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泡沫恋歌さん

泡沫恋歌(うたかた れんか)と申します。

性別 女性
将来の夢 いろいろ有りますが、声優ソムリエになりたいかも。
座右の銘 楽しんで創作をすること。

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逃げろ

18/06/25 コンテスト(テーマ):第157回 時空モノガタリ文学賞 【 コメディ 】 コメント:4件 泡沫恋歌 閲覧数:405

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 誰かが耳元で囁いた“逃げろ”と、おそらくその声は俺の中に潜む野性の勘ってやつだ。
 俺はその声に従い走りだす。
 やはり俺の勘は当たっていた、校舎から飛びだした俺の姿を、三階の教室の窓からアイツが見ていた。
 ヤバイ! 早く逃げないと捕まってしまう。
 昔から逃げ足が早いといわれた、この俺よりもアイツの方が駿足なのだ。
 とにかく学校から逃げだし、駅まで逃げ延びて電車に乗ったら俺の勝ち、今日こそアイツに捕まらず、無事に帰宅したい。
 だってぇ〜俺は帰宅部なんだぜぇ!
 そんなことを考えていたら、背後から足音が聴こえてきた。しかも全力疾走の音だ! 俺は追跡者から逃れるため、さらに必死で走った。
 学校の通用門を抜けて、四角を曲って細い路地に入ったら、ゴミ箱の裏に身を潜める。このままアイツが通り過ぎてくれることを、神さまに祈りながら……アーメン。

「ナオト見っけ!」

 あっけなく見つかってしまった。アイツが得意そうに笑ってやがる。
 一ノ瀬香奈、十六歳。高校の同級生にして、ご近所で幼馴染み。俺はこの世に生まれてから十六年間、ずーっと香奈にストーカーされている。
 俺のいくところには当然のように香奈が居る。周囲からもカップルみたいに思われているが、断じて違う! 香奈は彼女ではないし、俺も彼氏じゃない。――てか、無人島に二人で流されたとしても……こいつの彼氏だけは願い下げだっつーの!!
 どこが嫌いかというと、いつも俺につきまとって、オカンみたいでウザイところ。おまけに成績もスポーツも俺より上だし、容姿だって悪くないくせに、この俺にめっちゃ執着してやがる。キモチワル。
 こいつがいるせいで、学校の女子が誰も寄ってこない。まあ、アマゾネス(香奈)と戦ってまで、俺を彼氏にしようとする勇者は学校にはいないだろう。だれか助けて!
「なんで隠れてても見つかるんだ?」
「絶対に逃げられないわよ。ナオトにはGPSが……」
「えっ!?」
「なんでもなぁ〜い」
 香奈は慌てて誤魔化したけど、なんか監視されてるような気がする。
「もう俺につきまとうなっ! ストーカー女めぇー!」
「なんで?  香奈とナオトは“運命のカップル”でしょう」
「ちげぇーよ!」
 こいつとは同じ日に同じ産院で生まれた、乳児室のベッドが隣同士、そのせいで母親同士が友達になって、今では家族ぐるみのお付き合いだ。
 毎年、俺らの誕生日にはお互いの家で二回お祝いして貰っている。バースデーケーキのろうそくをいつも二人で吹き消してきた。それが当たり前みたいになっている。
 香奈は一人っ子で、俺には五歳下に弟がいるが物心ついてから「お姉ちゃん」と香奈のことを呼ぶ。うちの母親も香奈が気に入っていて、週末には二人でご飯を作ったりして、嫁姑ごっこをして楽しそう。
 将来、俺たち二人が結婚して家族になることに、なんの疑問も持っていないようで……怖い。
 アニメじゃあるまいし、幼馴染だから最後には結ばれるなんてフラグを勝手に立てられたら、こっちが迷惑なんだ。
「運命とか関係ない」
 俺は抗え続けてやる!!
「ねぇ、知ってる。自分の意思では変えられないから運命っていうんだよ」
 まるで信仰のように“運命のカップル”だと信じてやがる。これ以上の議論は無駄だ!
「あっ、香奈の頭に毛虫がついてる」
「嘘っ? ヤダ、取って、取ってーっ!」
「よっしゃ〜」
 毛虫を取ると見せかけて、デコピンをお見舞いしてやった。
 香奈が驚いて尻餅をついた隙に、ふたたび逃走する。わき目も振らず全力疾走だ。
 いつの間にか、周りが創りだした、俺らの“未来のビジョン”に全力で抵抗してやる。そのために俺は今日も香奈から逃げ続けてやる。
俺が逃げると香奈が追いかける。香奈が追いかけるから俺は逃げる。無限ループでそれを繰り返す日々なのだ――。

「はぁはぁ……やっと逃げ切った……」
 俺は息を切らし、駅の改札を抜け、階段を下りてホームへ向かう。これで逃げ切ったと安心していたら――。
「ナオト遅いよぉ〜」
 ホームでアイツが手を振っている。
「嘘だろう? 俺の方が先に駅に着いてるはずなんだ」
「アタシ、近道しってるもーん」
「チートかよ!」
「へなちょこ」
「もうぉ〜イヤだぁ――!!」
 俺は頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。
「ナオトって、昔から鬼ごっこ好きだよね? また明日もやろう!」
 嬉しそうな顔で香奈がいう。
 俺の逃走劇って、香奈からしたら鬼ごっこだったわけ? ありえねぇーっ!!
 つーか、俺と香奈の鬼ごっこは、このまま一生死ぬまで続くかもしれない。もしも、香奈の方が俺から逃げようとしたら、今度は俺が鬼になって全力で追いかけてやるっつーの! 逃げろ! 逃げろ!!


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このストーリーに関するコメント

18/06/26 冬垣ひなた

泡沫恋歌さん、拝読しました。

スピード感のある軽快な筆致で読み心地が良かったです。幼馴染の定番かと思いきや、愛が強すぎて逃げたくもなりますね。でもラストにキュンとしました……こんな鬼ごっこなら楽しそうかも。面白かったです。

18/06/28 泡沫恋歌

冬垣ひなた 様、コメントありがとうございます。

アニメでは幼馴染の二人はラストでは定番のハッピーエンドですが、あえてそれに抗う主人公のモノガタリです。
ドタバタ風の逃走劇に仕上げたかったのですが、いかがでしょうか?
言い回しが古臭くならないように、最近はアニメや電子書籍のラノベで若者用語を勉強しています。

18/07/23 そらの珊瑚

泡沫恋歌さん、拝読しました。

追っかければ逃げたくなるのは、人間の性なのかもしれませんね。
楽しかったです。

18/07/23 泡沫恋歌

そらの珊瑚様、コメントありがとうございます。

主人公は文句を言いながらも、この関係を楽しんでいるのかもしれませんね(笑)
おそらく、この二人にとって恋の駆け引きともとれる、鬼ごっこではないでしょうか。

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