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鎌太郎さん

28歳になりつつ、ぬるぬる駄文を散らしている者です どうかよろしくお願いたします 別サイトでも小説を書いているので、良ければどうぞ https://mypage.syosetu.com/915062/

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地獄は浮遊する

18/05/10 コンテスト(テーマ):第156回 時空モノガタリ文学賞 【 浮遊 】 コメント:0件 鎌太郎 閲覧数:252

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 知っているかい? 死んだ人間は死ぬ瞬間で静止してしまうんだって。なんて話をどこかで聞いた事があるだろうか。
 死とは、人という存在の時間を静止させる現象だ。人が死ぬと、その死という静止の中で、死に揺蕩い続けるんだそうだ。
 初めて聞いた時は、ずいぶん荒唐無稽で風変わりな話だと思った。
 天国地獄理論というのはどこの宗教でもあるものだが、しかしそのような話は今まで聞いた事がなかった。
 それにそもそも、そんな事を知ったところでどうする事も出来ないし、そうなった人間の体験談など聞きようもないんだから。
 死なんてものに想いを馳せるなんて、馬鹿な行為だと思っていた。
 だってそうだろう? 現在進行形で生きていて、だからこそ人間は頑張って前に進めるというのに、そんな事を考えていたら前に進めないではないか。
 無意味だ、非生産的だ。

「――なら、オレの今の行動は、非生産の極みだな」

 視線は随分と高い。景色は綺麗に見えるが、それは大量のビルが日光によって光り輝いているだけ。そこに綺麗さは1つもない。
 靴は履いていない。柵の向こうに置いてきた。
 遺書はない。だがその代わりに、会社の解雇通知を置いておいた。せめて、オレが死ぬ理由を知って欲しいという、最後の足掻きのようなものだ。

 ――そう、オレは今日死ぬ。

 今まで忙しなく動いていたオレという時計を静止させる。
 ……もしあの話が本当なのだとしたら、オレはどういう状態で静止するんだろう。
 飛翔しようと、一歩進んだ場所でだろうか。
 それとも、地面に激突し、熟れたトマトのように弾ける瞬間なのだろうか。



 それとも、空中に浮遊し続けるのだろうか。



 だとしたらそれは……ああ、まだマシなんだろうな。
 見た目的には綺麗な世界の中で、自分が浮き、遊び続ける。
 きっとオレに続く人間は増えるだろう。こんな世の中だ、絶望して浮遊しようと考えてしまう者は、きっと多いはずだ。
 その時は、きっとこの光り輝く街の空に、沢山の人間が浮遊し続けるのだ。



 ああ、天国など存在しないと思っていたが、地獄は真上にあったんだな。
 それだけを思い、オレは一歩踏み出した。
 浮遊の世界に。




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