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堀田実さん

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ゴミの仕事

13/01/06 コンテスト(テーマ):第二十一回 時空モノガタリ文学賞【 学校 】 コメント:0件 堀田実 閲覧数:1717

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 就職活動に悩んでいる弟が僕にはいて、将来何になるべきか毎日のように問題になっている。人生においての大きな分岐点になるからだ、とみんなは思っていると思うし僕も思っていた。しかし弟は僕の考えとは違って一見するととても非現実的な、でもとても賢い選択をしようとしていた。
 これは就職活動をはじめるもっと前の、高校生になる時ぐらいの話だ。母に将来何になりたいかを聞かれて弟は即座に答えた。
「僕ゴミ収集車の仕事がしたいんだ」
母は答えに驚いていた。
「なにバカなこと言ってるのよ。ゴミ回収の仕事を選ぼうとするなんて。」
「冗談じゃないよ、僕は本当にゴミ収集車の仕事がしたいんだ」
母は半ば飽きれ気味に嘆息した。
「つとむ。そんな仕事なんて高校にも大学にも行かなくてもつける仕事なのよ。仕事がなくなってしまったような人が選ぶ仕事なの。わざわざ学校に行って将来そんな仕事に就かなくてもいいでしょう」
母がそう答えると弟はとても不思議そうな顔をしていた。母がどうしてそこまで頑なに断ろうとするかわからなかったからだ。
「だって仕事は就きたい仕事に就くものじゃないの?」
「そうだけど、ゴミ収集なんかより他にももっといい仕事があるでしょう。そんな仕事についたらもう将来が拓けなくなっちゃうわ」
弟は母の言葉に俯いて考え出した。
「ほら、つとむはインターネットやパソコンが好きでしょう。そういう仕事につけばいいんじゃない?」母は親心から彼を改心させたいようだった。「機械系の高校なんかもいいんじゃない? ロボットを作ったりする仕事も面白そうじゃない」
それから10秒ほど考えて彼は答えた。
「確かに面白そうだけど…どうしてごみ収集の仕事じゃダメなの? ロボットを作る仕事とごみ収集の仕事の違いがよくわからないよ。お母さんだって好きな仕事に就くべきだって言ってたじゃないか」
「そうだけど…でもごみ収集業者は汚いし臭いし給料も高くないし、はっきり言うと誰でも出来る底辺の仕事なのよ。仕事がない人がする仕事なの。」
「底辺ってなんだよ。お母さんは前人はみんなそれぞれで良いって言ってたじゃないか」
「そうだけどそれとこれとは話が別でしょ?これはつとむの将来にかかわる話なの」
「よくわからないよ」弟は泣きそうな声をして言った。「何が違うのかよくわからない」
そう言うと彼は部屋に篭ってしまった。
 その夜母はとても深刻そうに父にその一部始終を伝えた。父も彼の将来を心配してなんとか説得したいと思っているようだった。
「つとむはまだ社会のことがわかってないんだ」父は言った。「将来後悔してからじゃ遅い」
 父が意を決してつとむの部屋に入ると彼は寝転がっているところだった。布団もかけずただ片腕を額の上において天井を眺めていた。父は決心したように言った。
「つとむ、お母さんから話は聞いたよ。ごみ収集業者に就職したいんだって?」
「そうだよ。あれから少し考えたんだけどやっぱり僕はその仕事に就きたいんだ」彼は語尾を強めて言った。
「そうかぁ」父は嘆息して言った。「なぁ、つとむ。なんでごみ収集の仕事に就きたいんだ?世の中にはたくさんの仕事があるし、今は昔よりも自由が利いてなろうと思えば何にでもチャンスはある。それなのにどうしてごみ収集の仕事なんだ?」
「それは」つとむは答えた。「だって人の役に立つ仕事だからだよ」
「人の役に立つ仕事だから?」父は疑問に思って答えた。
「そう。役に立つ仕事だから」彼は深く深呼吸をして思い巡らすように一度あたりを見渡してから答えた。「僕自身どうしてごみ収集の仕事がしたいかわからなかった。昔からあこがれていたんだ。でもお母さんに反対されてショックで、どうして僕はごみ収集の仕事に就きたいんだろうってさっき考えていたんだ。そうしたらわかったんだよ。」
「わかったって何をだい?」父は答えた。
「うん、それはね。ごみの仕事っていうのは人が生きていると必ず出ちゃうものなんだ。もし誰もゴミを回収しなくなったら世界はゴミで溢れちゃう」
「ふむ」父は頷いた。
「小学校の先生が言ってたのをよく覚えてるんだ。教室の中にゴミが落ちていたら自分のじゃなくてもゴミ箱に捨てなさいって。僕はそんな仕事をしたいんだよ」
「なるほど」父は極めて冷静に頷いたが内心困惑していた。ゴミについてそのように考えたことがなかったからだ。
「たぶん…」彼は続けた。「世界は一つの学校なんだ。学校の中にはたくさんの人がいてたまに教室にゴミが落ちてる。そんな時ゴミ収集の車が走ってきてゴミをゴミ箱に捨てに行くんだ」


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