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小高まあなさん

鳥と怪異と特撮ヒーローが好き。 ひねくれつつも清々しい物語がモットー。

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多田くんは浮いている。

18/05/28 コンテスト(テーマ):第156回 時空モノガタリ文学賞 【 浮遊 】 コメント:0件 小高まあな 閲覧数:340

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 多田くんはクラスで浮いている。
 クラスの子と話してるところを数える程しか見たことがない。話しかけてもそっけない。休み時間はずっとなにか分厚い本を読んでいる。どんな授業も引くぐらい真剣。お昼ご飯はいつもカロリーメイト。
 決して悪い人ではないけれど、多田くんは他のみんなとの間に一線を引いているし、他のみんなからも一線を引かれている。
 高校生にもなったら、少し違うからといって、わざわざからかったり、いじめたりはしない。少なくとも、うちの学校では。
 だからといって、仲良くするかといえば、それはまた別の話。それこそ小学生じゃないのだ。輪に入りたくないひとを無理矢理仲間に入れて友達ごっこなんてしないし、それを強制する大人もいない。
 多田くんは、クラスの輪から外れたところにずっといた。
 そんな多田くんが浮き出した。物理的にだ。
 最初は九月ぐらいのことだった。個人主義の多田くんは、文化祭の準備にも積極的ではなかった。まあ、それはいい。学校行事が嫌いな人もいるし、私だって体育祭は滅びればいいと思っている。
 嫌なら、適当に理由をつけて帰ればいいのだ。実際、予備校だからといって帰る子たちもいた。もちろん、本当に予備校の子もいたけど、その直後ゲーセンで遊んでるのを目撃された人たちもいる。サボってる奴らはムカつくけれど、でも、邪魔をしないだけいい。
 多田くんは違う。やる気もないのにいて、邪魔なのだ。指示しないと何もしない。指示をしてもちゃんとやってくれない。帰れよ、うぜぇな、空気読めよ。そんなふうに皆がイライラしてたころ、多田くんは浮き出した。
「多田、お前、なんか……浮いてね?」
 クラスの男子がそう言った時、なに本当のこと言ってるの? と思ったし、悪口なそれに焦った。みんなも唐突な悪口だと思ったのだろう。空気が凍った。でも、違ったのだ。
「違うって、ほら足元……」
「え、足が……」
 多田くんの足は床についてなかった。数センチ、浮いてたのだ。
「ああ、この前から、なんか」
 多田くんは足元をみて、何でもないような口調で言った。大事だと思うんだけど……。本人が淡々としてるから、その日の私たちはそれ以上騒ぎ損ない、準備に戻った。
 だが、そこから、多田くんは徐々に浮き出した。少しずつ、少しずつ、地面から離れていった。
 親や先生も気づき、多田くんは病院やら大学やらに連れていかれ、それでも原因不明だったらしい。
 そんな変な状況なのに、彼はちゃんと学校に来ていた。座っていても、彼は浮いていた。そして彼は、泣いたり喚いたりせず、今までと同じ飄々とした顔をしていた。
 1m浮くようになってからは、さすがに学校に来なくなった。来れなくなったという方が正解か。どこかの研究施設で、治療法を探しているらしい。
 多田くんが学校に戻ってくることなく、私達は卒業した。
 卒業式の日、多田くんは体を縛り付けている重りを勝手に外した。それがないと、地面に触れることが出来ず、日常生活もままならない状態だったのにだ。外に出て、どこまでも浮いていったらしい。その頃の彼は、もう十階建てのビル程度には浮くようになっていたそうだ。
 そのまま、ふよふよとどこかに風船のように飛んでいったらしい。
 お世話になりました、のメモを残して。
 多田くんは、やっぱりどこか、浮いていた。


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