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マサフトさん

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月と兎と走り幅跳び

18/05/20 コンテスト(テーマ):第156回 時空モノガタリ文学賞 【 浮遊 】 コメント:0件 マサフト 閲覧数:191

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「宇宙空間とか、重力が弱いところに長くいるとこつしょしょうしょうになるんだってー」

傍らで『宇宙での生活』という、ーー今後地球から出ることのないであろう我々一般市民には特に役に立たないであろうーー図説入りの本を読みながら、彼女は驚いていた。

「骨粗鬆症な」
「こつしょそうしょう」
「(もうええわ)骨がスカスカになるやつだっけ」
「そーそー。筋肉とか骨に重力の負担がかからないから、弱くなっちゃうんだって。だから宇宙ステーション星人たちはそうならないように日夜トレーニングしてるらしいよ」
「何だよその宇宙ステーション星人て」
「えー。だって長い人だと宇宙ステーションに1年も滞在してるんだってよ。もう地球人じゃなくて宇宙人、もとい宇宙ステーション星人じゃん」

うーん。付き合って3年経つが未だに思考が読めない。いったいどういう頭の構造をしているのか。だがそれが面白いから付き合っているのでもあるが。

「宇宙飛行士の皆さんに失礼だろ。地球出身なんだから歴とした地球人でしょうが」
「へぇ〜!月の重力は地球の6分の1しかないんだって。へぇ〜」
「急に話題変えるねぇ…。じゃあ、月だと少し跳ねただけで大ジャンプになるんかねぇ」
「うーん、アポロ11号の月面での動画見たことあるけど、なんかフワフワ移動してただけだったなぁ」
「捏造肯定派?」
「否定派。ロマンがあって良いじゃない」
「同意」

「じゃあさ、月の兎ってみんなこつしょそうそうなのかな」
「いやなんで月に兎がいるの前提なの?あと骨粗鬆症ね、ゆっくり言ってみ」
「こつ・そ・しょう・しょう 言えた!」
「やったぜ、ベイビー」
「だって月に兎がいる方が、ロマンがあって良いじゃない」
「何でもロマンと言えば納得すると思うでない。でも、骨粗鬆症になるとしたら地球産の兎を月に持ち込んだ場合じゃないの?さっきの説明だと、地球の重力に慣れた身体が重力の弱い所に長く居た結果みたいだし」
「地球産の兎ってなんか凄い言い回しだね」
「宇宙ステーション星人に比べればまだまだです」
「じゃあ月産の兎ってどんなかな」
「地球の6分の1の重力だから、地球産の6倍大きい兎なんじゃないの?」
「そりゃもう熊のサイズだね。月の輪熊だね」
「上手いこと言うなぁと少し思ったけど、意味不明だぞ」
「実は月の輪熊は、月産まれの兎が地球侵略のために攻めてきた姿だったのだ。宇宙ステーション星人は侵攻を食い止めるため日夜トレーニングに励んでいるのだ!」
「さっき骨粗鬆症とか筋肉の衰えを防ぐためって自分で言ってたじゃん」

「うわ〜、地球と月って38万kmも離れてるんだってー。遠いなぁ」
「うん。都合悪くなると話題変えるよね」
「走り幅跳びの世界記録が8.95mだから、その4245万8100倍かぁ。遠すぎる世界だなぁ」
「⁉ 例えがおかしくない?世界記録なんて何で知って…て言うか今の暗算⁉」
「高校時代陸上部で走り幅跳びやってたもので。あと計算はこっそりスマートフォンの電卓を使いました」
「び、びっくりした」
「でも本当にピンとこないね、38万kmなんて。こりゃ月の輪熊も攻めてこられないなぁ」
「まだひっぱるの?それ」
「でもさぁ、月面探査機とか火星探査機とか、こんなに遠いところで探査してるロボットも居るんだよねぇ。この本によると地球から火星まで7,528万kmもあるよ!遠すぎるよ!」
「でも宇宙規模で見たらすぐ隣の惑星だもんなぁ。月なんて惑星ですらないし」
「やっぱり火星人は…タコ型派?」
「いや、グレイ型派」

こんな話を昨晩遅くまでしていたせいだろう。変な夢を見た。俺は月面に立って三日月になった地球を眺めていた。いや、月は足元だからあれは三日地球?と思って足元を見ると、体が機械になっていた。足はタイヤで背中にソーラーパネルを背負っていた。

「遠いですなぁ」
隣りに居た6倍サイズの兎が話しかけてきた。
「ワシの故郷は地球やねんけど、満月の夜に跳ねて回ってたらこんな所まで来てしまったわい。あんさんも同じクチ?」
「いや、俺は調べ物をしに来ました」
「ほーん、何を調べとんのや?」
「はぁ、なんでも走り幅跳びの選手がこっちの方まで跳んできたみたいでしてね、その記録を測りに」
「そうかぁ、お疲れさん。お、ちょうどいい所に宇宙ステーションが廻って来たわ。ワシはあれで帰るわ。お仕事頑張り」
「そうですか、さようなら」

手に持っているメジャーは3億8千万mまで伸びている。さぁて幅跳びの選手はどこだろうか。なにせ記録を測るまで選手は一歩も動けないからなぁ。早く行ってあげないと。

そうしてメジャーの数値が752億8千万mまで伸びる頃、火星表面にスポーツウェアを着た彼女を発見したところで目が覚めた。


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