しぶりやな〜楽しいな〜と喜んでいる。
「そんな事言うてる場合ちゃうやろ!お母さんが死んだらどないするのん!」
「大丈夫や。お母さんは死なへん。だってお母さんはトトロやから」
お母さんはかなり太っているから、妹はいつもお母さんの事をトトロみたいやと言っていた。そんな訳ないやろ、トトロかって死ぬ時は死ぬんや。

病院に到着して受付のお姉さんがお母さんの病室に案内してくれた。
「お母さん大丈夫なんですか?」
「大丈夫。お母さんが乗っていた自転車は車に轢かれてグシャグシャになったけど、お母さんは体格が良いから右脚骨折だけで助かったみたい」
「やっぱりトトロや!」
妹は楽しそうに声をあげて笑った。

病室に入るとお母さんは元気そうで、骨折した右脚を動かない様に固定されている姿がほんまにトトロみたいに見えた。
「ごめんな二人とも心配かけて…びっくりしたやろ」
「…うん、でも良かった。死ぬかと思った」
「お母さんはトトロやから、死なへん。な、お母さん」
「そうやな、でもしばらく入院せなあかんから、家の事とか二人でちゃんと出来る?」

私は妹と二人だけで家の事をちゃんと出来るか不安になって泣いてしまったのに、妹は大丈夫やで、と返事をした。
「家の事はいつもお姉ちゃんと手伝ってるからなんでもできるし、お姉ちゃんと二人やったら、楽しいやろうな〜遅くまでテレビ見てても怒られへんし、お菓子いっぱい食べても怒られへんし。だからお母さん心配せんでも大丈夫やで。お母さんもケガしたおかげでお仕事休めるから良かったな。お姉ちゃんも泣かんと、笑って?」
妹は悲劇を喜劇に変えられる天才やと私は思った。


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