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実さん

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宇宙金魚

12/12/30 コンテスト(テーマ):第二十一回 時空モノガタリ文学賞【 学校 】 コメント:2件  閲覧数:2388

時空モノガタリからの選評

最終選考

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「君はどうして生きているか知っているかね?」
僕は知らないと言った。この地球上で生きることに意味なんてあるんだろうか?もし意味があるとしたら苦しいことなんて起こらないし、戦争だって、貧困だって起こらない。
「先生は生きていることに意味があるなんて思ってるんですか?もしそうなら意味を教えて欲しいです」僕は少しやけくそな気分でいた。「だって生きている意味なんていろいろな人が主張しているし、でもそれは全部当たっていたことなんてないでしょう」
「君の主張はある程度は正しい。でも一番肝心な部分が間違っている」先生は言った。
「間違っているってどういうことですか?」
「君は本当は生きる意味はあると思っている、いいや、あるように願っている。では考えてみよう。例えばここに金魚がいるよね」
先生はそういうと教室にある水槽を指差して言った。
「ここに生きている金魚に生きている意味はあると思いますか?」
教室はシーンとしてそれから少しざわつき始めた。みんな考えはじめたからだ。ある生徒が手をあげて言った。
「生きている意味はないと思います。だってその金魚は生きてから死ぬまでずっと水槽にいるだけで何もできないからです」
すると他の生徒が手をあげて言った。
「いいえ、僕は生きている意味はあると思います。その金魚は僕らの教室にいることで僕らを癒してくれてます。それがその金魚の生きている意味だと思います」
みんな頷いたり、否定しようとしたり、唸り声をあげながらもう一度深く考え出したりした。
「君はどう思うかね?」
そう言うと先生は僕を指差して言った。
「僕は…僕はその金魚には生きている意味はないと思います。だって教室の僕たちにとって生きている意味があったとしたって、その金魚にとっては一生は何も変わりないからです」僕は大胆に答えた。「もし金魚をかわいいと思っていたって、気持ち悪いって思っていたって金魚は僕たちが何を考えているなんて知りません。金魚にとってはただ狭い水槽に一生閉じ込められているだけの人生です。こんなのかわいそうだと思いませんか?」
「だから大きな海か河に帰せと?」先生は即座に言った。
「はい、それがその金魚にとっての人生だと思います」
「なるほど、それは確かに的を得ている意見だ」先生は頷きながら言った。
「では」続けざまに先生は言う。「ではここに生きている私たちはどうかね?ここに生きている金魚と私たち人間との違いはどう思う?」
僕は少し頭を悩ませてから言った。
「僕たちは金魚と違って自由です。金魚はずっと水槽の外から出れないけど、僕たちは授業が終われば教室から飛び足すことができるし、お腹が好いたら自分で食事もできます。娯楽も遊びもたくさんあるし、その意味でそこにいる金魚とは違います」
「本当にそう思うかね?」先生は言った。「私たち人間は本当に自由だということを君は言いたいみたいだけどもしこの世界が一つの大きな水槽だとしたらどうだい?」
「一つの水槽ですか?」僕は尋ねた。
「そうだ。私は今日君たちに伝えるが、この世界は一つの大きな水槽だ」先生は言った。「天井を見てみなさい」
先生がいうとみんなは空を見上げた。透明張りの天井の外には宇宙が広がっていた。この人工衛星上に作られたコロニーからは地球が半月のように見える。今頃日本は明け方の時間だ。
「君たちはまだ本当に自分たちが自由だと思っているかもしれないが真実はそうじゃない。私たちはこのコロニーという水槽に澄んでいるし、君たちのお父さんやお母さんは地球という水槽に住んでいるかも知れないね」先生は地球という単語を発するとき僕を見た。
「でも僕たちは月にも地球にも行くことができます」とある生徒が手を上げて主張した。「それなのに金魚は一つの水槽から出ることができません」
「その通り」先生は言った。「じゃあ、金魚を別の水槽に移してみようじゃないか」
そういうと先生はバッグから水筒を取り出して飲み口に水を蓄えた。そして水槽から金魚を移した。「この水筒が君たちのコロニーだ」
「それは違います。金魚は強制的に水筒の蓋に移されただけです。でも僕たちは自由に惑星間を行き来できます」さっきの生徒が主張した。
「そうかね?じゃあ、この金魚に直接聞いてみようじゃないか」そういうと先生は金魚の口を耳に近づけた。「ふむ。どうやらこの金魚は元の水槽に戻りたいそうだ」
教室に少し笑いが起こると先生は金魚を元の水槽に戻した。
「じゃあ、もう一度聞くがこの金魚と私たち人間は何が違うだろう?」
僕らは考えたが何が違うのかわからなくなって何も答えることができなかった。先生は言う
「つまり私たちと金魚に違いなどないのだよ。そしてこの宇宙という水槽こそが学校で、私たちは金魚だ」


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このストーリーに関するコメント

13/01/01 草愛やし美

Minorさん、拝読しました。

宇宙金魚、未来のお話ですが、近未来に実際有り得ることかもかもしれませんね。
哲学的で、いろいろ考えさせられました。難しいですが、生きるという意味は考えれば考えるほど、わからないものかもしれません。ふと気づけば生きていた、あるいは意識すれば、ほんとは生きていると言えないのかもしれませんね。

13/01/06 

草藍さん、コメントありがとうございます。

生きるっていうのは考えるとよくわからなくなりますよね。今あることが不思議っていうか、たぶんけっこうな人が「あれ?今どうしてここにいるんだっけ?」的なことは思ったことあると思うんです。そんなこんながあって書いてみたくなって書きました。文章は拙いですけど頑張って書こうかなと思います。宜しくお願いします。

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