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斎藤緋七(さいとうひな)さん

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性別 女性
将来の夢 食べても太らない身体になること。
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in the earth

18/05/02 コンテスト(テーマ):第156回 時空モノガタリ文学賞 【 浮遊 】 コメント:0件 斎藤緋七(さいとうひな) 閲覧数:274

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アユミは裏庭の片隅に穴を掘る。
産んだ赤子を横に寝かせている。
赤子の父親のユウタも穴を掘るのを一緒に手伝ってくれている。
「ふう。」
ユウタは一息つく。
「これくらいの深さでいいわよね。」
アユミは言った、
10時間程前に自宅のトイレで女の子を産み落としたばかりだ。
「さあ、埋めようぜ。」
「そうね。
……どっちが首を絞める?」
「…生き埋めでいいんじゃないか?そのうち、窒息死するだろ。」
「それもそうね。」
アユミは穴の中に赤子を置きそっと置き上から土を掛けていく。
……ごめんなさい、私、貴方より自分の人生の方が大切なの。

「じゃあな。」
我が子殺しの共犯者は笑顔で自転車に乗って帰っていった。

アユミは「一件落着」。
とばかりに、いつものベッドで眠った。

…声がする。
「おかあさん、おかあさん。」
寝ていたところを起こされてアユミは不機嫌だった。
目の前には、数時間前に殺した赤子の顔があった。
半透明で、足がなくてふわふわと浮いている。
「なによ…これ…。」
「くるしいよ、おかあさん。」
「なんなのよ。」
アユミは飛び起きて裏庭の我が子を埋めた木のそばに行ってみた。
私を「おかあさん」と呼ぶのは、一人だけ。
確かに赤子の泣き声が聞こえる。
深夜だったが電話でユウタを呼び出す。
30分程でユウタはやって来た。
「まだ、死んでないって?」
「ユウタ、聞こえる?あの子の泣き声よ。」
ユウタは耳を澄ます。
「おかあさん、おとうさん」
「ああ、聞こえる。」
「私が寝ていたら、半透明な足のない赤ちゃんに起こされて呼ばれたの。
この子、生きているわ。息苦しいよ、おかあさん。って声が聞こえるもの。」
「勘弁してくれよ……。」
深いため息をついたユウタはもう一度、辛そうに土を掘り起こす。
赤子は確かに死んでいる。
窒息死だろう。
「念のため、一回、締めとくか。
悪く思うなよ。これで、ふわふわ、浮遊するのは勘弁してくれ。」
ユウタは素手で赤子の首をしめた、ポキっと言う渇いた音がした。
涙を流すアユミの肩を抱き寄せながら、
「仕方ない、よくある事だ。」
ユウタは自分にもアユミにもそう言い聞かせた。

次の日も
赤子の声ははっきりと聞こえて来た。
「どうして?」
もう一度掘り起こす、これで何度目か。
お願い、もう勘弁してちょうだい。
「死んでいる、確かに死んでいるよね?もう、嫌な腐敗臭がするわよね?」

ユウタが不安そうにしている。
「私、怖いわ。」
つい、本音が出てしまう。
「怖いな。」
「違う、怖いのは私たち。
適当に子供作って、産んで、殺して、学校で知らん顔して、友達としゃべって、
お弁当を食べて授業を受けている。日常が私は怖いのよ。」
「アユミ、焼いてみるか?それとも、もっと山の奥にもう一度埋めるか?」
「……焼いてみましょう。」
アユミは同意した。
「明日の金曜日、夜11時に集合だ。」
アユミは取り敢えず、赤子に軽く土をかけておく。
「わかった。」

次の日道具を持ってユウタはやって来た。
「アユミ、親は?」
「明日の遅くに帰る予定よ。」
「しばらく、雨が降っていないから今日はよく燃えるぞ。」
ユウタは人ごとのように言った。

何度目だろう、この子を殺すのは。

再度、ユウタは土を掘り起こし、
取り出した赤子を大きめのバスタオルでくるむ。
ユウタとアユミは歩きだす。
アユミの家の裏の林の奥にたどり着いた。
ユウタはバスタオルごと、土の中に赤子をそっと置き、
上から灯油を注ぐ。
次にあらかじめ灯油に浸しておいた新聞紙を上から掛ける。
ユウタ持参のマッチの火がポトンと赤子の上に落ち、勢いよく燃え始めた。

「最後のサヨナラね、ごめんなさい。」
アユミはたまらなくなって泣き崩れた。

十分に燃えてから、土を掛ける。
「さすがにもう、いいだろう。」
ユウタは笑顔だったがアユミは笑顔を作ることもできない。
「月曜日な。」
ユウタはバイクにのって去って行った。

アユミもその日は泥のように眠った。
しばらく、熟睡できなかったのだから、仕方ない。

「おかあさん。おかあさん。」
声が聞こえる、ああ、あの子の声だ。
私の……私の娘……。
「わたしのだいすきなおかあさん。」

「ねえ。おかあさん。」
ここは夢の中?
「おかあさん、私を埋めた場所に……もう、一度。」
あの場所に行けばいいの?
ああ、あの子の心、あの子の魂。
浮かんでは消えて行く。

次の日、アユミは一人で我が子を焼いた場所に行ってみた。

土の中から手が二本、突き出ていた。
どうしたら、死んでくれるの?

「おかあさんも一緒に死んでくれたら、私も多分、死ねるよ。」 完








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