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柳瀬さん

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18/06/22 コンテスト(テーマ):第157回 時空モノガタリ文学賞 【 コメディ 】 コメント:0件 柳瀬 閲覧数:214

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世界中で10万種以上、地球上の生命で昆虫に次ぐ種類の多さを誇っている軟体動物、貝。
貝の魅力は、ときに人の人生までを変えてしまいます。
海岸には今このときも、美しい貝が浜辺に打ち上がっています。
そう思うと、海に行きたくなる思いは子どものころから今まで変わっていません。
僕は教室から海が見渡せる学校に通っていました。
放課後にはいつも裸足のままで海に駆け出し遊んでいました。
泳いだり、潜ったり、砂の山を作ったり、トンネルを掘ったり、岩場から釣りをしたり、日が暮れるまでの数時間で沢山遊びました。
特に楽しかった遊びは貝拾いでした。
海には美しい貝殻が沢山落ちていました。
この貝、なんだろう。
まだら模様で、中央部が膨らんでおり、子供の手のひらくらいの大きさで、今まで見た事がなかった貝殻が落ちていました。
僕は新種の貝を拾ったと思い大喜びしました。
冷静に考えれば、そんな簡単に新種の貝が見つけれるはずないのですが、その貝のめずらしさで、僕はすっかり大発見をした気になりました。
まわりを見まわすと新種の貝は沢山落ちていました。
わたしたちは夢中でその貝を拾い集めました。
学校に戻りさっき拾った貝を図鑑で探してみると、どうやら真珠貝という名前の貝でした。
真珠貝は見つける事が難しく珍しい貝で、普段、砂の中で静かに生息しています。
すると、海水と一緒に砂や泥などの異物を吸い込んでしまいます。
異物が入ると貝は嫌がって吐き出そうとします。
たまに、尖った石のかけらや寄生虫が入ってきてしまい、貝は痛いので懸命に吐き出そうとしますが、どうしても吐き出せない時があります。
そんな時は異物を体の中に保つしかありません。
痛みに耐えながら、異物によって内臓を傷つけられないように、体からカルシウムとタンパク質の層で貴重に包み込み、そうして真珠が形成される珍しい貝と図鑑に書いてありました。
珍しい貝を拾うと、周りから見せて見せてと言われ、皆んなが僕のことを褒めてくれました。
その快感が忘れられず、学生時代、貝殻を探すことだけに時間を費やしてきました。
周りは大学に進学したり、彼女を作ったり、部活で汗を流したり、結婚している同級生もいました。
気がつけば僕は19歳のニート。
綿谷りさはこの年に蹴りたい背中を執筆して芥川賞を掴み取った。
僕が手にしたのは沢山の貝殻だけです。
友達の名前は1人も出てこないけど、貝殻の名前なら沢山出てきます。
昔みたいに褒められたくて、真珠貝見つけたから見てごらんと、海で遊びにきた子供達に喋りかけると変人扱いされ、親御さんからはクレームがきます。
けど、大丈夫です。
僕には貝殻があります。
どうやら僕の人生は真珠貝とよく似ているかもしれません。
この真珠貝同様、毎日のように心の中に痛みが入ってきます。
たいていの痛みは吐き出すことが出来ますが、時にぐさりと胸に突き刺ささって、吐き出そうとしても吐き出せない痛みに出遭うことがあります。
その時は、痛みに耐えながら胸の中で折り合いをつけ、痛みを包み込まないといけないのです。
僕も痛みに耐えながらも、心の中に自分だけの真珠を創り出したいです。
僕が手にした真珠貝を、2枚に割ってみると中に大きな真珠が入っていました。
真珠は太陽の光を何十にも反射させキラキラと輝き、それはそれは美しかった。


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