瀬口利幸さん

性別
将来の夢
座右の銘

投稿済みの作品

0

人魚

18/06/23 コンテスト(テーマ):第157回 時空モノガタリ文学賞 【 コメディ 】 コメント:0件 瀬口利幸 閲覧数:139

この作品を評価する

会社員の高橋は、友人の佐藤と、小型ボートで海釣りに来ていた。
「何だ、あれ ?」
「どうした ?」
高橋の呟きに、隣で釣りをしていた佐藤が反応した。
「あれ・・・何だろう ?」
高橋が、海を指差す。
「えっ ?」
佐藤が、高橋が指差した方向を辿っていくと、100mくらい沖の
海面に女性らしき姿を発見した。
「泳いでるんじゃないか」
佐藤が、さも当然という感じで言った。
「泳いでる ?」
「ああ」
確かに、今は7月だし、近くに海水浴場もあるし、胸にはビキニの
水着を着けているように見える。
しかし、
「このボート、港から2、300mくらいは離れてるんだぞ。そんな所
で泳ぐか ? 周りに船も無いし」
「そういえば、そうだな・・・浮き輪も付けてないみたいだし」
「ひょっとして・・・死んでるんじゃ・・・」
「まさか ! ・・・」
そんな話をしながら、二人は女性を見ていた。
すると、次の瞬間、
「えっ !!? ・・・」
二人同時に、驚きの声を発して見つめ合った。
「見たか !?」
「ああ」
高橋の問いに、佐藤が頷く。
二人を驚かせたのは、女性の下半身だった。
波間から見えた女性の下半身が・・・
二人の目には・・・
魚に見えた。
「魚・・・だったよな・・・下半身・・・」
半信半疑の高橋の問い掛けに、
「ああ・・・そう見えたけど・・・」
同じく半信半疑の佐藤が答えた。
「上半身が人で下半身が魚って事は・・・人魚 !!!」
二人は、お互いが持ち寄った半信半疑の、半疑の部分を捨て去り、
半信の部分だけをつなぎ合わせる事で、合体ロボ『全信』を完成させて、同時に叫んだ。
「大発見だぞ !! 人魚なんて !!」
佐藤が、興奮気味に話す。
「・・・でも、人魚なんているのか ? 本当に・・・」
少し冷静になった高橋が言った。
「行ってみりゃ分かるだろ !」
そう言って、佐藤は操縦席に座った。


ボートが近付くに連れて、人魚らしき女性の姿が、はっきりと
確認できるようになっていった。
やはり、どう見ても、上半身が人で下半身が魚の人魚にしか見えない。
しかし、なぜか、泳ぎがぎこちないように見えた。
いや、それどころか、溺れているようにさえ見える。
そして、ボートが更に近付いて行くと、
「助けて !! ・・・」
と叫ぶ人魚の声が、はっきりと高橋の耳に届いた。
「ストップ、ストップ !!」
高橋は、人魚のすぐ近くまで来た所で佐藤に声を掛け、ボートを止めさせた。
そして、ロープが付いた浮き輪を、人魚めがけて投げた。
わらをも掴む思いだった人魚は、わらよりも格段に心強い浮き輪を必死に掴んだ。
それを確認した高橋は、ロープを手繰り寄せ、駆けつけた佐藤と一緒に、
人魚をボートに引っ張り上げた。
「どうしたんだ ?」
操縦席にいて、状況が良く把握できていない佐藤が、ぐったりと横たわった
人魚を見下ろしながら、高橋に尋ねた。
「溺れてたんだよ」
「溺れてた !? ・・・人魚が ?」
「ああ」
「なんで、人魚が溺れるんだよ」
「知らないよ、俺に聞かれても」
その時、少し元気を取り戻した人魚が口を開いた。
「あの・・・」
「あっ・・・大丈夫ですか !?」
高橋が声を掛けると、人魚は、弱々しい口調で続けた。
「私・・・人魚じゃなくて・・・大きい魚に飲み込まれてる途中なんです・・・」


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン