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浅月庵さん

笑えるでも泣けるでも考えさせられるでも何でもいいから、面白い小説を書きたい。

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チェーン彼女

18/06/04 コンテスト(テーマ):第157回 時空モノガタリ文学賞 【 コメディ 】 コメント:2件 浅月庵 閲覧数:505

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 付き合った当初は優しくて愛嬌があって、髪の生えたミシュランマンみたいだなって思ってたけど、どうやら彼女は短距離走が得意な子のようだった。

 付き合って三ヶ月くらいで本性を現し、ソファに寝転がって煎餅を齧りながらケツを掻くような女になり下がってしまい、もう煎餅のボリボリ音だかケツのボリボリ音だかわかんなくてボリボリする。いや、イライラする。

 しかも自分のことをお姫様とでも思ってるようで、平気で俺を一日五回もコンビニに走らせるもんだから、もう俺だけマラソン選手。結婚という長距離走を彼女と走るのは無理だと判断して、行動に出ることにした。

「男紹介して。でないと、晃平を殺して私も死ぬ」
 これは俺が彼女に別れを切り出した際に言われた言葉だ。
 まさかと思ってヘラヘラしてると、ケーキナイフが俺の耳を掠めるので、急いでケータイのアドレスから次なる“生贄”を探す。

 そして、前職の上司の連絡先を運良く見つけたのだ!

 五十歳で頭も薄くて「金と女は天下の回りもの」が口癖だけど、借金があって女も全然回ってきてないあいつには厄病神(キングボンビー)がお似合いだろう。勿論、俺の元カノってことは内緒だ。

 少し経って、その元上司と元カノがめでたく付き合うことになったらしく、ケータイのメッセで「素敵な人に出会わせてくれてありがとー!」って、同じ文面が二人ともからくる。
 お前ら中学生かよ。青春データアップデート完了かよって心底辟易するけど、すぐに興味はなくなる。

 ーーそれから、彼らの動向を鼻クソほども気にかけていなかった半年後に、二人の結婚式の招待状が俺の元に届く。元カレである俺を招待するなんて、やっぱりあの女の思考回路はショート寸前のようだった。

 この場合、欠席するのが普通なんだろうけど、俺はちょっとした好奇心もあって、二人の結婚式へ出席することにする。披露宴で丸テーブルに用意された自分の席に座ると、隣に見慣れた男が座った。

「うお。晃平も来てたんだ」
 俺に声をかけてきたのは大学時代の友人で、なにを隠そうあのモンスターを俺に紹介した張本人でもあるのだ。
「てかお前、とんでもない女紹介してくれたな」
「元カレのお前がなんで来てんだよ」
「ちょっとした好奇心だよ。つか、雄斗もあの女とまだ友達付き合いあんの?」
「ないよ。俺も招待状来てたからさ」
「ふーん」
 少しの沈黙のあとに雄斗が咳払いすると、再び口を開いた。
「悪い。今だから言うけどさ、俺もあの女と付き合ってたことあんだよね」
 お前マジかよ!って叫ぶよりも前に、同じテーブル席に着いている他の男たちが「俺も俺も!」って便乗してきて、思わず「どーぞどーぞ」って言いそうになるけど言わない。みんな互いを生贄に捧げ合った兄弟ってわけね。

 え、ちょっと待てよ。そしたらこのテーブルは、元カレ果汁100%ってこと? ミステリーサークルならぬモトカレーサークルができあがっちゃってるってこと?(全然上手くない)

 事態を飲み込めないまま式は進行し、しばらくしてなぜか元カノの謎のスピーチの時間が始まった。
「私は今までたくさんの男の人と付き合ってきました」
 その話、晴れの舞台ですること? しかも元カレオールスター集結してますけど。
「でも最終的に私は、その中からとても大切な人に巡り会うことができました」

 .....なんだかそう言われると俺たちが、彼女のお眼鏡に叶うことのできなかった“敗者”みたいで腑に落ちない。
 途端にあのハゲが“良い男”に見えてくるけど、急に雄斗が笑い始めるのでそれは勘違いだったことに気がつく。
「どうした?」
「いや、俺らが中学くらいの時にさ“チェーンメール”って流行らんかった?」
「あれだろ。“このメールを受け取って三時間以内に誰かに送らないと、あなたに不幸が訪れます”とかいうやつだろ」
「なんかさ、俺らがあいつを押しつけあったのも、チェンメに似てんなと思って」
「チェンメならぬチェーン彼女ってやつ?」
「そそ。で、旦那さんは誰にも呪いを送らなかったから、」
「ご愁傷様ってわけですな」
 そこで元カノのスピーチが終わるので、俺たち元カレ組は顔を見合わせて盛大に拍手した。
 人生は喜劇だと誰かが言っていたけど、まぁこれもいつかは笑い話になるよな。
 そう互いを心の中で励まし合うように俺たちは、馬鹿みたいに笑い合ったのだ。

 ーーなぁんて、遠い過去にも思い出話にもなるはずなくて、そこから半年後に二人は離婚して、それから半年後に俺は友達に女を紹介してもらうんだけど、再び目の前に見慣れたキングボンビーが現れたとき、人生は喜劇ではなく悲劇で、そういえばチェーンメールって、巡り巡って違うやつから同じ文面が送られてくることもあったよなーって、不意に思い出すのであった。


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このストーリーに関するコメント

18/06/10 文月めぐ

拝読いたしました。
笑える要素が所々に配置されており、楽しく読めました。
結末は悲劇的ですが、見事なコメディでした。

18/06/11 浅月庵

文月さん
いつもありがとうございます!

やはり狙って笑わせようとするのは、
なかなか骨の折れる作業だなと感じました、、、

それ故に、温かい感想をいただけて励みになりました。
身に沁みます。

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