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冬垣ひなたさん

時空モノガタリで活動を始め、お陰さまで4年目に入りました。今まで以上に良い作品が書けるよう頑張りたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。エブリスタでも活動中。ツイッター:@fuyugaki_hinata プロフィール画像:糸白澪子さま作

性別 女性
将来の夢 いつまでも小説が書けるように、健康でいたいです。
座右の銘 雄弁は銀、沈黙は金

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ニャルパラへようこそ!

18/06/23 コンテスト(テーマ):第157回 時空モノガタリ文学賞 【 コメディ 】 コメント:2件 冬垣ひなた 閲覧数:330

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 ニャルタン・パラダイス(通称ニャルパラ)といえば、東のT○L、西のUS○に続く、巨大テーマパークだ。
 猫に似た不思議な精霊・ニャルタンが踊る超高速ダンスは、動画サイトで爆発的な人気を博し、ここは世界中から観光客が訪れる人気スポットとなった。
 
 南国をイメージして作られたオープンセットのような街並みは、親子連れとカップルで超満員だ。そんな人ごみに紛れてはいたが、花山タケルの姿は目立っていた。
 本日の服装はアロハシャツに色の濃いサングラス。景観に溶け込んだ、自然なコーディネイトのはずだ。
 なのにすれ違う人々が、サバンナで肉食獣に出くわしたように怯えるのは何故だろう?
 

 いや、正直に言おう。タケルは人相が悪い。
 高校生にして、その図体のデカさと威圧感のある顔立ちは風格すらある。若い身空で、ヤのつく職業の組員に間違われたぐらいだ。心優しく正義感も強いのにクラスでは誰も近づきたがらず、彼女どころか友達が一人もいない有様である。
 
 そんなお寒い青春の日々を送っているタケルにも、強い味方があった。
 ニャルパラだ。
 熱心なニャルタンの追っかけを自認し、常日頃から年間パスポートで通い詰めているタケルは、自らの境遇にめげなかった。期間限定フードを食べ、アトラクションを一通り楽しむいつものコース。一人ぼっちで三段アイスクリームにかぶりついても、自撮りをする達人だ。
 この悪党顔を嫌う人間が何万人いたって、すぐに忘れるだろう……多分。誰もが楽しむことに精一杯で、他人から恐れられるタケルの悩みなど気にはしていない、そう思えるのだ。


 寂しさをサングラスの下に隠して、昼から始まるパレードの席取りをしようと新エリアに向かう途中。
 ああ、新店舗がオープンしている……。物珍しげに眺めつつ、タケルはニャルパラのホームページにあった情報を思い出す。
 この店では様々なコスプレ衣装を貸し出し、そのまま園内を歩き回ることができるらしい。

「ハロー、ようこそ!」
 好奇心から店内をふらっと覗くと、店員らしい七色アフロの男が後ろ向きのムーンウォークで出迎える。幾何学模様の店内には、古今東西の舞台衣装から最新のアニメチックなドレスまで、びっしりとハンガーで吊るされていた。
「さあ、あなたも日常を脱いで変身されますか?」と問われると、タケルの期待は3倍速で高まってくる。

 子供好きなのに、泣く程怖がられるので保育士の道は諦めた。正義の味方になりたいのに、鏡の中の悪党顔にうんざりして警察官も目指せなかった。
 けれどニャルパラでなら自由に夢が叶うのだ。
 本当に、何でも……?


 20分後。タケルは不要になったサングラスを外し、店を出た。
 太陽がギラギラ眩しいぜ。
 シャバへ出るって、こんな気分か?
 タケルの耳に七色アフロの声が蘇る。

『悩むのはよしましょうよ。どんな人にも神様に与えられた配役があります。人間、自分らしく生きるのが一番ですから。ほら、今のあなた。見てごらんなさい』

 タケルは、ショーウィンドウに映る威風堂々とした姿を確認する。
 漆黒に染め上げた凶悪なバトルコスチュームと銀のブーツ。
 金髪はカツラ。
 だが、ノーメイクで迫力ある顔には我ながら感心する。
 ニャルタンの宿敵、キライサ博士がそこにいた。
 
 似合う。
 本人かと思う位だ。
 架空の悪役なのに。
 タケルの中で、何か弾けた。
 なりたい自分をカモフラージュするよりも、ありのままで生きたい。誰かの目を気にした人生のキャスティングなんてくそくらえだ。


 パレードが始まり、賑やかな音楽が流れる。
 踊り子とともに進んでくるフロート車の上では、猛スピードで切れの良いダンスを踊る、ニャルタンの姿があった。
 誰からも愛されるニャルタン。ここにいる観衆は、心の底で大好きな人気者になりたいと、憧憬の眼差しで見つめているのだ。
 勿論タケルだってそうだった。けれど今日は違う。

「あの、キャストさんですか」
「アニキって呼ばせてください!」
「写真一緒に撮ってもらえませんか?」

 悪党スタイルを極めたタケルは、たちまち喜びに満ちた観衆に囲まれる。
 夢か? いや、夢じゃない。
 普段は笑わないタケルも、自然に表情がにこやかになる。

「キライサはかせだ!」
「かっこいい!」
「でもニャルタンにやっつけられちゃうの?」

 群がる子供たちの姿にタケルは胸が熱くなった。
「ニャルパラ限定の、大悪党だからな」
 この世の中で確かな居場所を得たように笑う。
 お決まりのストーリーをぶち壊す悪党も、みんなの待ち望むスターじゃないか。

 花山タケル、17歳。将来の夢は、これから山ほど描ける。
 空を彩る紙吹雪と、万雷の拍手。
 タケルは素顔のまま、全身で吼えた。


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このストーリーに関するコメント

18/06/28 泡沫恋歌

冬垣ひなた 様、拝読しました。

あんぱんマンとバイキンマン、サトシとロケット団、悪役あってのヒーローです。
より個性的な悪役こそがヒーローを魅力的にしてくれるのですから、花山タケルの未来には可能性がいっぱい!
あんがい悪役顔の人の方が心は優しいもの、主人公を応援したい気持ちになりました(❃´◡`❃)
楽しいお話いいですねd(⌒ー⌒) グッ!!

冬垣さん、お久しぶりですが大阪北部地震大丈夫でしたか?
私は震源地の隣の市なので、かなり揺れました。
震度6弱、この世の終わりかと思うほどの恐怖を体験しましたが、怪我はありません。
家屋は大丈夫だったけど、家財道具が少々壊れました(´・ω・`)ショボ〜ン 

18/07/01 冬垣ひなた

泡沫恋歌さん、コメントありがとうございます。

架空の世界では悪役はなくてはならない大事な存在、タケルが自分の生き方を見つけてくれればいいですね。かなり個性的な主人公なので、描写にはいつも以上に気を使いました。楽しんで頂けて嬉しいです♪

泡沫さん、大変でしたね。お怪我ないとのことで安心しましたが、震度6弱はとても恐ろしい思いをされたことと思います。家財道具も残念です。心からお見舞い申し上げます。
私は大阪の南部なので震度4ほどですが、やはり阪神淡路大震災並の揺れで大変怖かったです。これからも地震に備え、色々気を付けたいと思います。

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