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アベアキラさん

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浮かんだ煙は消えていく

18/05/17 コンテスト(テーマ):第156回 時空モノガタリ文学賞 【 浮遊 】 コメント:0件 アベアキラ 閲覧数:197

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 煙草を吸うと彼を思い出す。たった一時間だが肩を並べて歩いた、僕の友達だ。
 出会いは唐突であった。喫茶店でゆっくりと煙草を燻らせていたときである。隣の席に座っていた彼が話しかけてきたのである。
「コンニチハ……煙草クダサイ」
 多分カナダ人であろう彼、片言の日本語だが煙草の発音が妙に流暢なのが気になった。今までも僕以外の人物に話しかけていたのだろうか。
 何故カナダ人だと予想したのか、それは単純に胸にCANADAと入ったシャツを着ていたからである。僕の知っているカナダ人の特徴と大きく食い違う点もなかった。
 しかし、タイミングが悪かった。丁度僕は最後の一本に火をつけた所だった。
 通じているかわからない日本語で「もうないです」と言うと同時に箱を開けて空なことを見せると、残念そうな顔をしながら彼は自分のvapeをまた吸い始めた。
 煙草を吸い終えた僕は席を立ち空になったたカップを捨てていると、再び彼に話しかけられた。見ると、飲んだビールの空き瓶の処理がわからないようである。
 初めての接触があんなのだから僕は彼に少なからず警戒心を抱いていた。バイトで身につけた営業笑顔を顔に張り付けると多分ここだろうと身振り手振りで伝えた。
問題も解決して一段落、彼は僕に笑いかけ、僕らは一緒に店を出た。
 ここまでなら、ただ変な外国人に絡まれた話だろう。だが、この話には続きがあった。
 煙草がなくなった僕は補充をしようと近くの煙草屋を目指し、歩いていた。
 目の前の信号は赤く、歩を止めると幾分か遅れて隣に彼が来た。
  喫茶店では座っていてよくわからなかったが、彼は二メートル近くある大男だった。小柄な僕は見上げるようにして彼の顔を覗きこんだ。彼は特になにも気にしてないようである。
 信号が青に変わると、二人肩を並べ歩き始めた。大柄な彼はドシドシと、小柄な僕はトコトコと。
 まさか……、いや……そんなことは。僕の心の中に一つの可能性が浮かび上がった。彼も僕と同じ場所を目指しているのではないだろうか。
 角を曲がり、煙草屋が見えてくると僕の疑念は確信に変わった。やはり彼も同志なのだと。
 僕の後に続いて入ってくる彼を確認して、嬉しいという感情が沸き上がった。
 それは予想が当たっていたためなのか、それともまた別のなにかなのか。
 目当てのものを手にいれた僕と彼はおもむろに開封すると、それぞれの煙草に火をつけた。
 二つの煙が揺らいでいた。ふわふわと浮かび、立ち上り、交わり、虚空へ消えていった。
 一つの灰皿を二人で囲んでいた。
 吸い終えたならお互いに用事はなくなった。ただただ立ち去るだけだ。
 僕は彼に向かって会釈をした。しかし、すぐさま「しまった」と思った。会釈とは日本特有の文化、彼にわかるだろうか……。
 杞憂だった。彼も少しだけ頭を下げて別れを告げた。
 言葉もろくに交わしてないが、僕らの間には確実に友情と呼べるなにかが存在した。
 もう僕らは友達だった。
 作り物じゃない笑顔を浮かべ僕らは別々の方向へ歩き出した。


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