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瀬口利幸さん

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新生児室の同窓会

18/06/23 コンテスト(テーマ):第157回 時空モノガタリ文学賞 【 コメディ 】 コメント:0件 瀬口利幸 閲覧数:184

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今から三十年前に僕は生まれ、新生児室に入れられた。
それから三十年後。
その新生児室で、僕の隣に寝ていた同級生から、同窓会を開催する
という知らせが届いた。
あの時、新生児室に寝ていたメンバーが、全員、出席するらしい。
面白そうなので、参加してみる事にした。


僕が、居酒屋の二階座敷に上がって行くと、もう、すでにそこには、
僕と同世代の男女が十数人集まっていた。
「おう、瀬口、こっちこっち」
座敷に入るなり、僕は、見知らぬ男に手招きをされた。
どうせ全員見ず知らずの人たちなので、僕は、言われるままに、
その男の隣に座った。
「久しぶりだな、瀬口。三十年振りか」
「覚えてるのか ? 俺の事」
「当たり前だろ、幼馴染なんだから」
「若干、幼馴染過ぎるとは思うけど。まあ、幼馴染といえば幼馴染だよな」
「しかし、全然変わってないな、お前」
「変ってるだろ。赤ちゃんと三十歳だぞ。どんだけ童顔なんだよ、俺」
「相変わらず、泣き虫なのか、お前。本当、良く泣いてたよな」
「誰だってそうだろ、赤ちゃんなんだから。ていうか、お前もだろ」
「おい、田口」
その男が、他の男から呼ばれた。
「おう・・・じゃあ、また後でな」
そう言って田口は立ち去って行った。
そして、田口と入れ替わるように、今度は、見知らぬ女が隣に座った。
「久しぶりね、瀬口君。私の事覚えてる ? 」
「だから、基本的に覚えてないって」
「どうぞ」
そう言いながら、その女は、僕にお酌をしてくれた。
「どうも」
「気付いてた ? 私の気持ち」
女は、恥ずかしそうにうつむいたまま、そう言った。
「何が ? 」
「私、瀬口君の事が好きだったんだよ」
「生まれたてで ! ? 」
「無邪気で少年っぽいところがあったじゃない、瀬口君って。
そういうところが好きだったんだ」
「無邪気は認めるけど、少年っぽいって・・・。まだ、少年にも
なってなかったんだけど」
「私、まだ独身なんだけど、なんでかわかる ? 」
「さあ・・・」
「いまだに、瀬口君の事が忘れられないから・・・」
「俺は、そもそも覚えてないんだけど」
「今まで生きてきて、瀬口君以上の人とは出会わなかった」
「あっ、そう」
「ごめんね、変なこと言って」
「まあ・・・ね」
「飲んで」
女は、自分の気持ちを切り替えるように、明るい調子でお酌をしてくれた。
そして、しみじみと、昔を懐かしむようにこう言った。
「あの頃が一番良かったね」
「そうかな・・・」
「あの頃に帰りたいな・・・」
「帰り過ぎだと思うけど」
その時、田口が不意に立ち上がり、大きめの声を出した。
「みんな、ちょっと聞いてくれ」
そこにいた全員が、田口に注目した。
「俺、せっかく今日、みんなが三十年振りに集まるからって思って、
こんなもの持ってきたんだ」
「何持ってきたんだ ? 」
ざわつく一同の注目を集めながら田口が取り出した物は・・・大量の紙おむつだった。
「おおー ! ! 」
それを見た瞬間、一同はざわめき立った。
「久しぶりに、みんなで紙おむつ付けてみないか」
そう言いながら、田口は、その紙おむつを、一人ずつに配って歩く。
「懐かしいな」
「付け方覚えてるかな」
紙おむつを受け取った人たちは、口々に呟いた。
一通り配り終えた田口は、また、元の場所に戻った。
そして、
「よーし、みんな、今日は昔に戻って、おもいっきりおもらしするぞー ! ! ! 」
「おー ! ! ! 」
こうして、新生児室の同窓会は、盛り上がりが最高潮に達するのだった。


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