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奇都 つきさん

金魚とクラゲが好きです。 主にホラーを書いております。 他ジャンルだと、ギャグ、コメディ、ファンタジーをよく書きます。 よろしくお願いします。

性別 女性
将来の夢 ホラー作家になれたらなぁ
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まさかの忘れ物

18/06/23 コンテスト(テーマ):第157回 時空モノガタリ文学賞 【 コメディ 】 コメント:0件 奇都 つき 閲覧数:275

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私は中学時代3人で通学していた。待ち合わせ場所は近所の橋の上だった。
今日は小テストがある。なので早く行って3人で勉強をしよう、となり、私たちは普段よりも30分も早く待ち合わせをすることになった。
「おっは」
「おはよう」
いつもみんな同時位に集まるのに、今日は一人遅れてしまった。
おかしいね、寝坊かな?寒いから家出たくないもんね。もしかして、忘れてないよね?なんて話していると、最後の一人が来た。
「おはよう!ごめん寝坊しちゃって!」
モコモコと厚手のコートにマフラー。いつもの彼女の格好だ。ただ、いつも高い位置で結われているポニーテールが、今日は無いのがなんだか寂しい。
「アミちゃん遅れるなんて珍しいね」
「宿題に手こずって・・・・・・サクラとナッちゃんは終わった?」
一歩踏み出そうとして、靴ひもがほどけていることに気付いた。私は二人の会話を聞きながら、紐を結びなおそうとしゃがんだ。
そこから見えたのは、コート着ない主義のナツのスカートから伸びる、寒々しい生足。
そして、同じくコートから出ているピンク色モコモコの二本の足。
これは、見覚えがある。
顔を上げると、ピンクの足の正体はやはりアミだった。
そうだ、これは先月のお泊り会の時にアミが着ていたパジャマだ。
ということは、だ。アミはスカートの下にズボンを履いてきてしまったということだ。
「サクラ、どうしたの?」
二人が振り返る。少し離れたところでしゃがみ込んでいる私を不思議そうに見た。
「あ、靴紐ほどけちゃって」
二人は納得したように頷いて「待ってるから結んじゃいなよ」と言ってくれた。
ありがとうと返事はしたものの、靴紐なんかよりもアミのパジャマズボン。
今引き返しても遅刻にはならないだろう。否、彼女は寒がりだし、いっそちょうどいいのかもしれない。それに、スカートの下ならば、学校まで防寒着として着て、ついたら教えてあげよう。それで通学バッグの中にでもパジャマは隠しておけば無事に持ち帰れるだろう。
うん、そうしよう。一人納得し、不恰好なちょうちょ結びをした。そうとなれば、早く行って誰にも見られないうちに教えてあげよう。立ち上がる前にアミのモコモコの足を見て気合を入れた。

念のため二人から少しだけ下がって歩くも、誰とも会わない。
あと信号を一つわたってしまえば、もう学校だ。安全圏だ。思わず腰の辺りでグッとこぶしを握って喜んだ。同時にあぁ、とため息に似たものが漏れた。
アミの着ているコートは太ももの真ん中あたりまで丈がある。いつもはコートのすそからスカートがはみ出ている。
それが、ないのだ。
つまり、アミは上は制服、下はパジャマという謎の恰好にコートを羽織っている。
これはいけない。さすがにいけない。しかしここまで来て帰らすのもためらった私は、遠回しながら気付かせる方向にした。
「寒いねぇ」
丁度良く、ナツがマフラーを上に引っ張り上げながらとても良い話題を振ってくれた。そしてナツ、あなたはコートを着れば寒さ改善されると思うの。
「ホント、スカートだし足もとスースーする」
ねぇ、と同意を求めて二人を見るとナツは「男子がうらやましい」と、ズボンをうらやみ、アミも「本当に足寒い」と同意した。
いや、そんなにモコモコしておいて寒いのか。
伝わらなかったことと、まさかの見かけ倒しの防寒性のズボンに肩を落とした。
その後も何事もなく、結局校門についてしまった。入口に用務員のおじさんがいる。
「おはようございます!」
3人であいさつをする。必然的にアミが下を向く。そしてようやく気付いてしまった。
「あ」
とても小さな声だが、私には聞こえてしまった。
そうだね、あなたパジャマできちゃったのよ。ごめん、気付いてて教えなくてごめん。
心の中で謝るも、当の本人はケラケラ笑いながら「パジャマできちゃった!!」とおじさんにまで自己申告していた。ナツも笑い、おじさんは困惑した顔をしていた。帰るかどうか聞くと、「面倒だから、教室ついたらジャージに着替える」と言い、自分の惨状に自分でまた笑ってしまっていた。
楽し気な彼女に罪悪感が薄れたが、心の中ではまた早く教えればよかったと謝罪していた。
しかし、アミの今日の抜けっぷりは想像を超えていた。教室でコートを脱ぐと、ピンクのモコモコパジャマが現れた。やはり早い段階で教えておくべきだったと後悔しながら腹を抱えて笑う羽目になったのだった。


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